大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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馬車で追及されてます。

「お気をつけていってらっしゃいませ」

セバスチャンに見送られ、馬車が動き出した所でハッと我に帰る。

アマンド様のあまりに呆気ない反応に、固まってしまっていた。

いや、まあそうか。

アマンド様のこの無反応な感じは、今に始まった事じゃない。

去年の、特に夏を過ぎた頃からはずっとこんな感じだった。

前回、前々回が少し様子が違ったので、期待していたのかもしれない。

期待って…はあ。

何を期待してたんだろう、私は。

どちらかと言うと、この反応は作戦のねらい通りなのに。

沈みはじめる気持ちに意識を向けたくなくて、気を取り直して顔を上げる。 

アマンド様とバチっと目が合って、思わず車窓の外へ目を逸らした。

え…こっち見てた?

…いつから見てた?

もしかして、ずっと見られてた?

折角おさまっていた心臓が、ドッドッドッドッと主張し始める。

馬車は港の方へ向かう緩い坂を下っていく。

このまま下ると、大通りに出る。

そういえばどこへ向かうのか聞いていなかったが、街にでも行くのだろうか。

チラッと横目で確認すると、また視線が合う。

…そんなにこの格好が変だろうか。

「い、いつまで見てるおつもりですか」

たまらず声に出してしまう。

「…ひとつ確認だが」

「は、はい?」

「それは誰が選んだんだ?」

視線の先を見るに、"それ"とは、このワンピースの事だろう。

「これは…キーラが見立ててくれたものです」

「君の側付きの?」

「はい」

「・・・」

アマンド様がまた私と視線を合わせる。

黄色の目が、金に光った気がした。

「買ったのは、誰?」

ピンときた。

何かを疑われている。

このワンピースを購入したのは私だ。

小切手にサインをした時、ちゃんと本名を書いている。

虚偽など働いていない。

請求も間違いなく家に来るはずだ。

不正購入でも疑われているんだろうか?

前回騎士団でグルト様が仰っていた、私がアマンド様の弱点になっているとかいう、あの件に絡んだことなのか。

または、このワンピース自体に問題がある、とか?

確かに、購入した時は浮かれていて深く考えなかったが、古服の割に随分高い買い物ではあった。

もしかして、盗品の類だったり、御禁制の品だったりするのだろうか?

もしそうなら、本当に私のせいで、アマンド様のキャリアに傷が…!

黙ってしまった私に、アマンド様が首を傾け目を眇めた。

「レイリア、誰が買ったの?」

知らなかったとは言え、すでに購入してしまっている。

私は意を決して返答した。

「わ、私が…私が自分で買いましたっ!」

「…本当に?」

今のアマンド様の反応で、疑われていることが確定した。

大丈夫よ、レイリア。

購入方法に問題はないはず…!

「本当です!ちゃんと小切手にサインしました!」

「本当に、自分で買ったの?」

アマンド様の追求が止まらない。

「何か、俺に言っておくべき事があるなら、今言ってくれるか?」

自分で買ったのは本当だし、他に言っておくべきことなんて特に思い当たらない。

このワンピースだって、出自は確かなものだと店主が・・・ん?

あ、あー。

そうか、もしかして。

私はようやく思い至った。

アマンド様、もしかして、古服を嫌がる繊細なタイプの方ですか?

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