大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

文字の大きさ
26 / 165
それぞれの春

アマンド ガーナーの邂逅②

「ード様・・アマンド様」

体を揺すられて、自分が寝てしまっていたことに気づいた。

しまった・・ここは・・そうだ、レイリアとの茶会だ・・

「アマンド様、白状してくださいませ。昨夜はお仕事だったのでしょう?」

「・・・いや」

昨日は王都を騒がせていた強盗団の大捕物があり、徹夜明けだった。

「では昨日は何時に寝たのです?」

いつもならすぐに取り繕えるはずなのに、寝起きの頭ですぐに反応できなかった。

「ほら、すぐに言えないではないですか。やはり寝ていないのでしょう?」

レイリアが、俺に詰め寄る。

「今からお屋敷に戻ってお休みください。折角のお休みが無駄になります」

決然とレイリアが言い切る。

無駄?無駄とはなんだ。俺は君と会うために今日まで頑張ってきてー

「やはり週に1回のお茶会は無茶です。月に1回に変えましょう」

は?月に・・1回!?

「レイリア、待ってくれ。月に1回なんて」

そんなこと、言わないで。

「いいえ、もうこれはアマンド様がどう言おうと・・もう決めました」

いやだ・・いやだ。これ以上、会えなくなるなんて耐えられない。

「なんでそんなこと言うんだ!俺は大丈夫だ!」

「大丈夫って・・今寝てしまうほどお疲れではないですか!」

「今は少し気を抜いただけだ!次からは気をつける」

「そういうことではなくて・・」

「月1回など・・レイリアはそれでもいいのか?」

「私?」

「レイリアは、それで平気なのか!?」

「私は平気です!・・平気でないのはアマンド様の方です。お仕事にも体にも差し障ります。早くお屋敷へ戻って休息を・・」

レイリアの声が、遠く感じる。

俺だけなのか?

毎日会いたいと願うのは、俺だけなのか?

毎日、何度も何度も、折に触れて君のことを頭に思い浮かべるのは、俺だけなのか?

こんなに恋い焦がれているのは・・

そうか、俺だけがー




レイリアは、俺がいなくても平気なのだ。

そう思ってしまったら、もうだめだった。

これまでのレイリアとのひと幕ひと幕が、黒く塗りつぶされていく。

デビュタントの時、俺がパートナーじゃなくても平気だと言ったあの言葉は、本心だったのか。

俺に遠慮して屋敷に来なくなったのではなくて、来る必要を感じなかったから来なくなったのか。

むしろ俺との茶会を煩わしく思っていて、それでこんなに必死に頻度を減らそうとしているのではないか。

茶会が月に1回に減っても、本当にレイリアは平気そうだった。

「クラブ活動が忙しくて毎日あっという間です」と楽しそうに話す様子は、更に俺の心を抉った。

俺もレイリアと同じように、月1回の逢瀬でも平気ならば良かった。

会いたい思いは増すばかりなのに、茶会の度に、俺無しでも元気に楽しそうに過ごしているレイリアを見て、落胆し憤る。

意地で、茶会を増やしたいとも言い出せず、かと言って、茶会をいっそやめてしまうことも出来ず、俺の態度は益々硬化していった。

会いたくて会いたくて仕方なかったはずなのに、いざ会うと、本人を前にして無愛想な態度を取る。

会話はもちろん続かない。

途中からは、もう何を話せばいいのかもわからなくなり、いつからか、茶会でのレイリアは居心地悪そうに下を向くようになった。




騎士2年目に入り、俺は士官に昇格した。

1年目のあの無茶な呼び出しは全く無くなり、緊急の時でもなければ、毎週1日半は休みが取れる人並みの生活に戻った。

4月最初の休みの日、朝起きて、身支度を済ませて、朝食をとって、そして俺は呆けてしまった。

何をすればいいのか、わからない。

騎士団でのいつもの朝練のように鍛錬することを思いついて、庭で体づくりと剣の鍛錬をひと通り行った。

そして早めの昼食をとって、ひと息ついてこう思った。

1日ってこんなに長かったっけ。

まだまだ時間があるのに、何をすればいいのかわからない。

いくら頭を捻っても、やりたいことなど何も湧いてこなかった。

そうして、俺は認めざるを得なかった。

ただただ騎士団と家の往復をする日々が、俺から如何に、人間的な暮らしを奪っていたのかを。

そう思うのは俺だけではなかったようで、同じく2年目になった同期達も休み明け、「何して過ごせばいいのかわかんなかったよな」と口々に話していた。

そんな定期的な休日に慣れてきて、適度な休息とゆとりが、摩耗していた精神を引き上げてくれたようで、レイリアへの穿った見方は薄れていった。

騎士の仕事に明け暮れていたあの頃は、レイリアの言うように、毎週の茶会など無謀だった。

でも俺だって、レイリアに会えなくなることが不安で、ただ必死だったのだ。

俺の仕事を大事に思ってくれるのはありがたいが、俺の気持ちよりも仕事の方が優先されているようで気に食わない。

このままじゃいけない。

またここから、仕切り直して、レイリアと仲睦まじい関係を築いていきたい。

俺は新しい一歩を踏み出す覚悟で、4月の茶会のため、ディセンシア伯爵家へ向かった。



あなたにおすすめの小説

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

あのひとのいちばん大切なひと

キムラましゅろう
恋愛
あのひとはわたしの大切なひと。 でも、あのひとにはわたしではない大切なひとがいる。 それでもいい。 あのひとの側にいられるなら。 あのひとの役にたてるなら。 でもそれも、もうすぐおしまい。 恋人を失ったアベルのために奮闘したリタ。 その恋人がアベルの元へ戻ると知り、リタは離れる決意をする。 一話完結の読み切りです。 読み切りゆえにいつも以上にご都合主義です。 誤字脱字ごめんなさい!最初に謝っておきます。 小説家になろうさんにも時差投稿します。 ※表紙はあさぎかな先生(@yatusiro1)にコラージュアートを作成していただいたものです。 (*´˘`*)シアワセデスッ

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。

Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。 そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。 かつての自分は同じ大陸のこことは別の国…… レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。 そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、 シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。 しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。 何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。 そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。 当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い! そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。 アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……? 前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た

青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。 それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。 彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。 ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・ ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。