【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria

文字の大きさ
63 / 106
懐妊編

夫婦の時間

しおりを挟む
「リリアナ!」

思ったより王への報告で時間をとってしまった。

もう寝てしまったか、と急いで寝室に入る。

「セイ様」

にこやかに出迎えるリリアナをぎゅっと抱きしめた。

すでに部屋着のリリアナは、セイラムと揃いで仕立てたミントグリーンに一部ラベンダーのラインが入ったモコモコパーカーとモコモコショートパンツを合わせている。

今まではニーハイソックスを合わせていたリリアナだったが、妊娠を機に、レギンスに切り替えた。

薄いパステルピンクのレギンスを合わせたリリアナが、今日もすこぶる可愛い。

体調はどうか、寒くはないか、と、1日の様子を聞いていく。

「先ほど、陛下より、贈り物が届きました」

「陛下から?」

テーブルの上に、様々な種類の柑橘が籠に盛られて置いてあった。

「この中で気に入った柑橘があれば、また贈ってくださるそうです」

先ほどの王の様子が頭に浮かぶ。

何なのだ、本当に。

らしくないことばかりだ。

「今日、陛下に報告してきたから、気を回していただいたのだろう」

「セイ様、一緒に召し上がりませんか?」

「勿論だ」

セイラムはニッコリと笑み、手ずから食べさせるために皮剥きに取り掛かった。




リリアナが眠ったのを見届けた夜半、セイラムは身を起こした。

今日はもう1人、報告に行くつもりだった。

新宮を過ぎ、外に出る。

薔薇園を過ぎた一角、白い霊廟の入り口には、王直属の近衛が数名立っていた。

敬礼する近衛に声を掛ける

「まだ、いらしたばかりか?」

「いえ」

いつもなら、王の近衛を見かけた時点で取りやめるが…

霊廟の中には、原則王族しか入れないことになっている。

自らの近衛を留めて、セイラムはひとりで中に足を踏み入れた。

カツン、カツン、と足音を響かせながら、床も壁も真っ白な霊廟内を進む。

王宮の敷地内に、この小さな霊廟があるのは、これが王妃のために建てられたものだからだ。

王族の本当の霊廟は、王都外の国教神殿の敷地内に祀られている。


階段を降り、奥に進むにつれて、ボソボソと、話し声が聞こえる。

セイラムは自然と足音を消して近づいた。

祭壇に向かって、父の後ろ姿が見える。

「…セイラムが…」

唐突に自分の名前が聞き取れて、思わず柱に隠れてしまった。

柱の影からそっと覗くと、手にワイングラスを持った父が見える。

そして祭壇にも、同じくワインが注がれたグラスが見えた。

グラスに口をつけ、父は俯いた。

「…セイラムのためにも国のためにも、次の王妃を迎えるように君には約束させられたが、結局果たせなかった…どうしても、そんな気になれなかったんだ」

「すまない」と呟いて、またグラスに口をつける。

「だが、それでもセイラムは立派に育ってくれた。さすが君のこどもだ。今のセイラムはとても幸せそうだよ。君が居た頃の私みたいに…」

セリーヌ、と父は愛おしげに母の名を呼んだ。

「君と私の初孫だ。どうか見守ってやってくれ。…君の元に行くのはもう少し後になりそうだが…」

そこまで聞いて、セイラムは、まだ語り続ける父を背に、静かに、元きた道を戻り出した。

「戻られますか」

外で待機していた近衛に小さく頷き、セイラムは霊廟を後にした。



報告は父がしてくれた。

夫婦の時間を、邪魔すまい。


寝室に戻ったセイラムは、手早く寝支度を整えると、愛しい妃を抱きしめて眠りについた。























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています

廻り
恋愛
 治療魔法師エルは、宮廷魔法師試験の際に前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界でエルは、ヒーローである冷徹皇帝の幼少期に彼を殺そうと目論む悪役。  その未来を回避するため、エルは夢だった宮廷魔法師を諦め、平民として慎ましく生活を送る。  そんなある日、エルの家の近くで大怪我を負った少年を助ける。  後でその少年が小説のヒーローであることに気がついたエルは、悪役として仕立てられないよう、彼を手厚く保護することに。  本当の家族のようにヒーローを可愛がっていたが、彼が成長するにつれて徐々に彼の家族愛が重く変化し――。

「一晩一緒に過ごしただけで彼女面とかやめてくれないか」とあなたが言うから

キムラましゅろう
恋愛
長い間片想いをしていた相手、同期のディランが同じ部署の女性に「一晩共にすごしただけで彼女面とかやめてくれないか」と言っているのを聞いてしまったステラ。 「はいぃ勘違いしてごめんなさいぃ!」と思わず心の中で謝るステラ。 何故なら彼女も一週間前にディランと熱い夜をすごした後だったから……。 一話完結の読み切りです。 ご都合主義というか中身はありません。 軽い気持ちでサクッとお読み下さいませ。 誤字脱字、ごめんなさい!←最初に謝っておく。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...