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春
嫌われるにはどうすればいいかしら?
さて、と帰宅した私は自分のベッドに腰掛けた。
メイベルにはああ言ったものの、実際どうすればいいんだろう?
婚約を解消したいと思わせるほど嫌われるなんて、相当じゃない?
嫌われる・・嫌われるかぁ・・
アマンド様はどんな人が嫌いなんだろう?
記憶の中にヒントがないか思い浮かべてみる。
騎士団に所属する彼は正義感が強いから、悪を憎んでいる。
でもさすがに犯罪に手を染めるわけにはいかない・・却下、却下。
思い返しても、いつもお互いのお屋敷で2人で会っていたせいか、あまり参考になりそうなことがない。
(あ・・そういえば・・)
ふと、思いついた。
あれは彼と一緒に、珍しく街へ出かけた時のことだ。
そうだ。私がデビュタントする前の年だ。
聖ジルチアのお祭りで花火が上がるというので、アマンド様と一緒に街へ出かけたんだ。
あの頃はまだお互いを愛称で呼びあっていた。
私はアマンド様のことをアムド、と。
彼は私のことをリアと呼んでいた。
アマンド様と馬車に乗って花火会場のすぐ近くまで乗り付けたその時、騒動があった。
ちっとも進まなくなった馬車。
前方から誰か女性の金切り声が聞こえてくる。
様子を見に行った護衛に、アマンド様が尋ねた。
「どうした?」
いやそれが、と護衛が弱りきったように続ける。
「どこぞのご令嬢が、お召し物が汚れたから帰りたいと仰ってるようで」
「この中をか?」
アマンド様が眉を顰める。
それもそのはず。
露店も出ていて、この道はもはや馬車がすれ違うことは不可能だ。
「供のものが諫めているようですが、なかなかにお気の強い方のようで…家紋のない馬車なのですが、高位の貴族のようで…何ともし難いのです。」
眉を顰めたまま、アマンド様が立ち上がった。
「俺が行こう」
「アムド?」
「リア、少し待っていてくれるか?」
「でも…」
「自分勝手な理由で人に迷惑をかける者に、我慢ならないんだ。そんな我儘を許してはいけない」
いつも優しいアムドが険しい顔でそう言うのが意外で、良く覚えている。
その時は護衛に止められて、アマンド様が行くことはなかったけれど。
そうだ!
つまり、アマンド様は我儘な人が嫌いなのでは?
だとしたら、アマンド様を振り回すくらい、私が我儘になればいいのだわ!
うんうんと私は頷く。
答えを導けて、私はホッとした。
では明後日のお茶会から我儘を始めよう。
まず手始めに…手始めに?
そこまで考えて、ズーンと肩が重くなる。
出来るんだろうか?自分に?
正直自信がない。
どちらかと言うと、自己主張せず、その他大勢に紛れていたい派だ。
人の勘に触ることも厭わない、そんな自己主張の塊に、私がなると?
うーん、と考えて私は立ち上がった。
小机の引き出しの奥から、ブルーの小箱を取り出して開けてみる。
婚約の時にもらったイエローダイヤが、キラキラと輝いている。
しばらく眺めて、息を吐いた。
これも、いつか返さないといけないのかしら。
彼のことが、大好きだ。
それなのに、婚約者の座をメイベルに明け渡そうとしている。
「矛盾しているわ・・」
バカみたいだと自分でも思う。
友達想い?
彼の幸せのため?
そんな綺麗なものじゃない。
もう限界なのだ。
心を乱されて、自分の醜さを見せつけられるのが。
これはただただ一重に自分のため。
でも。
晴れて2人が結ばれれば、私もようやく諦めがつく、なんてことあるのかな?
全てが終わって、無事婚約解消できたとして、自分は平気でいられるの?
