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影025
予想外。
今日も今日とてモリー嬢は何かを待って張っている。
殿下が来るタイミングでちゃんと張ってくれていることに、俺は心の中で安堵した。
よしよし。そうこなくっちゃ。
モリー嬢を後方から見渡せる場所に殿下を誘う。
1番近くで見るには、木の影に隠れる必要があるが、幹の太さから言って、隠れられるのは精々2人までだ。
「殿下、影ではなく私共がお付きします。影如きに殿下の護衛まで任せるなど、心許なくてできません!」
ガチムチの近衛達のリーダーらしき人物が、殿下に提案している。
昔から、近衛は影を忌み嫌う。
あいつらは貴族出身。
俺たちは殆どが平民出身。
俺らとしては、お互い国のために仲良くやろうぜーって思うけど、あいつらはどうにも我慢ならないらしい。
エリート意識だかなんだか知らんけど。
近衛のリーダーらしき男が食い下がっているが、殿下は俺を選んだ。
ま、普通そうなるよな。
殿下が決めたんだから、睨まれても困る。
殿下と木の幹まで移動して、後方からモリー嬢を観察する。
「殿下、あれがモリー嬢です」
「あれか…なんと怪しげな動きだ…」
隣国から来たベン王子が去ると、モリー嬢が肩を揺らして笑っている。
「よし。行ってくる」
「え?殿下?」
呼び止める俺に構わず、殿下がモリー嬢の方に踏み出した。
ええー!殿下、直接行くの!?
ど、どうすればいい!?
予想外の事態に俺は困惑し、思わず近衛の方を見た。
「おい!影!何やってんだ!」
「殿下を連れ戻せ!」
「何かあったら只じゃおかないぞ!」
怒り狂った近衛が小声で喚いている。
うるせー!ガヤは黙ってろ!
殿下に何かあれば一大事だ。
だが、モリー嬢と殿下が出会うことで、どんな化学反応が起こるのか、楽しみにしてしまう俺がいるのもまた事実!
影012と俺との見解では、モリー嬢は世間的には"危ない奴"の範囲に入るのかもしれないが、リアルな危険人物ではないだろうと予想している。
ということで、何か起こるまでは静観することにした。
王太子殿下と対峙したモリー嬢は、分かりやすいくらい動揺していた。
一瞬で殿下の正体に気付いたのは想定外だ。
何故顔を知っている?
そして、お辞儀をしたままなのでモリー嬢はわからなかっただろうが、すぐに王太子と言い当てられて、殿下は少し傷付いた表情をしていた。
殿下、ドンマイ。
それからは展開が早かった。
モリー嬢を温室サロンに連れて行くことになり、決まった途端にワラワラと近衛が湧いてモリー嬢の四方を固める。
俺はケーキをサーブする役目を仰せつかっていたので、50代の執事の変装でひと足先に温室サロンで待機した。
今時の貴族はこんなもん食べてんだな。
殿下から事前に教わり、初めて見る菓子と名前を覚えたおかげで、"チーズケーキ"とやらを何なくサーブできた。
いやー、しかしその後の、温室サロンでの殿下による怒涛の詰め方。
さすが我が主だ。
それに関しては本当に恐れ入った。
モリー嬢は弁解として、「覗きは趣味の一環でした」って言ってるけど、俺的にはそっちの方がヤバいけどな。
でもまあ、モリー嬢も思うところがあったらしく、覗きは止めると約束してくれた。
それはそれでいいんだが…
何故、王太子殿下の顔を知っていたのか、とか、何故これから起こることを予見できたのか、とか詳しいことは詰めなくていいのか?
殿下の方を窺うと、俺に目線を合わせて意味ありげに微笑んだ。
これは…俗に言う王族案件ってやつだな。
触れないでおこう。
まあ、これでこの件は俺の手から離れると言う事だ。
ずっと気になっていたことが1つ片付いた。
あの時、殿下に報告しといてよかった。
俺が気持ちの中で、締めに入っていたのが良くなかったんだろうか。
殿下がモリー嬢ににこやかに告げる。
「私は時折この学園に来るつもりだから、その時にまた、話をしようね」
え?何それ?
