大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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勝負に勝たなきゃ意味がない。

クラブ活動に向かう馬車の中で、私は何度目かの重いため息を吐いた。

はっきり言って憂鬱だ。

これからメイベルにどんな顔で会えばいいのだろう。




一昨日の日曜日、馬車の中で尋問モードのアマンド様と対峙した。

その中で、アマンド様が私の存在を騎士様たちに隠していたのは、悪い人に狙われる可能性を考えてのことだった、と判明したまでは良かった。

私自身もずっと気にかかっていたことだったし、それに、これでマルグリット侯爵家のお茶会にも晴れて私1人で参加できると、そう思っていた。

でも、アマンド様の方はそうではなかった。

その時の会話が頭の中に蘇る。

***


『私が人質になったりしないように、情報を伏せてくださっていた、ということですよね?』

『レイリア、全くもってその通りだ』

そう言った後に、お礼を述べる私に向かって、アマンド様が話を続けた。

「話もまとまったことだし、レイリア、来週は俺が迎えに行こう。」

ん?

「いえ、ですから来週は私はお茶会に行くので会えませんと・・」

「だから、その茶会に一緒に行く、と言っている。」

「はい!?」

なぜだ。

さっき回避したはずの茶会行く行かない問題が舞い戻ってきた。

「私がアマンド様の婚約者だとは極力周囲に知らせないようにした方がいいんですよね!?であれば、一緒に茶会に出るなど本末顛倒ですし」

「俺と一緒にいる時は大丈夫だ。怪しい奴がいたらすぐにわかる。」

なにその理屈!

「それとも・・俺が行ってはまずい理由でもあるのかな?」

私は開きかけた口を、噤んだ。

危険だ。

この話の流れは非常に危険だ。

「・・ないです」

さっき逆転したはずなのに・・・!

「どんな良い試合運びでも、結局勝たなきゃ意味がないんですよ!」と言っていたのは、確かロイだったか…

胸に迫る敗北感に呆然とする。

え・・本当に、ジュディ様の前に2人で立つ羽目になるの?

え、本当に?

「ドレスを贈りたかったが・・さすがに間に合わないか・・でもそうだな。それなら・・」

アマンド様が何かブツブツ呟いて顔を上げた。

「よし、これから指輪を買いに行こう」

「はい!?」

アマンド様が、指を絡めて私の左手を持ち上げた。

「レイリア、すまなかったな。うっかりまだ婚約指輪を作っていなかった。正式な指輪を作るには間に合わないが・・次の茶会でこの指にはめる指輪を探さないと・・」

そうして小窓から馭者に貴族御用達の宝石商に向かうよう指示を出す。

「アマンド様!そんな、急に困ります!」

「遠慮しないでくれ。そもそもが婚約者として、これまで君に贈り物をしなさすぎたんだ。どうせならネックレスもイヤリングも髪飾りもいいものがあれば・・」

婚約者の義務感を持ち出してきたアマンド様に、内心大いに焦る。

これから婚約解消するのに、金品を受け取るわけには・・・!

「遠慮ではなくて・・・!そんな間に合わせの指輪なんて嫌ですわ!」

苦し紛れにそう叫ぶと、スリスリと私の薬指を撫でていたアマンド様の動きがピタッと止まった。

「嫌・・?」

「その・・皆さんにお披露目するのに、ちゃんとした指輪でないと、恥ずかしいです!」

きっとアマンド様は、何て高慢で強欲な女だと思っただろう。

彼がせっかく気を遣って、指輪を買ってくれると申し出てくれているのに、人の目を気にして、とにかく正式な婚約指輪を寄越せと言っているようなものだ。

酷いことを言っている自覚はある。

正直今の私なら、彼がくれたものなら何でも・・、その辺の石ころだって、宝箱に入れて大事にしてしまいそうだ。

でも、だからこそ、思い出に残ってしまいそうなものは、極力残したくない。

「そうか…まあ、レイリアがそう言うなら、今回は俺も一緒に行くし…。わかった。では婚約式の時に贈ったイエローダイヤは、今度預からせて欲しい。すぐに指輪にして贈りたい。」

「わかりました!」

婚約解消のその時まで、何やかんや理由をつけて絶対渡さないようにしよう。

そう密かに決意したところで、馬車が止まった。

「クレア宝石店に到着いたしました」

馭者が到着を告げる。

「よし、出よう。」

「え?でも、もう指輪は…」

「指輪のサイズを測ってもらおう。それに、指輪以外ならいいんだろう?」

彼はなぜ、こんなに性急に結婚に向けて進もうとするんだろう。

メイベルと結ばれないことがわかり、もう破れかぶれになってしまっているのだろうか。

結局、その後は彼に押し切られ、イヤリングをプレゼントされてしまった。


***


ビシュヌ様のお屋敷に到着し、馬車のドアがノックされる。

「お嬢さま、到着しました。」

「…ええ」

私は最後に大きくため息をついて、馬車を降りた。

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