頭の中で、ずっとぐるぐると考える。
それでも、彼と私のこの関係を清算することが、前に進むためには必要なのだと、そう思った。
そう思わなければ、耐えられなかった。
メイベルにはああ言ったものの、実際どうすればいいんだろう?
婚約を解消したいと思わせるほど嫌われるなんて、相当じゃない?
嫌われる・・嫌われるかぁ・・
アマンド様はどんな人が嫌いなんだろう?
記憶の中にヒントがないか思い浮かべてみる。
騎士団に所属する彼は正義感が強いから、悪を憎んでいる。
でもさすがに犯罪に手を染めるわけにはいかない・・却下、却下。
思い返しても、いつもお互いのお屋敷で2人で会っていたせいか、あまり参考になりそうなことがない。
(あ・・そういえば・・)
ふと、思いついた。
あれは彼と一緒に、珍しく街へ出かけた時のことだ。
そうだ。私がデビュタントする前の年だ。
聖ジルチアのお祭りで花火が上がるというので、アマンド様と一緒に街へ出かけたんだ。
あの頃はまだお互いを愛称で呼びあっていた。
私はアマンド様のことをアムド、と。
彼は私のことをリアと呼んでいた。
アマンド様と馬車に乗って花火会場のすぐ近くまで乗り付けたその時、騒動があった。
ちっとも進まなくなった馬車。
前方から誰か女性の金切り声が聞こえてくる。
様子を見に行った護衛に、アマンド様が尋ねた。
「どうした?」
いやそれが、と護衛が弱りきったように続ける。
「どこぞのご令嬢が、お召し物が汚れたから帰りたいと仰ってるようで」
「この中をか?」
アマンド様が眉を顰める。
それもそのはず。
露店も出ていて、この道はもはや馬車がすれ違うことは不可能だ。
「供のものが諫めているようですが、なかなかにお気の強い方のようで…家紋のない馬車なのですが、高位の貴族のようで…何ともし難いのです。」
眉を顰めたまま、アマンド様が立ち上がった。
「俺が行こう」
「アムド?」
「リア、少し待っていてくれるか?」
「でも…」
「自分勝手な理由で人に迷惑をかける者に、我慢ならないんだ。そんな我儘を許してはいけない」
いつも優しいアムドが険しい顔でそう言うのが意外で、良く覚えている。
その時は護衛に止められて、アマンド様が行くことはなかったけれど。
そうだ!
つまり、アマンド様は我儘な人が嫌いなのでは?
だとしたら、アマンド様を振り回すくらい、私が我儘になればいいのだわ!
うんうんと私は頷く。
答えを導けて、私はホッとした。
では明後日のお茶会から我儘を始めよう。
まず手始めに…手始めに?
そこまで考えて、ズーンと肩が重くなる。
出来るんだろうか?自分に?
正直自信がない。
どちらかと言うと、自己主張せず、その他大勢に紛れていたい派だ。
人の勘に触ることも厭わない、そんな自己主張の塊に、私がなると?
うーん、と考えて私は立ち上がった。
小机の引き出しの奥から、ブルーの小箱を取り出して開けてみる。
婚約の時にもらったイエローダイヤが、キラキラと輝いている。
しばらく眺めて、息を吐いた。
これも、いつか返さないといけないのかしら。
彼のことが、大好きだ。
それなのに、婚約者の座をメイベルに明け渡そうとしている。
「矛盾しているわ・・」
バカみたいだと自分でも思う。
友達想い?
彼の幸せのため?
そんな綺麗なものじゃない。
もう限界なのだ。
心を乱されて、自分の醜さを見せつけられるのが。
これはただただ一重に自分のため。
でも。
晴れて2人が結ばれれば、私もようやく諦めがつく、なんてことあるのかな?
全てが終わって、無事婚約解消できたとして、自分は平気でいられるの?
頭の中で、ずっとぐるぐると考える。
それでも、彼と私のこの関係を清算することが、前に進むためには必要なのだと、そう思った。
そう思わなければ、耐えられなかった。
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