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影025
レジーナの鐘
卒業式会場では、最後の来賓祝辞が始まった。
殿下が物憂げに息を吐く。
「どうしても緊張してしまうな。」
「俺も…いや、きっと大丈夫だとは思うんですけど」
「もう1人は誰になりそうなんだ?宰相の息子か?」
「多分ですけど、モリー様と同じクラスのクロイツ伯爵令息じゃないかと…」
「クロイツ伯爵?本当か!」
殿下が望遠鏡ごと、こちらを向いた。
ヒュンッと耳の上で空を切る音がする。
危なかった…もう少し近かったら、俺の額を直撃していた。
「今年卒業と言うことは、長男だろう?そんな優秀だったのか?その割には聞いたことがないが…」
「それに関しては殿下、打ち上げの時に話させてください。俺のとっておきなんで…」
1年の頃に受けたいじめが原因でグレてたクロイツ伯爵令息が、モリー嬢のクラスで立ち直っていく物語を、今ここで小出しにするつもりはない。
「そうか…もし本当にそうなったら、朗報だな」
意味深に言いながら、殿下はまた卒業式に集中し始めた。
来賓祝辞の間、モリー嬢は手元の式次第を見たり、心ここに在らずの様子だ。
「祝辞が終わったぞ」
「いよいよですね」
殿下と2人、望遠鏡を握る手に力が入る。
「それでは、今年の卒業生の代表者に、レジーナの鐘を鳴らす栄誉を授ける。名前を呼ばれた者は、前に出なさい」
進行役の副学長がそう言うと、壇上の学長が封書を開き、厳かに告げる。
「フィンデル クロイツ!」
どよめく会場の一角で、モリー嬢のクラスがワッと湧いた。
名を呼ばれたクロイツ伯爵令息は輝かんばかりの笑顔で立ち上がり、周囲の生徒と抱き合っている。
対照的に、他のクラスにいる宰相の息子は、膝についた手をワナワナさせながら項垂れていた。
ふふん、まさか思ってもみなかっただろうな。自分がいじめてた相手に負けるなんて。
保護者席のクローツ伯爵が、泣くまいと眉間に皺を寄せ、奥方は泣きながら拍手している。
よし、まずは予想通りだ。
だが、俺たちにとってはここからが本番だ。
会場のどよめきが静まってきた所で、副学長が口を開く。
「続いて、女子学生代表を発表する」
壇上の学長が、もう1枚の封書を開いた。
「モリー トワンク!」
予想していたはずなのに、その瞬間、ぶわっと体が熱くなった。
よしっ!と殿下が拳を握る。
会場は更にどよめき、モリー嬢のクラスの興奮は最高潮だ。
大方の予想とは違ったからな。
あー、レイトン先生、号泣しすぎだろう。
トワンク子爵夫妻は驚きすぎて泡食ってるな。
モリー嬢は、自分に関係ないと思った途端に話を聞かなくなるタイプだ。
だからだろうな。
あの顔は多分、この代表に選ばれる意味がわかっていない。
レジーナの鐘を鳴らすセレモニーには、この鐘の音をもって卒業、という大事な意味がある。
その栄えある役割を担う代表者には、卒業挨拶をする首席代表者ではなく、3年生の学年末テストで、男女それぞれ1位になった者が選ばれる。
つまり、学年末テストで、モリー嬢は女子生徒の中で1位を取ったのだ。
モリー嬢は歓声をあげるクラスメイトに戸惑いつつ、愛想笑いを返しながら、言われるままにクロイツ伯爵令息と共に壇上へ上がった。
舞台袖の階段から2階に上がり、皆に見えるように手綱を握ると、勢いよく下に引っ張った。
リンゴーン リンゴーン リンゴーン
大きな鐘の音が学園中に響き渡り、卒業生達は歓声と共に、胸のリボンを空高く投げ上げた。
