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夏
メイベル
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メイベルと私の付き合いは本当に小さな頃から始まった。
メイベルはボートウェル子爵家の第一子で、兄弟はいない。
メイベルの母親の実家は伯爵家で、うちの屋敷から目と鼻の先にあったこともあり、同い年の私たちは、それこそ毎日のように遊んでいた。
子爵家も王都にあったが、私が物心ついた時にはすでに、母親とともに伯爵家で暮らしていたのだと思う。
メイベルが突然いなくなったのは、7歳を過ぎた頃。
それまで順調だったボートウェル子爵が事業に失敗し、メイベルは家族とともに領地に去って行ったらしい。
お別れもできなくて、私は幼いながらに涙に明け暮れたのを覚えている。
それが、一昨年の秋、なんの音沙汰もなかったメイベルが突然手紙を寄越し、私たちは久方ぶりに再会を果たした。
プラチナブランドと私より少し濃いブルーの瞳。
そして子供の頃の面影を残す顔立ちで、メイベルだとすぐにわかった。
後で聞いた話では、ボートウェル子爵は貿易事業で成功して王都に凱旋してきたらしい。
これからは王都で暮らすことになると聞いて、嬉しくて、その後は何度も家に遊びに来てくれて、私たちは親密さを増していった。
メイベルは、外見の美しさはもちろんだが、人との距離のつめ方が上手くて、初対面の人でもすぐに仲良くなれる。
甘え上手なのだと思う。
彼女を慕う者は男女問わずきっと多いのだと思うが、なぜかメイベルは私にべったりだった。
いつも固さが抜けず、社交が苦手な私は、彼女を見習うことばかりだった。
覚悟が決まると大胆になることもあるが、そうでなければ常に受け身な私が、ジュディ様とのお茶会に行ったのも、もしかしたらメイベルに少なからず影響を受ていたのかもしれない。
アマンド様を紹介したのは、メイベルと再会して間も無くの頃だったと思う。
その時は儀礼的な挨拶を交わした程度で終わったのだが、少し違和感を感じたのは、春を過ぎた頃だったろうか。
メイベルの口から、アマンド様の名前が頻繁に出るようになった。
最初は、定例のお茶会を1回にしたものの、彼の体調や忙しさを気にする私を気遣って、だから彼にまつわる話が多いのだと思った。
でも、夏に入り、彼から直接聞かないとわからないような話が増えていく。
違和感とともに、嫌な予感も大きくなっていったが、相変わらずメイベルは私にべったりで、だからどこかで高を括っていたのだ。
ある日、クラブの皆と外の催しを準備している際に、見回りをしていたアマンド様が遠目に見えた。
仕事の邪魔になるかもしれないから、と話しかけることをためらう私に対して、「大丈夫よ」と笑顔で話しかけに行ったメイベルに、アマンド様が優しく微笑んでいた。
アマンド様のそんな柔和な表情を・・昔私に向けてくれたような顔を、久しぶりに見た気がした。
いつの間に、あんなに2人は仲良くなったんだろう。
メイベルが私を指し示し、アマンド様が驚いたように顔を上げる。
「あ・・」
そうして足を踏み出そうとしたが、私を見た途端に彼の表情が硬くなったのを見て、動きを止めた。
そのまま、メイベルと二言三言話して、アマンド様は踵を返す。
「仕事中だからって戻って行かれたわ。せっかくだからレイリアに会って行かれたら?って聞いたんだけど」
帰ってきたメイベルの話をどこか遠くに聞きながら、さっきの彼の表情の変化を、私は何度も思い返していた。
メイベルはボートウェル子爵家の第一子で、兄弟はいない。
メイベルの母親の実家は伯爵家で、うちの屋敷から目と鼻の先にあったこともあり、同い年の私たちは、それこそ毎日のように遊んでいた。
子爵家も王都にあったが、私が物心ついた時にはすでに、母親とともに伯爵家で暮らしていたのだと思う。
メイベルが突然いなくなったのは、7歳を過ぎた頃。
それまで順調だったボートウェル子爵が事業に失敗し、メイベルは家族とともに領地に去って行ったらしい。
お別れもできなくて、私は幼いながらに涙に明け暮れたのを覚えている。
それが、一昨年の秋、なんの音沙汰もなかったメイベルが突然手紙を寄越し、私たちは久方ぶりに再会を果たした。
プラチナブランドと私より少し濃いブルーの瞳。
そして子供の頃の面影を残す顔立ちで、メイベルだとすぐにわかった。
後で聞いた話では、ボートウェル子爵は貿易事業で成功して王都に凱旋してきたらしい。
これからは王都で暮らすことになると聞いて、嬉しくて、その後は何度も家に遊びに来てくれて、私たちは親密さを増していった。
メイベルは、外見の美しさはもちろんだが、人との距離のつめ方が上手くて、初対面の人でもすぐに仲良くなれる。
甘え上手なのだと思う。
彼女を慕う者は男女問わずきっと多いのだと思うが、なぜかメイベルは私にべったりだった。
いつも固さが抜けず、社交が苦手な私は、彼女を見習うことばかりだった。
覚悟が決まると大胆になることもあるが、そうでなければ常に受け身な私が、ジュディ様とのお茶会に行ったのも、もしかしたらメイベルに少なからず影響を受ていたのかもしれない。
アマンド様を紹介したのは、メイベルと再会して間も無くの頃だったと思う。
その時は儀礼的な挨拶を交わした程度で終わったのだが、少し違和感を感じたのは、春を過ぎた頃だったろうか。
メイベルの口から、アマンド様の名前が頻繁に出るようになった。
最初は、定例のお茶会を1回にしたものの、彼の体調や忙しさを気にする私を気遣って、だから彼にまつわる話が多いのだと思った。
でも、夏に入り、彼から直接聞かないとわからないような話が増えていく。
違和感とともに、嫌な予感も大きくなっていったが、相変わらずメイベルは私にべったりで、だからどこかで高を括っていたのだ。
ある日、クラブの皆と外の催しを準備している際に、見回りをしていたアマンド様が遠目に見えた。
仕事の邪魔になるかもしれないから、と話しかけることをためらう私に対して、「大丈夫よ」と笑顔で話しかけに行ったメイベルに、アマンド様が優しく微笑んでいた。
アマンド様のそんな柔和な表情を・・昔私に向けてくれたような顔を、久しぶりに見た気がした。
いつの間に、あんなに2人は仲良くなったんだろう。
メイベルが私を指し示し、アマンド様が驚いたように顔を上げる。
「あ・・」
そうして足を踏み出そうとしたが、私を見た途端に彼の表情が硬くなったのを見て、動きを止めた。
そのまま、メイベルと二言三言話して、アマンド様は踵を返す。
「仕事中だからって戻って行かれたわ。せっかくだからレイリアに会って行かれたら?って聞いたんだけど」
帰ってきたメイベルの話をどこか遠くに聞きながら、さっきの彼の表情の変化を、私は何度も思い返していた。
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