大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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婚約者の遠回しな意図を読み取ります。

なぜこんな簡単なことに気が付かなかったのか。

キーラが散々気にしていたのに。

彼は古服を気にする方の人なのか!

まさかアマンド様がそうとは思わなかったが、彼も貴族だもの。

つまり、アマンド様はこう言いたいのだ。

伯爵家令嬢として、アマンド様の婚約者として、着古されたワンピースを買うなど、君は恥ずかしくないのか?と。 

婚約者としてアマンド様の隣に立つ今日この日に、わざわざ古服を選んで着てくるなど、君は正気なのか?と。

そこに気づいて欲しくて、さっきから私にしつこく確認してくるのだろう。

アマンド様は婚約者としての義務を忠実に守っている。

今まではその価値観を、相手の私に押し付けてくることはなかったが、さすがに今日は見過ごせなかったのかもしれない。

これは申し訳ない。

古服を着てくる無礼を働いた上、「気合を入れてきました!」なんてお披露目までしちゃって。

アマンド様は紳士的に、婉曲的に私の無礼を指摘してくれたんだろう。

「す、すみません!これには理由がありまして!」

「・・・聞こう」

「実はこのワンピースは、キーラが連れて行ってくれた古服屋で見つけたもので、試しに着てみたらとても気に入ってしまって…それで購入したものなのです。」

「うん?」

「貴族の方が作られたヴィンテージで、質はとても良いものなのです。本当かは分かりませんが、一度も袖を通されることなく古服屋に卸されたというお話だったので、その…私自身、新品みたいな気持ちになってしまっていて・・・」

話しながらも、"古服屋で売っていたワンピース"という時点で嫌がる貴族の方が多いかも、という気がして言葉が尻すぼみになっていく。

私はまだ、彼の婚約者だ。

誰から見ても、恥ずかしくない格好をするべきだった。

婚約者として、マナーには気をつけるべきだと、彼はそう言いたいのだろう。

「申し訳ありません。アマンド様。」

このワンピースは、デビューと共にお蔵入りか…

「わかった。それならいいんだ、レイリア」

アマンド様の弾む声で、重苦しい雰囲気は霧散した。

あれ?

「いえ、良くはありません。今から引き返してよければ、私、着替えて」

「必要ない。レイリア、そっちに行ってもいい?」

「え?あ、ハイ。」

席を譲ろうと立ち上がると、彼が隣に立ち、腰に手を回され一緒に座らされる。

ん?私があっちの席に座るんじゃなくて?

「レイリア、よく、似合っている。」

「あ…ありがとう、ございます」

突然の褒め言葉に、私は面食らったが、とりあえずお礼を言う。

もしや、私のワンピースを認めてくれた?

古服屋に売ってはいたけど、新品未使用なら可とする、と許容してくれたのかも!

「まず色がいい。肌の白さを引き立てている。」

「そうですか?ありがとうございます」

古服ではないと認定できたことで、彼は安心して、先ほど言えなかった婚約者としての義務褒め言葉を口にしているのだろう。

「それに、服の形も俺の好みだ。清楚で、レイリアの可憐さがよくわかる。」

「あの、ありがとうございます」

「新緑を思わせるその色は、この季節をそのまま模しているかのようだな。若木…いや、若葉の妖精、と言ったところか・・」

「そ、そんな、過分に褒めていただかなくても」

「茜色の髪とその緑がよく引き立てあっていて、街中の視線を一気に集めてしまいそうで心配だ」

「そんなことあるわけ・・ハイ、アマンド様、もうそれくらいで・・」

「そのスカートの丈もいい。レイリアの細く形の良い足は綺麗だが、やはりあまり出すのは良くないからな。普段より少し長めな丈のそのスカートは、クラシカルな雰囲気も漂って品がある」

「・・アマンド様、あの、それまだ続きます?」

「その髪型も、顔の小ささが際立っていい。だが気になるのはやはり首筋と襟ぐりの露出が過ぎるところで…」

「あの・・ちょっと」

何がそんなにアマンド様の気に障ったのだろうか。

私の耳元で、アマンド様が饒舌に私の羞恥を煽ってくる。

これは所謂、褒め殺しではないか。

あんな自信満々に「お洒落しました!」と言った自分が恥ずかしい。

言外に、いくらお洒落をしたところで、お前はメイベルの足元にも及ばない、と言いたいのかもしれない。

彼の褒め殺しで、私はもうパニック寸前だ。

彼が足首について言及し始めた辺りから、耐え切れずに、顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

そして、それは目的の場所に到着するまで続くのであった。

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