大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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巻き込まれました

さっきまで閑散としていたはずの、この飲食のために設けられたテーブルコーナーは、今やピリピリとした雰囲気で張り詰めている。
 
「知人と積もる話があるからご遠慮ください」

そう言って、同席したがる令嬢達を断り、ディフィート様が私の真向かいの席に腰を下ろしたのがつい先ほど。

包囲網は崩れず、付近の卓に令嬢達が着席して、一気に密集率が上がる。

私は令嬢達から冷ややかな視線を浴びて居心地の悪い思いをしていた。

「ジュディの茶席も見に行くように言われていたのに、結局行けなくて…ジュディの様子はどうでしたか?」

「ご安心くださいませ、とても慕われていましたわ」

「本当に?驚きだな…」

そんな話をしていたら、両手に皿を持ったアマンド様が戻ってきた。

「ああ、アマンド君。お邪魔してるよ。ディフィート マルグリットだ。」

「なんで…」

アマンド様は一瞬眉間に皺を寄せたが、皿をテーブルに下ろし、私に椅子を近づけて腰を下ろした。

周囲の令嬢達の視線が一層冷気を帯びる。

衆人環視の中、王宮騎士団と王国騎士団のそれぞれ人気No.1と一緒のテーブルに座るなんて、罰ゲーム以外の何者でもない。

これは、対応を誤るとえらい事になる。

内心冷や汗をかく私をよそに、ディフィート様は興味深そうにお皿に乗った料理を眺める。

アマンド様の持ってきた大皿には、ローストビーフのサンドイッチと、一口大のキッシュ、何かの肉の串焼きなどが山盛り載っている。

「レイリアの分もあるんだ。これ、このナッツのキャラメルコーティングしたやつとか、好きだろう?」

「美味しそうですけど、今日はもう結構ですわ」

コルセットも締めているし、今日食べ過ぎるのは得策ではない。

「アマンド君、それなら私がもらっても良いかな?今日は食べるタイミングを逸してしまってね。失礼」

ディフィート様が手を伸ばしパクパクと食べ出した。

ちゃっかりサンドイッチにも手を出している。

これは本気食べの様相だ。

「ちょっと…他のも食べてるじゃ無いですか…」

アマンド様の抗議もどこ吹く風で、ディフィート様が串焼きに手を伸ばす。

「味の確認だよ。私のことは気にせず食べてくれ。ああ、レイリア嬢、こないだ君が気に入っていたババロアのゼリー寄せも、今日出すように言っておいたんですが食べました?」

「ありがとうございます。先ほどいただきましたわ。」

「そうですか、それなら・・・」

ディフィート様が侍従を呼び寄せ何か指示をだしている。

「あの、お気遣いなく。私達は間も無く失礼しますので…」

横からひしひしとアマンド様の責めるような視線を感じる。

この視線の意味はおそらく「ディフィート卿と知り合い・・?俺は聞いてない」だ。

いや、違うんですよ。

こないだのジュディ様との茶席にディフィート様が現れたから知り合っただけで、別にディフィート様と知り合いと呼べるほどの関係でもなかっただけで隠していたわけでは…

心の中で言い訳する。

いつもなら、婚約者としてのマナー違反として責められているんだろう、位にしか思わない。

今朝のことがあったせいで、これ、もしかして…し、嫉妬してる?とか…考えてしまって心が忙しない。自惚れかもしれないけれど。

侍従が恭しく私の前にガラス皿を置く。

「ほら、これ、召し上がりませんか?氷を削って、上からイチゴのコンフィチュールをかけたものです。」

「・・いただきます」

かかっている赤いコンフィチュールがキラキラと輝いて見える。

氷を食べるなんて、何て贅沢なんだろう。

ひと口すくって口に運ぶと、甘酸っぱいイチゴソースがフワフワの氷とともに溶けていく。

「おいしい・・!」

思わず呟いてしまう。

「やっぱり。レイリア嬢が好きそうだと思ったんです」

そう言ってディフィート様が、ふふ、と麗しい顔を嬉しそうに綻ばせる。

これは現実なのだろうか?

宗教画と見紛うほどの美しさだ。

あ、直視してしまった取り巻き令嬢AとBの気が遠くなっている。

「レイリア、俺にも」

「あ、はい」

不意に言われて、不機嫌そうに口を開けて待つアマンド様に、ひとさじ掬いさしだした。

「アマンド君、食べたいなら新しいのを持って来させるよ?」

「レイリアにもらうので結構です」

はあ、フワフワで冷たくて、夢のような食べ物。

すっかり虜になった私は、周囲の嫉妬渦巻く視線に気づくことなく、夢中で次を掬うのだった。



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