大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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ジュディ様のお兄様

「珍しく、妹が友人と会っていると聞いてね。様子を見に寄らせてもらったよ」

私の割と近くから声が聞こえて、思わず振り返った。

この方が・・ジュディ様のお兄様。

ジュディ様よりも色素の薄そうな白い肌、冷たく見える双眸の、瞳の色は薄いラベンダー。

栗茶色の長い髪を下の方でひとつにまとめている。

女性と見まごうような中性的な顔立ちだが、王宮騎士団の黒の騎士服がよく似合っていて、そのギャップが絶妙な色気を醸し出していた。

ジュディ様が妖精なら、この方は美の化身、と言ったところか。

彼はポカンと見上げる私の側まで来ると、軽く会釈した。

「初めまして。ディフィート マルグリットです。」

私も慌てて立ち上がった。

「レイリア ディセンシアです。すみません、手土産もなく・・お邪魔しております」

こんな美人に見つめられると、ドギマギしてしまう。

キーラといいメイベルといい、なぜ私の周りには美人が多いのだろう。

最近流行りのボードゲームみたいに、周りを美人で囲まれたら、ひっくり返って私も美人に変われたらいいのに。

「あの、いつもジュディ様には大変お世話になっていて・・」

「本当に?妹があなたに無茶を言っていないだろうか、心配だったのですが。先ほども、青ざめていたように見えましたが、大丈夫ですか?」

「ちょっと!お兄様!」

ジュディ様が声をあげ、剣呑な空気が漂い始めたので私は慌てて言葉を続けた。

「いえ、ジュディ様はいつも私を気にかけてくださっています」

「気にかける?ジュディが・・?」

「はい。今も私の相談に乗っていただいていたところで・・」

ディフィート様が戸惑ったような顔をしている。

そりゃそうですよね。

17歳の私が15歳の年下に相談するなんて、何事だと思いますよね。

「そうですか・・それなら、私から言うことはありません」

「なら早く出て行ってくださる?」

「ジュディ、少し私も混ぜてくれないかな?昼を少ししかとれなかったんだ」

「嫌よ。早くあっちに・・」

「ディフィート様、こちらにお席を準備してございます。」

「ああ、ゲルトすまない。ミルクティーには栗の蜂蜜を入れてくれ」

「かしこまりました」

お茶会に、蜂蜜の種類にまでこだわる新メンバーが加入した。




ディフィート様は本当にお腹が減っていた様で、上品な所作で今、3個目のスコーンをミルクティーで流し込んでいる。

何となくジュディ様と話しづらくて、私もお菓子を頂いていた。

「レイリア様、こちらのババロアはいかがでしょうか?上段が季節の果物のゼリー寄せ、下段がオレンジのババロアとなっております」

「…いただきます!」

ゼリー寄せの部分が、光を反射してキラキラと輝く。

苺にオレンジ、メロン、キウイやビワまで入っている。

ジュディ様にはアドバイスだけでなく、普段は食べられないようなこんなスイーツまで頂いて・・

心の中で感謝を唱えながら匙で掬って口に運ぶ。

フルフルとしたゼリーと、濃厚だが爽やかなオレンジの風味のババロア。そしてフルーツの果汁感。

美味しい。幸せだ。

「君は…」

唐突なディフィート様の発言に顔を向けると、美しい顔がじっとこちらを見ていた。

「随分、幸せそうに食べるんですね…」

「・・・」

「そんなの、お兄様より先に、私が思ってたわよ」

ジュディ様が謎の対抗心を見せる。

「ゲルト、私にも同じものを」

「私にも頂戴」

お二人ともお気に召したようで、ババロアのゼリー寄せを完食した。



「そうそう、面白い話があるのよ?お兄様。レイリアがね?」

「ジュディ様!」

婚約解消したいって話は、秘密にしてくれるんじゃなかったんですか!

「ついさっきまで、私のお兄様が誰だか、知らなかったのよー?フフフ」

「ジュディ様ぁ!」

その話もダメ!
絶対、ご本人に話しちゃダメなやつ!

「そんな人もいるんじゃないかな?」

「いるわけないでしょ?貴族の常識よ!常識!」

「その節は本当に、申し訳ありませんでした!」

コロコロと笑うジュディ様だったが、ふと顔を上げた。

「そうよ・・なぜお兄様の事、知らないの?去年の御前試合で、あなたの婚約者と対戦したじゃない」

「私と対戦を?」

「レイリアの婚約者はアマンド ガーナー様なのよ、お兄様」

「ああ、あの男ね・・へえ」

「あそこでお兄様に負けて、準決勝に進めなかったじゃない」

喉の奥が、一気に張り付いたような気がする。

どうか自然に見えますように、と願いながら、ぎごちなく笑った。

「それが、風邪で体調を崩してしまって・・私は見に行けなくて」

「はぁ?嘘でしょ?あなた、あの試合を見てないの?」

「そうなんです。2日間とも、家で寝込んで過ごしていました。」

「はぁー、あなた、色々と残念ね」

ジュディ様の口から去年の御前試合の様子が語られる。

「すみません」と笑いながら、2人に気づかれなかったことに、私は安堵した。







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