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影025
卒業式
レジーナ学園の大講堂に、拍手が鳴り響く。
卒業生全員への卒業証書授与が終わり、学長を始め来賓からの祝辞が続く。
鷹が舞い降りてきて、殿下の来訪を告げた。
「さすが殿下。タイミング、バッチリだな。」
俺は1人呟き、殿下を迎えるのに立ち上がった。
間もなく、時計塔の屋上に、近衛を引き連れた殿下が到着した。
「ご苦労。状況は?」
「間もなく来賓祝辞が終わる所です」
「よし、モリーはどこだ?」
「こちらです」
殿下が近衛に命じて受け取ったのはいつものオペラグラス…には見えない。
真鍮製の、太い筒だ。
随分重そうだな。
大きさ的に、寸胴鍋のようにも見える。
じっと見つめる俺の視線に気付いたのか、殿下が口を開く。
「この日に合わせて、作らせた。モリーの晴れの日だからな。」
間に合ってよかった、と呟きながら、殿下が筒を伸ばしていく。
なるほど、望遠鏡だったか。
殿下が望遠鏡を伸ばしながら、どんどん後退していく。
近衛が望遠鏡の寸胴鍋部分を肩に担いで支えているが、それだけでは支えきれず、間にもう1人近衛が支えに入った。
…長すぎない?
これはもう望遠鏡と言うより…殿下、何か発射しようとしてる?
「よし、覗くぞ。…ちょっと位置が違うな、もう少し下に腰を落とせ。いや、ちょっと下がりすぎだ。あ!モリー!そこだ!そこで止まれ!」
殿下は望遠鏡から見えるモリー嬢に夢中で、近衛が空気椅子状態になっていることに気づいていない。
「おい、揺らすな。ブレて見えない。おい、揺らすなと言ってるだろう!」
殿下、わざとじゃないんだ。
近衛がプルプルしてるのは、筋肉の不可抗力なんだ。
「くそっ!うまく見えない!」
苛立ちと共に、殿下が諦めた。
「殿下、もしよろしければ、こちらをお使いください」
俺は隠密の使う望遠鏡をスマートに殿下に渡した。
「さすが025、気が利くな。うん、よく見える。025はどうするんだ?」
俺はスチャッと予備の望遠鏡を構える。
「これがあるのでお気遣いなく」
殿下は満足気に頷き、2人並んで望遠鏡を構えた。
「いやー、まさか本当に来れるとは思わなかったですよ。さすが殿下」
「昼休憩を前倒した。モリーを見たらすぐ城に戻る。卒業証書授与の時のモリーはどうだった?」
「ちょっと緊張している感じはありましたけど、特別目立つようなことも無く、滞りなく終わりましたよ。ただ…」
「ただ?」
「モリー様が証書受け取る瞬間、ホントに卒業するんだなって、なんかグッと来ちゃいましたね。式に出てる012も号泣で、2人でヤバかったっす」
「それ、わかるな。今の話聞いただけで、私もグッと来た」
「ですよねー!」
「後で012とも話したい」
「あ、そうそう。012と話してたんですけど、今度、卒業祝いの打ち上げしません?」
「いいな。071も呼ぼう。俺が幹事をやる」
「マジで!超楽しみっす!」
「後で、候補の日を鷹で送る」
俺と殿下が盛り上がっている後方から、近衛の嫉妬混じりの視線を感じるが、気にしない。
なぜ俺が、殿下とこんなに気安く話せているのかと言うと…
一言で言うと、好きなものが一緒だったから、かな。
俺も012も071も、俺たち全員、モリー嬢のファンだってこと。
警護してて、よくわかったんだ。
どんな出来事も面白おかしく捉えて、時には自分が道化になったり、気取られないように誰かのフォローしたり。
皆が笑顔で居られるように、そう振る舞ってるモリー嬢。
それを、気ぃ使ってやってるわけじゃないんだぜ?
