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第六章 試練の迷宮
117.抱えた問題の量
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「えーと?状況を整理すると、ユンがワールドに依代としての役目を追放され、逃亡したワールドはアルカトラ二層にいたジュノの体を乗っ取ってレザ、ラナーナの両名を半殺しにして消失した。これで間違ってないか?」
「どうやらそうみたいだね。状況は、極めて最悪だよ。」
血塗れのレザとラナーナをシャルル達が手当てし、ガジュとユンはその様子を眺めて頭を抱える。
「ワールドはユンみたいな精巧な肉体を創造出来るんだろ?なのになんでジュノとかいう半端な作り物を奪う必要があるんだよ。」
「う~ん思ったより相当体が鈍ってるのかも。僕が依代になってから一度も【創造】を使ってないからね。新たに体を作るより、自分と同じように不完全なジュノの体を奪う方が楽だと思ったんじゃない?」
「ジュノの体は人類の叡智の結晶だからな。特殊な能力こそないが、ほぼ人間と同じ性能だ。依代代わりに使っても何の問題も発生しないだろう。」
「相手がジュノとなると、ワールドに反発もしなそうだしなぁ……。どこまで事情を理解してるか知らないけど、あの子が大好きな始祖の冒険者ユノの正統な後継者になったようなもんだし。」
今回起きた事件は、恐らくガジュがチャリオットに入り込まれた時とほぼ同じような内容だ。ただ入り込んだ相手が完全無欠の魔族ワールドであり、入り込まれた相手が自意識の薄くただユノを信仰するだけの魔族であるだけ。
たったそれだけの相違点ではあるが、組み合わせが最悪である。
「一旦撤退するという選択肢はないんでしょうか。これだけの被害が出たのであれば、誰かが二人を連れて撤退するのもありだと思います。ワールドの撃破も急務ではありますが、負傷者をここに放置してもいられません。」
「残念ながらそれは無理だ。試練の迷宮は突入者の誰かが外に出た瞬間、死体含め中にいる人間は全員外に追い出される。俺達が一度目に挑戦した時もそうだった。」
「だからこの中、人の屍転がってないのか……。ケネがその制限も解除してくれてるといいけど、何せこの制限をかけたのはユノ。即ちワールドみたいなものだからね。ワールドが体を手にした以上、最悪の場合更なる不可思議ルールを押し付けられる可能性すらある。」
「そ、そこまでされたら最早勝つのすら無理なんじゃ……。」
キュキュの口からこぼれた弱音に、誰一人として反論を返せず、一同の間に沈黙が流れる。
シャルルの言う通り、ラナーナとレザを安全地帯に運ぶ事は急務。だが同時にワールドとかいう意味不明な輩の相手もしなければならない。この二つをたった五人で対処する事などはっきり言ってかなり厳しい。
加えてここはそもそも試練の迷宮だ。この先の三層には例のダンジョンボスもいるし、そこらの雑魚魔物すら脅威だ。なんせこちらでまともに戦えるのはキュキュとシャルルのみ。ガジュとハクアはまだ可能性があるが、現状は新たな力を全く制御できていない。何よりかつての最高戦力だったユンが、正真正銘の無能と化している。
ガジュ達が絶望的な現状に打ちひしがれていると、奥から凄まじい勢いの足音が響き始めた。
「おいおい何だこの音は。かつてない爆音だぞ。」
「ペタペタ、ドタバタ、ゴウゴウ。この音はもしかして……。」
「魔物、だな。どう見ても。」
「落ち着いてないで逃げますよ!あの数はどう見ても無理です!」
前方、試練の迷宮三層への階段があるであろう方向から、群を成して突撃してくる魔物達。そこに向かってシャルルが【正義hの執行者】で大量の木を落下させる。
そしてそのまま死に際のラナーナとレザを連れて転移していく。いくらシャルルでも全員を転移させる事は許容範囲外なのだろう。
ガジュもガジュで相変わらず汗だくのユンを背中に乗せ、ハクアとキュキュと共に走り出す。
だが相手は魔物。シャルルはともかく走るだけのガジュ達を逃すはずもなく、背中に足音が迫ってくる。こうなれば戦闘するしかない。そう思ってガジュが拳を握ると、魔物達はガジュ達に目もくれず走り抜けていった。
「……はぁ?おい、何でスルーされたんだ俺達。」
「わ、分からない。魔物が人を無視するような事があるのか?」
「考えられる線があるとすれば……誘われてるとか?」
ユンの言葉を聞き、ガジュ達は一斉に三層の方を振り返る。魔物のいない、静まり返った森。
まるで先ほどのガジュ達の会話を聞いていたように魔物の脅威が消え去り、ただ冷たい空気だけが流れ込む。
この先にいるのはワールドとダンジョンボスだけ。こうなれば、ラナーナとレザを放置する上での心配も消えたというものだ。
シャルルも二人を連れてガジュ達の元に帰還し、ゆっくりと二人の体を地面に寝かせる。魔物の脅威さえなければここに置いておいても問題はないはずであろう。
「行くしかないってことか……。本当、何考えてるんだろうなワールドの野郎は。」
