大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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家族との朝食

それは、朝食の席でのことだった。

朝食を食べ終え、ナプキンで口元を拭いた母が切り出した。

「レイリア、今日は特に予定はないかしら」

「ええ、特にはありません」

「そう、それなら今日この後、仕立屋が来るからあなたもいらっしゃい」

「私も?」

「カインの服を仕立て直すのに呼んだのだけど、ちょうど良かった。あなたのドレスも作りましょう。」

「え?いいんですか?」

テーブルの上を滑らせ、お母様がついっと私の方に出してきたものを見て、嫌な予感がした。

「・・・お母様!また勝手に封を開けて!」

母の差し出したのはマルグリット侯爵家の封ろうのついた手紙だった。

私の抗議を気にもとめず、お母様はにっこりと微笑む。

「お茶会の招待状でした。侯爵家からあなた宛ての、正式なものよ」

「え?」

慌てて手紙を開くと、私宛ての封筒の差出人にジュディ様のお母様のサインがある。

ピシリと固まる私に構わず、母はウキウキと話を続ける。

「マルグリット侯爵家のお茶会だから、きっととっても華やかよ。そろそろあなたのドレスも作り変えなきゃと思ってたの。このタイミングで、ドレス以外も新しくしちゃいなさい。こないだあなたが買ってきたワンピースなんて、とても似合ってたじゃない。ようやくあなたもおしゃれを気にし出したみたいだし」

「おや、レイリアはいつの間にマルグリット侯爵家と縁が出来たんだい?」

新聞から紅葉のように真っ赤な髪と、柔和な茶色の目が覗く。

セバスチャンにコーヒーのお代わりを頼みながら、お父様は広げていた新聞紙を畳んだ。

「旦那様、その事についてはこの間、お話ししたじゃないですか」

私の話、全然聞いてないんだから!とむくれるお母様に、そうだっけ?と返すいつものやり取りに、カインがまたかと呆れている。

「夜会じゃなくて、お茶会なのかい?」

「久々のお屋敷での社交場の開催でしょう?最初だから日中にしたんじゃないかしら」

「ああ、そうか。喪が明けたのか」

頷いてコーヒーカップに手を伸ばす父に思わず聞いた。

「喪って・・どなたが亡くなられたの?」

「マルグリット侯爵家の御長男がいるだろう、王宮騎士団の」

薄いラベンダー色の瞳が頭に浮かぶ。

「その婚約者がね。昨年の夏にお亡くなりになったんだよ。元々体が弱くて病気がちだったらしい」

「・・・そうなんですか」

そういえば、指輪はしていなかった。

ジュディ様と6歳離れているという割に、ご結婚はまだなんだな、とは思っていたけれど。

ん?と父が母を見た。

「それなら、そのお茶会は御長男の婚約者選びも兼ねているんじゃないかい?」

「きっとそうだと思うわ!ご年齢的にも、もう決めたいところよね」

カインがワクワクした顔で続く。

「じゃあ今度のお茶会は女の戦いだ!」

「レイリアが行っても大丈夫なのかね?」

「そんなの・・・」

お母様とカインが顔を見合わせる。

「相手にされないに決まってるじゃなーい」

母の言葉を皮切りに、アッハッハッハ、とうちの家族が笑っている。

なんだこの茶番は。

それに、とカインが続ける。

「ディフィート マルグリットはメデュー”サー”だからね」

「メデューサ?」

「違う違う、メデュー”サー”だよ。ほら、すっごい顔がいいだろ?見つめられた女は、次々と石のように固まったり倒れたりするから、メデューサと騎士サーをかけて、通称メデューサー」

さすがは美の化身だ。

威力がすごすぎて怪物扱いされている。

だが、ディフィート様だって心を痛めているかもしれない出来事を茶化すのは間違っている。

「カイン、それは失礼よ」

「わかってるって。俺は聞いた話をしただけ」

チロリ、と舌を出してカインは席を立った。

「仕立屋が来たら、俺が先でもいい?今日はロイと約束してるんだ」

「いいわよ。どこか行くの?」

「王宮騎士団の公開練習、見に行くんだ。ロイに誘われててさ。」

相変わらず、ロイとは仲がいいらしい。

噂の色男をこの目に焼き付けてくるぜ、と言ってカインは食堂を後にした。

「ロイって誰なんだい?」

その父の質問が、またもや母の「私の話を聞いてない!」の導火線に火をつけたところで、私も食堂を後にした。

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