モリー嬢は、息をするように、自然にそうするんだ。
モリー嬢のいるクラス、今年の学年の中で、1番、団結してるいいクラスなんだ。
クラスの皆も、薄々気付いてるんだよ。
目立たないようにしてるけど、実はモリー嬢がこのクラスの要だって。
モリー嬢のクラスのレイトン先生って担任さ、教師になって5年目なんだけど、気弱で見た目もパッとしなくて、今まで担当したクラスでは生徒になめられてたんだって。
教師として自信無くして、今年で辞めようとしてたみたいなんだよな。
それがさ、今年のクラス、モリー嬢のおかげか、すげぇあったかくてさ。
レイトン先生、皆から慕われて、すっげぇイキイキしてんの。
体育祭でモリー嬢のクラスが優勝した時も、優勝トロフィー受け取った生徒達がさ、真っ直ぐにレイトン先生の所に駆けていって先生にトロフィー持たせてさ。
先生が号泣する姿見たら、なんだか俺までもらい泣きしてた。
なんかその感動を、モリー嬢のすごさを、直接殿下に伝えたくて、その時は城まで行って殿下に報告したんだ。
そしたら殿下も泣いてくれてさ。
そこから、何か分かり合えたと言うか、殿下も、モリー嬢のファンとしての俺たちを、同志のように、大切にしてくれるようになったんだ。
卒業生全員への卒業証書授与が終わり、学長を始め来賓からの祝辞が続く。
鷹が舞い降りてきて、殿下の来訪を告げた。
「さすが殿下。タイミング、バッチリだな。」
俺は1人呟き、殿下を迎えるのに立ち上がった。
間もなく、時計塔の屋上に、近衛を引き連れた殿下が到着した。
「ご苦労。状況は?」
「間もなく来賓祝辞が終わる所です」
「よし、モリーはどこだ?」
「こちらです」
殿下が近衛に命じて受け取ったのはいつものオペラグラス…には見えない。
真鍮製の、太い筒だ。
随分重そうだな。
大きさ的に、寸胴鍋のようにも見える。
じっと見つめる俺の視線に気付いたのか、殿下が口を開く。
「この日に合わせて、作らせた。モリーの晴れの日だからな。」
間に合ってよかった、と呟きながら、殿下が筒を伸ばしていく。
なるほど、望遠鏡だったか。
殿下が望遠鏡を伸ばしながら、どんどん後退していく。
近衛が望遠鏡の寸胴鍋部分を肩に担いで支えているが、それだけでは支えきれず、間にもう1人近衛が支えに入った。
…長すぎない?
これはもう望遠鏡と言うより…殿下、何か発射しようとしてる?
「よし、覗くぞ。…ちょっと位置が違うな、もう少し下に腰を落とせ。いや、ちょっと下がりすぎだ。あ!モリー!そこだ!そこで止まれ!」
殿下は望遠鏡から見えるモリー嬢に夢中で、近衛が空気椅子状態になっていることに気づいていない。
「おい、揺らすな。ブレて見えない。おい、揺らすなと言ってるだろう!」
殿下、わざとじゃないんだ。
近衛がプルプルしてるのは、筋肉の不可抗力なんだ。
「くそっ!うまく見えない!」
苛立ちと共に、殿下が諦めた。
「殿下、もしよろしければ、こちらをお使いください」
俺は隠密の使う望遠鏡をスマートに殿下に渡した。
「さすが025、気が利くな。うん、よく見える。025はどうするんだ?」
俺はスチャッと予備の望遠鏡を構える。
「これがあるのでお気遣いなく」
殿下は満足気に頷き、2人並んで望遠鏡を構えた。
「いやー、まさか本当に来れるとは思わなかったですよ。さすが殿下」
「昼休憩を前倒した。モリーを見たらすぐ城に戻る。卒業証書授与の時のモリーはどうだった?」
「ちょっと緊張している感じはありましたけど、特別目立つようなことも無く、滞りなく終わりましたよ。ただ…」
「ただ?」
「モリー様が証書受け取る瞬間、ホントに卒業するんだなって、なんかグッと来ちゃいましたね。式に出てる012も号泣で、2人でヤバかったっす」
「それ、わかるな。今の話聞いただけで、私もグッと来た」
「ですよねー!」
「後で012とも話したい」
「あ、そうそう。012と話してたんですけど、今度、卒業祝いの打ち上げしません?」
「いいな。071も呼ぼう。俺が幹事をやる」
「マジで!超楽しみっす!」
「後で、候補の日を鷹で送る」
俺と殿下が盛り上がっている後方から、近衛の嫉妬混じりの視線を感じるが、気にしない。
なぜ俺が、殿下とこんなに気安く話せているのかと言うと…
一言で言うと、好きなものが一緒だったから、かな。
俺も012も071も、俺たち全員、モリー嬢のファンだってこと。
警護してて、よくわかったんだ。
どんな出来事も面白おかしく捉えて、時には自分が道化になったり、気取られないように誰かのフォローしたり。
皆が笑顔で居られるように、そう振る舞ってるモリー嬢。
それを、気ぃ使ってやってるわけじゃないんだぜ?
モリー嬢は、息をするように、自然にそうするんだ。
モリー嬢のいるクラス、今年の学年の中で、1番、団結してるいいクラスなんだ。
クラスの皆も、薄々気付いてるんだよ。
目立たないようにしてるけど、実はモリー嬢がこのクラスの要だって。
モリー嬢のクラスのレイトン先生って担任さ、教師になって5年目なんだけど、気弱で見た目もパッとしなくて、今まで担当したクラスでは生徒になめられてたんだって。
教師として自信無くして、今年で辞めようとしてたみたいなんだよな。
それがさ、今年のクラス、モリー嬢のおかげか、すげぇあったかくてさ。
レイトン先生、皆から慕われて、すっげぇイキイキしてんの。
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なんかその感動を、モリー嬢のすごさを、直接殿下に伝えたくて、その時は城まで行って殿下に報告したんだ。
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