「さぁ?僕にすら分からないんだからもう誰にも分かんないよ。取り敢えず、前に進む以外の選択肢がないことだけは確かかな。」
一番無力なはずのユンが先陣を切り、ガジュ達は戦いに赴いていく。
「どうやらそうみたいだね。状況は、極めて最悪だよ。」
血塗れのレザとラナーナをシャルル達が手当てし、ガジュとユンはその様子を眺めて頭を抱える。
「ワールドはユンみたいな精巧な肉体を創造出来るんだろ?なのになんでジュノとかいう半端な作り物を奪う必要があるんだよ。」
「う~ん思ったより相当体が鈍ってるのかも。僕が依代になってから一度も【創造】を使ってないからね。新たに体を作るより、自分と同じように不完全なジュノの体を奪う方が楽だと思ったんじゃない?」
「ジュノの体は人類の叡智の結晶だからな。特殊な能力こそないが、ほぼ人間と同じ性能だ。依代代わりに使っても何の問題も発生しないだろう。」
「相手がジュノとなると、ワールドに反発もしなそうだしなぁ……。どこまで事情を理解してるか知らないけど、あの子が大好きな始祖の冒険者ユノの正統な後継者になったようなもんだし。」
今回起きた事件は、恐らくガジュがチャリオットに入り込まれた時とほぼ同じような内容だ。ただ入り込んだ相手が完全無欠の魔族ワールドであり、入り込まれた相手が自意識の薄くただユノを信仰するだけの魔族であるだけ。
たったそれだけの相違点ではあるが、組み合わせが最悪である。
「一旦撤退するという選択肢はないんでしょうか。これだけの被害が出たのであれば、誰かが二人を連れて撤退するのもありだと思います。ワールドの撃破も急務ではありますが、負傷者をここに放置してもいられません。」
「残念ながらそれは無理だ。試練の迷宮は突入者の誰かが外に出た瞬間、死体含め中にいる人間は全員外に追い出される。俺達が一度目に挑戦した時もそうだった。」
「だからこの中、人の屍転がってないのか……。ケネがその制限も解除してくれてるといいけど、何せこの制限をかけたのはユノ。即ちワールドみたいなものだからね。ワールドが体を手にした以上、最悪の場合更なる不可思議ルールを押し付けられる可能性すらある。」
「そ、そこまでされたら最早勝つのすら無理なんじゃ……。」
キュキュの口からこぼれた弱音に、誰一人として反論を返せず、一同の間に沈黙が流れる。
シャルルの言う通り、ラナーナとレザを安全地帯に運ぶ事は急務。だが同時にワールドとかいう意味不明な輩の相手もしなければならない。この二つをたった五人で対処する事などはっきり言ってかなり厳しい。
加えてここはそもそも試練の迷宮だ。この先の三層には例のダンジョンボスもいるし、そこらの雑魚魔物すら脅威だ。なんせこちらでまともに戦えるのはキュキュとシャルルのみ。ガジュとハクアはまだ可能性があるが、現状は新たな力を全く制御できていない。何よりかつての最高戦力だったユンが、正真正銘の無能と化している。
ガジュ達が絶望的な現状に打ちひしがれていると、奥から凄まじい勢いの足音が響き始めた。
「おいおい何だこの音は。かつてない爆音だぞ。」
「ペタペタ、ドタバタ、ゴウゴウ。この音はもしかして……。」
「魔物、だな。どう見ても。」
「落ち着いてないで逃げますよ!あの数はどう見ても無理です!」
前方、試練の迷宮三層への階段があるであろう方向から、群を成して突撃してくる魔物達。そこに向かってシャルルが【正義hの執行者】で大量の木を落下させる。
そしてそのまま死に際のラナーナとレザを連れて転移していく。いくらシャルルでも全員を転移させる事は許容範囲外なのだろう。
ガジュもガジュで相変わらず汗だくのユンを背中に乗せ、ハクアとキュキュと共に走り出す。
だが相手は魔物。シャルルはともかく走るだけのガジュ達を逃すはずもなく、背中に足音が迫ってくる。こうなれば戦闘するしかない。そう思ってガジュが拳を握ると、魔物達はガジュ達に目もくれず走り抜けていった。
「……はぁ?おい、何でスルーされたんだ俺達。」
「わ、分からない。魔物が人を無視するような事があるのか?」
「考えられる線があるとすれば……誘われてるとか?」
ユンの言葉を聞き、ガジュ達は一斉に三層の方を振り返る。魔物のいない、静まり返った森。
まるで先ほどのガジュ達の会話を聞いていたように魔物の脅威が消え去り、ただ冷たい空気だけが流れ込む。
この先にいるのはワールドとダンジョンボスだけ。こうなれば、ラナーナとレザを放置する上での心配も消えたというものだ。
シャルルも二人を連れてガジュ達の元に帰還し、ゆっくりと二人の体を地面に寝かせる。魔物の脅威さえなければここに置いておいても問題はないはずであろう。
「行くしかないってことか……。本当、何考えてるんだろうなワールドの野郎は。」
「さぁ?僕にすら分からないんだからもう誰にも分かんないよ。取り敢えず、前に進む以外の選択肢がないことだけは確かかな。」
一番無力なはずのユンが先陣を切り、ガジュ達は戦いに赴いていく。
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