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夏
不審者かもしれません
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ジュディ様のお茶席から、白いテントの会場まで戻る小径の途中、聖ジルチアの彫像を通り過ぎるところで、声がかかった。
「やあ、君がレイリアさんだね」
彫像の影からゆっくりと現れたのは、黒髪黒目の青年だった。
年の頃は私と同じ位にも見えるし、落ち着いた雰囲気から20歳をすでに越えているようにも見える。
白い肌は陶器のようで、作り物のような印象を受ける。
「あの・・」
初対面、だと思うのだけれど、相手が私を認識しているらしいので言葉が続かない。
「ああ、合ってるよ。私と君は初対面だ。」
「・・あの、どちら様でしょう?」
出来れば早く向こうに行きたいんですが…
「私は、ジュディと縁の深い者だよ。」
オリーブグリーンのスーツは上質で、高位貴族であることは間違い無い。
「・・・ご親戚の方ですか?」
私の質問に答えずに微笑む。
怪しい・・・
「警戒しないでおくれ。本当は私はここに来てはいけないことになっているんだよ。だから名も明かせない。でも、そうだな…」
チラッと彫像を見る
「ルチア、とでも呼んでくれ。」
今しがた作った偽名で自己紹介されても困る。
「ジュディに友人ができたと聞いて、一度、君と話してみたかったんだ。」
「ジュディ様ならあちらですが…」
「行きたいのは山々なんだけどね。ジュディには嫌われてるんだ・・・今日は久々に公式な茶会を設けるとディフィートから聞いて、少し様子を見に来たんだ」
「ディフィート様とお知り合いなんですか?」
「そうだよ。ちょっとは信用してくれたかな?」
「・・・」
知り合い、といっても自称だし。
「君のおかげで、ジュディは令嬢たちとも親交を深められたし、悪い噂も払拭できそうだ。」
なぜ作り物みたいだと思ったのか、わかった。
この人、感情が読めないんだ。
「ジュディからあんなに心許されていて、羨ましい限りだよ。少し嫉妬してしまうな」
言葉ではそう言っているけれど、感情は乗っていないように聞こえる。
「そうだ、私とも友達になってくれない?」
穏やかな表情ではある。
が、なんとなく、気を許せない。
「いえ、ちょっとそれは…」
芝を踏む音がして顔を向けると、アマンド様がこちらに向かって来るところだった。
「ああ、ガーナー伯爵令息か」
アマンド様が私の前に立ちはだかる。
「・・・どなた様ですか」
「初めまして、ルチアだ」
堂々と嘘をつくルチア(仮)を無視して、アマンド様はチラリと私をみた。
「知り合いか?」
「いえ。」
アマンド様が警戒している。
「アマンド様、やはりこの人、不審者ですか?」
ヒソヒソと話したのに、ルチア(仮)には聞こえたようだ。
「ひどいなぁ。父上が聞いたら嘆き悲しむよ」
「レイリアに何か御用ですか」
「おしゃべりしていたんだ。ね?」
そう言って、凪いだ瞳を私に向ける。
「2人とも、私の友達になってくれたら嬉しいんだけどね。」
「身元の不確かな人はちょっと…」
「まあ、そうなるか。じゃあ…私がちゃんと名乗ったら、その時は友達になっておくれね。約束だよ」
「そろそろお時間です。」
彫像の影から、ふいに男の声がかかる。
もう1人居たのか…
「それじゃ、私はもう行くよ。話せて楽しかった。きっとまた会うだろうから、よろしくね、2人とも」
そう言って、ルチア(仮)は私たちと反対方向に歩いて行った。
「やあ、君がレイリアさんだね」
彫像の影からゆっくりと現れたのは、黒髪黒目の青年だった。
年の頃は私と同じ位にも見えるし、落ち着いた雰囲気から20歳をすでに越えているようにも見える。
白い肌は陶器のようで、作り物のような印象を受ける。
「あの・・」
初対面、だと思うのだけれど、相手が私を認識しているらしいので言葉が続かない。
「ああ、合ってるよ。私と君は初対面だ。」
「・・あの、どちら様でしょう?」
出来れば早く向こうに行きたいんですが…
「私は、ジュディと縁の深い者だよ。」
オリーブグリーンのスーツは上質で、高位貴族であることは間違い無い。
「・・・ご親戚の方ですか?」
私の質問に答えずに微笑む。
怪しい・・・
「警戒しないでおくれ。本当は私はここに来てはいけないことになっているんだよ。だから名も明かせない。でも、そうだな…」
チラッと彫像を見る
「ルチア、とでも呼んでくれ。」
今しがた作った偽名で自己紹介されても困る。
「ジュディに友人ができたと聞いて、一度、君と話してみたかったんだ。」
「ジュディ様ならあちらですが…」
「行きたいのは山々なんだけどね。ジュディには嫌われてるんだ・・・今日は久々に公式な茶会を設けるとディフィートから聞いて、少し様子を見に来たんだ」
「ディフィート様とお知り合いなんですか?」
「そうだよ。ちょっとは信用してくれたかな?」
「・・・」
知り合い、といっても自称だし。
「君のおかげで、ジュディは令嬢たちとも親交を深められたし、悪い噂も払拭できそうだ。」
なぜ作り物みたいだと思ったのか、わかった。
この人、感情が読めないんだ。
「ジュディからあんなに心許されていて、羨ましい限りだよ。少し嫉妬してしまうな」
言葉ではそう言っているけれど、感情は乗っていないように聞こえる。
「そうだ、私とも友達になってくれない?」
穏やかな表情ではある。
が、なんとなく、気を許せない。
「いえ、ちょっとそれは…」
芝を踏む音がして顔を向けると、アマンド様がこちらに向かって来るところだった。
「ああ、ガーナー伯爵令息か」
アマンド様が私の前に立ちはだかる。
「・・・どなた様ですか」
「初めまして、ルチアだ」
堂々と嘘をつくルチア(仮)を無視して、アマンド様はチラリと私をみた。
「知り合いか?」
「いえ。」
アマンド様が警戒している。
「アマンド様、やはりこの人、不審者ですか?」
ヒソヒソと話したのに、ルチア(仮)には聞こえたようだ。
「ひどいなぁ。父上が聞いたら嘆き悲しむよ」
「レイリアに何か御用ですか」
「おしゃべりしていたんだ。ね?」
そう言って、凪いだ瞳を私に向ける。
「2人とも、私の友達になってくれたら嬉しいんだけどね。」
「身元の不確かな人はちょっと…」
「まあ、そうなるか。じゃあ…私がちゃんと名乗ったら、その時は友達になっておくれね。約束だよ」
「そろそろお時間です。」
彫像の影から、ふいに男の声がかかる。
もう1人居たのか…
「それじゃ、私はもう行くよ。話せて楽しかった。きっとまた会うだろうから、よろしくね、2人とも」
そう言って、ルチア(仮)は私たちと反対方向に歩いて行った。
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