殿下、ちょっとそれ、聞いてないんですが。
殿下が来るタイミングでちゃんと張ってくれていることに、俺は心の中で安堵した。
よしよし。そうこなくっちゃ。
モリー嬢を後方から見渡せる場所に殿下を誘う。
1番近くで見るには、木の影に隠れる必要があるが、幹の太さから言って、隠れられるのは精々2人までだ。
「殿下、影ではなく私共がお付きします。影如きに殿下の護衛まで任せるなど、心許なくてできません!」
ガチムチの近衛達のリーダーらしき人物が、殿下に提案している。
昔から、近衛は影を忌み嫌う。
あいつらは貴族出身。
俺たちは殆どが平民出身。
俺らとしては、お互い国のために仲良くやろうぜーって思うけど、あいつらはどうにも我慢ならないらしい。
エリート意識だかなんだか知らんけど。
近衛のリーダーらしき男が食い下がっているが、殿下は俺を選んだ。
ま、普通そうなるよな。
殿下が決めたんだから、睨まれても困る。
殿下と木の幹まで移動して、後方からモリー嬢を観察する。
「殿下、あれがモリー嬢です」
「あれか…なんと怪しげな動きだ…」
隣国から来たベン王子が去ると、モリー嬢が肩を揺らして笑っている。
「よし。行ってくる」
「え?殿下?」
呼び止める俺に構わず、殿下がモリー嬢の方に踏み出した。
ええー!殿下、直接行くの!?
ど、どうすればいい!?
予想外の事態に俺は困惑し、思わず近衛の方を見た。
「おい!影!何やってんだ!」
「殿下を連れ戻せ!」
「何かあったら只じゃおかないぞ!」
怒り狂った近衛が小声で喚いている。
うるせー!ガヤは黙ってろ!
殿下に何かあれば一大事だ。
だが、モリー嬢と殿下が出会うことで、どんな化学反応が起こるのか、楽しみにしてしまう俺がいるのもまた事実!
影012と俺との見解では、モリー嬢は世間的には"危ない奴"の範囲に入るのかもしれないが、リアルな危険人物ではないだろうと予想している。
ということで、何か起こるまでは静観することにした。
王太子殿下と対峙したモリー嬢は、分かりやすいくらい動揺していた。
一瞬で殿下の正体に気付いたのは想定外だ。
何故顔を知っている?
そして、お辞儀をしたままなのでモリー嬢はわからなかっただろうが、すぐに王太子と言い当てられて、殿下は少し傷付いた表情をしていた。
殿下、ドンマイ。
それからは展開が早かった。
モリー嬢を温室サロンに連れて行くことになり、決まった途端にワラワラと近衛が湧いてモリー嬢の四方を固める。
俺はケーキをサーブする役目を仰せつかっていたので、50代の執事の変装でひと足先に温室サロンで待機した。
今時の貴族はこんなもん食べてんだな。
殿下から事前に教わり、初めて見る菓子と名前を覚えたおかげで、"チーズケーキ"とやらを何なくサーブできた。
いやー、しかしその後の、温室サロンでの殿下による怒涛の詰め方。
さすが我が主だ。
それに関しては本当に恐れ入った。
モリー嬢は弁解として、「覗きは趣味の一環でした」って言ってるけど、俺的にはそっちの方がヤバいけどな。
でもまあ、モリー嬢も思うところがあったらしく、覗きは止めると約束してくれた。
それはそれでいいんだが…
何故、王太子殿下の顔を知っていたのか、とか、何故これから起こることを予見できたのか、とか詳しいことは詰めなくていいのか?
殿下の方を窺うと、俺に目線を合わせて意味ありげに微笑んだ。
これは…俗に言う王族案件ってやつだな。
触れないでおこう。
まあ、これでこの件は俺の手から離れると言う事だ。
ずっと気になっていたことが1つ片付いた。
あの時、殿下に報告しといてよかった。
俺が気持ちの中で、締めに入っていたのが良くなかったんだろうか。
殿下がモリー嬢ににこやかに告げる。
「私は時折この学園に来るつもりだから、その時にまた、話をしようね」
え?何それ?
殿下、ちょっとそれ、聞いてないんですが。
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