55 / 144
夏
巻き込まれそうです。
しおりを挟む
ルチア(仮)が裏門の方へ向かうのを見やってから、2人並んで、白いテントの会場に歩き出す。
「何と話しかけられたんだ?」
「ジュディ様絡みで、私と話してみたかったと言われましたわ。ご親戚ではなさそうでしたが・・あ、でもディフィート様とはお知り合いのようでした」
少し考えてから、またルチア(仮)の方を振り返ったアマンド様だったが、そこにはもう聖ジルチア像しか立っていない。
「どなたか、思いつかれますか?」
「いや・・・もしまた現れたら、教えてくれないか?」
「はい。アマンド様は、私に御用でしたの?」
私がアマンド様の元へ向かおうとしていたのに、ちょうどいいタイミングで現れてくれた。
「迷って戻ってこれないのかと思って、迎えに行った」
相変わらずの子ども扱い…
「足は、痛く無いか?」
「はい、そんなには」
靴の形が合っているので靴擦れは無いが、いつもよりも高いヒールのせいか、そういえば脛のあたりに違和感がある。
「俺は腹が減った。少し座って休もう。」
会場の一角に準備してあった椅子に腰掛けてお茶を飲み、ふう、と一息つく。
少し離れたところに、こちらに背を向けて、軽食コーナーを物色するアマンド様が見える。
やはり1プレートでは足りなかったらしく、ローストビーフのサンドイッチのお代わりを求めて行ったのだ。
私はジュディ様のところで美味しいお菓子をいただいたので、ほとんどお腹は減っていない。
ジュディ様にも会えたし、アマンド様のお腹が満たせたら帰ろう。彼は明日も仕事だ。
マルグリット侯爵夫人にご挨拶できなかったのが心残りだけれど、今日はこの人数だもの、きっとお許しいただけるんじゃないかしら。
会場にあった、氷でできた白鳥の彫刻も見ることができたし。
そう思いながら周囲を見回していると、早足で会場を横切ろうとするディフィート様が目にはいった。
ディフィート様の茶席は解散したのか。
後ろから令嬢が数名追いかけようとしているようだが、どんどん進むディフィート様には追いつけなさそうだ。
ディフィート様、難儀ですねぇ。
急いでるというよりは、それとなく逃げてる感じかなぁ・・・騎士だけあって、やはり身のこなしがいい。
そんなディフィート様の進行方向から夜会並みに着飾っているご令嬢が現れた。
今の時代のご令嬢は強かだ。
人はあれをはさみ打ちと呼ぶ。
しかしディフィート様もそれを見越して進行方向を修正した。
その瞬間、バチッと目が合う。
「ヒェッ!」
令嬢らしからぬ声が漏れてしまった。
ディフィート様が、文字どおりズンズンとこちらへやってくる。
引き連れてる!引き連れてます!
やめて!来ないで!
巻き込まないで!
願い虚しく、ディフィート様が声を張る。
「君!ディセンシア家の!久しぶりだね!」
ああー。
「何と話しかけられたんだ?」
「ジュディ様絡みで、私と話してみたかったと言われましたわ。ご親戚ではなさそうでしたが・・あ、でもディフィート様とはお知り合いのようでした」
少し考えてから、またルチア(仮)の方を振り返ったアマンド様だったが、そこにはもう聖ジルチア像しか立っていない。
「どなたか、思いつかれますか?」
「いや・・・もしまた現れたら、教えてくれないか?」
「はい。アマンド様は、私に御用でしたの?」
私がアマンド様の元へ向かおうとしていたのに、ちょうどいいタイミングで現れてくれた。
「迷って戻ってこれないのかと思って、迎えに行った」
相変わらずの子ども扱い…
「足は、痛く無いか?」
「はい、そんなには」
靴の形が合っているので靴擦れは無いが、いつもよりも高いヒールのせいか、そういえば脛のあたりに違和感がある。
「俺は腹が減った。少し座って休もう。」
会場の一角に準備してあった椅子に腰掛けてお茶を飲み、ふう、と一息つく。
少し離れたところに、こちらに背を向けて、軽食コーナーを物色するアマンド様が見える。
やはり1プレートでは足りなかったらしく、ローストビーフのサンドイッチのお代わりを求めて行ったのだ。
私はジュディ様のところで美味しいお菓子をいただいたので、ほとんどお腹は減っていない。
ジュディ様にも会えたし、アマンド様のお腹が満たせたら帰ろう。彼は明日も仕事だ。
マルグリット侯爵夫人にご挨拶できなかったのが心残りだけれど、今日はこの人数だもの、きっとお許しいただけるんじゃないかしら。
会場にあった、氷でできた白鳥の彫刻も見ることができたし。
そう思いながら周囲を見回していると、早足で会場を横切ろうとするディフィート様が目にはいった。
ディフィート様の茶席は解散したのか。
後ろから令嬢が数名追いかけようとしているようだが、どんどん進むディフィート様には追いつけなさそうだ。
ディフィート様、難儀ですねぇ。
急いでるというよりは、それとなく逃げてる感じかなぁ・・・騎士だけあって、やはり身のこなしがいい。
そんなディフィート様の進行方向から夜会並みに着飾っているご令嬢が現れた。
今の時代のご令嬢は強かだ。
人はあれをはさみ打ちと呼ぶ。
しかしディフィート様もそれを見越して進行方向を修正した。
その瞬間、バチッと目が合う。
「ヒェッ!」
令嬢らしからぬ声が漏れてしまった。
ディフィート様が、文字どおりズンズンとこちらへやってくる。
引き連れてる!引き連れてます!
やめて!来ないで!
巻き込まないで!
願い虚しく、ディフィート様が声を張る。
「君!ディセンシア家の!久しぶりだね!」
ああー。
応援ありがとうございます!
14
お気に入りに追加
2,121
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる