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クラブ活動①

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火曜日。

「レイリア様、ご機嫌よう」

「ご機嫌よう」

「今日はいいお天気でよかったですわね」

本当に、と返して見回した。

雲ひとつない青空の下に、すでに20人ほどの令嬢が集っている。

街用のワンピースを着て、皆おしゃべりに余念がない。

メイベルはまだ来ていないようだ。

「それでは皆さん、班に分かれて、お品を並べてください」

クラブ長のビシュヌ様の指示で、ぞろぞろと令嬢たちが分かれていく。



デビュタントを終えた16歳からの貴族の女子が入るこのクラブは、主に慈善活動に力を入れている。

今日は半年に1度の教会バザーの日だ。

この日に向けて、皆で分担して小物を製作してきた。



私も含めたアクセサリー班の6名が台に集まる。

「では皆さん、各自お品を並べてから、順にお披露目いたしましょう」

班長の提案に、皆がそれぞれ作業に取り掛かる。

私は刺繍ブローチの担当で、作ってきた50個ほどを台に並べた。

それぞれの製作物を、お互いに披露し合うのも楽しみの一つ。

まずは私から。

「今回は3種類のブローチを作りました。まずは、春の花の刺繍のブローチ」

「色の組み合わせがとっても美しいですわね」

「ラベンダー柄のブローチから、ラベンダーの匂いがするのが面白いわ!」

「本当!」と皆で手に取って盛り上がる。

「確かに…今のご指摘で思いつきました!どのブローチにもラベンダーの香りをつけていたのですが、次は柄に合わせたお花の匂いをつけてみようと思います!」

素晴らしいわ、とお互いに拍手する。

「レイリア様、とてもいいお考えだわ!後で全体で共有いたしましょう!それで、次は?」

「こちらは冬に人気だった、メッセージブローチです。」

昨年冬に思いついて、売れ行きのよかったメッセージブローチ。

その時には『新年おめでとう』や『よいお年を』、『お誕生日おめでとう』などのメッセージを刺繍したものをブローチにしていた。

「少し内容も変えてみました。」

『はい』や『いいえ』、『ごめんね』『大好き』など、今回はバリエーションを増やしてみた。

「まあ、『ディ トゥワーン愛しています』ですって!」

キャア、と顔を赤くするご令嬢たち。

「書いてあることは熱烈ですけれども、ディーツ語で書いてあるから比較的付けやすいですわね」

「ありがとうございます。最後のブローチは、子ども向けに、動物の刺繍のものです」

「これは兎の顔ね」

「これは猫ね、かわいい!」

子ども用のブローチには前回と同様、音でも楽しめるように鈴を付けた。

「レイリア様の刺繍ブローチは今回も一番に売り切れそうですわね」

パチパチと拍手して、次のお披露目に移ろうとした時だった。




「ですから!これでは困ると申しているのです」

不穏な空気を感じ取り、少し離れた所にある隣の台を振り返る。

そこは布小物を担当している班の台で、刺繍したハンカチやキルトの小物入れなどが色鮮やかに並べられていた。

声を上げたのは布小物班の班長さんで、その向かいに立っているのはー

メイベル…

微笑を浮かべながら、メイベルが小首を傾げた。

「どうしてかしら?理由がわからないわ」

「どうしたのですか」

クラブ長のビシュヌ様がスッと間に入る。

「ビシュヌ様、このハンカチが…メイベル様の製作物なのですが、ご覧ください」

ビシュヌ様がハンカチを手に取って眺めると、すぐにメイベルに視線を移した。

「これは、ビーズを縫い付けたんですか?」

「そうです。ちょうどお花の刺繍の部分に。綺麗でしょう?」

ニッコリと笑うメイベルに、ビシュヌ様が困惑している。

「メイベル様、とても綺麗ではありますが、これはバザーのお品です。このような高価なものを付けたら、他のものよりも値段に差をつけなければいけなくなりますわ」

「まあ…でも、私の家で余っていたものです。もう使わないビーズを使っているの。材料は無料ただだから、その分の値段を上げる必要はありませんわ」

「それでも、班の他の方が作られたハンカチにはビーズが付いておりません。メイベル様が差額は要らないと仰っても、同じお金を出してビーズ付きのものを買える方と買えない方が出るのは不公平です。」

「でも、レイリアはお花の匂いをつけていましたわ」



ー私?

突然話題に出されてびっくりしてしまう。

ビシュヌ様も戸惑ったように、私にチラリと視線を寄越した。

「なぜ、ここで…レイリア様が出てくるのでしょう?」

メイベルは困ったように片手を頬に当てる。

「冬のバザーの後の会で、皆さんで共有したではないですか。刺繍ブローチにポプリでお花の匂いを付けてきて、買い手の方も嬉しくなるような素敵なサービスね、って」

「ええ。そうでしたね」

「それと同じですわ。」

「はい?」

「レイリアの付けたお花の香りと、私が付けたビーズ、変わらないでしょう?なのになぜ私のビーズはだめなのかしら?」

「・・・」

一瞬の沈黙。

「メイベル様、とても素敵な試みではありますけど、やはりビーズ付きの物を売るわけには参りませんわ。子どもにも使うものですから、ビーズで肌を傷つけてしまうかもしれませんし」

「ああ・・・そう言われればそうですわね。申し訳ありません、私、考えが足りませんでしたわ」

そう言って微笑むメイベルと、一瞬、視線が合った気がした。










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