こうして、殿下や俺たちに見守られながら、モリー嬢は無事に卒業した。
殿下が物憂げに息を吐く。
「どうしても緊張してしまうな。」
「俺も…いや、きっと大丈夫だとは思うんですけど」
「もう1人は誰になりそうなんだ?宰相の息子か?」
「多分ですけど、モリー様と同じクラスのクロイツ伯爵令息じゃないかと…」
「クロイツ伯爵?本当か!」
殿下が望遠鏡ごと、こちらを向いた。
ヒュンッと耳の上で空を切る音がする。
危なかった…もう少し近かったら、俺の額を直撃していた。
「今年卒業と言うことは、長男だろう?そんな優秀だったのか?その割には聞いたことがないが…」
「それに関しては殿下、打ち上げの時に話させてください。俺のとっておきなんで…」
1年の頃に受けたいじめが原因でグレてたクロイツ伯爵令息が、モリー嬢のクラスで立ち直っていく物語を、今ここで小出しにするつもりはない。
「そうか…もし本当にそうなったら、朗報だな」
意味深に言いながら、殿下はまた卒業式に集中し始めた。
来賓祝辞の間、モリー嬢は手元の式次第を見たり、心ここに在らずの様子だ。
「祝辞が終わったぞ」
「いよいよですね」
殿下と2人、望遠鏡を握る手に力が入る。
「それでは、今年の卒業生の代表者に、レジーナの鐘を鳴らす栄誉を授ける。名前を呼ばれた者は、前に出なさい」
進行役の副学長がそう言うと、壇上の学長が封書を開き、厳かに告げる。
「フィンデル クロイツ!」
どよめく会場の一角で、モリー嬢のクラスがワッと湧いた。
名を呼ばれたクロイツ伯爵令息は輝かんばかりの笑顔で立ち上がり、周囲の生徒と抱き合っている。
対照的に、他のクラスにいる宰相の息子は、膝についた手をワナワナさせながら項垂れていた。
ふふん、まさか思ってもみなかっただろうな。自分がいじめてた相手に負けるなんて。
保護者席のクローツ伯爵が、泣くまいと眉間に皺を寄せ、奥方は泣きながら拍手している。
よし、まずは予想通りだ。
だが、俺たちにとってはここからが本番だ。
会場のどよめきが静まってきた所で、副学長が口を開く。
「続いて、女子学生代表を発表する」
壇上の学長が、もう1枚の封書を開いた。
「モリー トワンク!」
予想していたはずなのに、その瞬間、ぶわっと体が熱くなった。
よしっ!と殿下が拳を握る。
会場は更にどよめき、モリー嬢のクラスの興奮は最高潮だ。
大方の予想とは違ったからな。
あー、レイトン先生、号泣しすぎだろう。
トワンク子爵夫妻は驚きすぎて泡食ってるな。
モリー嬢は、自分に関係ないと思った途端に話を聞かなくなるタイプだ。
だからだろうな。
あの顔は多分、この代表に選ばれる意味がわかっていない。
レジーナの鐘を鳴らすセレモニーには、この鐘の音をもって卒業、という大事な意味がある。
その栄えある役割を担う代表者には、卒業挨拶をする首席代表者ではなく、3年生の学年末テストで、男女それぞれ1位になった者が選ばれる。
つまり、学年末テストで、モリー嬢は女子生徒の中で1位を取ったのだ。
モリー嬢は歓声をあげるクラスメイトに戸惑いつつ、愛想笑いを返しながら、言われるままにクロイツ伯爵令息と共に壇上へ上がった。
舞台袖の階段から2階に上がり、皆に見えるように手綱を握ると、勢いよく下に引っ張った。
リンゴーン リンゴーン リンゴーン
大きな鐘の音が学園中に響き渡り、卒業生達は歓声と共に、胸のリボンを空高く投げ上げた。
こうして、殿下や俺たちに見守られながら、モリー嬢は無事に卒業した。
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