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それぞれの夏
席のチョイスを間違えた。
夏編の『海沿いのレストラン』『先攻に失敗し、後攻は婚約者のようです。』のアマンドサイドです。
******************************
予約したレストランに到着し、レイリアをエスコートしながら中に入る。
実はこの店を予約したのは俺ではない。
先日の大量盛りのランチでの失敗を踏まえて、どこがいいかリサーチしていると、騎士仲間のフェリスが声をかけてきたのだ。
「アマンド、今度の日曜だろ?もし決まってないんだったら、プラージュってレストランに行ってみないか?」
「プラージュ?あそこは2、3か月先まで予約が埋まっている人気店だろう?」
プラージュは景色も雰囲気もいい、カップル御用達の超人気店だ。
リサーチする中で幾度となく名前が出てきたが、予約が取れないだろうから除外していた。
「ちょうど今度の日曜に2名で予約してたんだよ。だからお前に譲る」
「え・・いいのか?」
「結婚記念日で予約してたんだけど、実は俺の奥さん、おめでたでさ。ちょうど今つわりの時期で、ちょっと無理そうなんだ。」
「そうなのか・・!フェリス、おめでとう」
「まだ他の団員には言ってないから内緒な」と言いながら、フェリスは嬉しそうに笑う。
「でも本当にいいのか?折角の人気店なのに・・」
「まだしばらくつわりだろうから、俺の方は気にしないでくれよ。それに、お前の婚約者が騎士団に来た時に、俺が門番で最初に対応したからさ。お前の婚約者に怖い思いさせちゃったから、お詫びも兼ねてな」
そんなやり取りがあり、奇跡的に俺はこの超人気店の予約をゲットした。
一番人気の窓際の席に案内される。
ああ、いいな。
窓一面の青と、茜色の髪。
クスクス笑う彼女は、本当に、太陽のようだ。
見惚れながらレイリアと話していると、店内が騒めいているのが気になった。
いつの間にか、俺たちは店内の客に注目されていたらしい。
せっかくレイリアとの2人きりの時間なのに煩わしい。
レイリアも気になるようでチラチラと周囲をうかがっている。
それだけならまだしも、男性客もウェイターも、レイリアを見すぎじゃないか?
はっきり言って、今日のレイリアはこの店の誰よりも輝いている。
これは婚約者の欲目ではなく、客観的に見てもそうだ。
俺とのデートのために着飾ってきてくれたレイリアを、見せびらかす趣味はない。
俺の独占欲が首をもたげる。
レイリアの後方にある窓から、テラス席が見えた。
テラス席には誰も客がいない。
この陽気だし、テラス席で食べるのも悪くない。
席を譲ってくれたフェリスには悪いが、俺はレイリアと2人の時間を大切にしたいんだ。
「レイリア」
「あ、はい?」
「テラス席ががら空きだ。レイリアさえ良ければ、あっちに移動しないか?」
ウェイターを呼びつけ、テラス席への変更を告げる。
「テラス席へ?宜しいのですか?」
「可能なら頼む。」
「本当に、よろしいのですね?」
度重なる確認。
そして、何かを窺うウェイター。
折角予約の取れた窓際の席を、本当にテラス席に替えていいのか、念入りに確認しているのだろう。
俺は呑気にそう考えていた。
テラス席へ移動し、少しして料理が運ばれてくる。
新鮮なシーフードをレイリアも気に入ってくれたようだ。
レイリアは最初、俺と一緒のメニューがいいと言っていた。
初めての店だったから、どの料理にしたらいいのか不安があったのかもしれない。
次々と運ばれる料理を眺めていて閃いた。
これは・・レイリアとの距離を縮めるチャンスなのでは?
この店は前回と違って、シェアするスタイルではないが、結婚を約束している仲だし、少しくらいいいだろう。
一面の海に、心地よい潮風。
まるで、リゾートに来たかのような開放感が、俺を大胆にさせる。
恥ずかしがるレイリアを説き伏せながら、食べさせ合いを実現させ、ようやく口を開けて、俺のフォークから食べるレイリア。
嬉々として続けようとした時、邪魔が入った。
「あれは・・・カモメか!」
カモメに料理を狙われ、ウェイターに店内の席に戻りたいと告げるが…
「申し訳ありません!カモメの鳥害でテラスを閉鎖したのが3年前。カモメもそろそろ代替わりしてテラスを狙うこともなくなるのではと思ったのですが・・・奴らを買い被っておりました!」
ウェイターの説明くさい告白に思わず舌打ちしそうになる。
さっき妙に歯切れが悪かったのはそのせいか。
席を変えてしまった俺のミスだ。
「恐れながら、まだカモメは10羽おりません。席が空くまで待つよりも、20羽、30羽集まってくる前に、ここで食事を済ませてしまう方が早いかと。微力ながら、私も誠心誠意、カモメからお二人と料理を守れるように防御に徹しますので」
確かに…次の店の予約時間に間に合うように食べ終えねばならない。
レイリアには悪いが、先を急ぎたい俺はウェイターの提案を受け入れた。
時間と共に集まるカモメ達。
今や、躊躇なく食べさせあいに応じるようになったレイリア。
席のチョイスは間違えたが、カモメのおかげでレイリアとの距離はさらに縮まったので、これはこれでアリだったのかもしれない。
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予約したレストランに到着し、レイリアをエスコートしながら中に入る。
実はこの店を予約したのは俺ではない。
先日の大量盛りのランチでの失敗を踏まえて、どこがいいかリサーチしていると、騎士仲間のフェリスが声をかけてきたのだ。
「アマンド、今度の日曜だろ?もし決まってないんだったら、プラージュってレストランに行ってみないか?」
「プラージュ?あそこは2、3か月先まで予約が埋まっている人気店だろう?」
プラージュは景色も雰囲気もいい、カップル御用達の超人気店だ。
リサーチする中で幾度となく名前が出てきたが、予約が取れないだろうから除外していた。
「ちょうど今度の日曜に2名で予約してたんだよ。だからお前に譲る」
「え・・いいのか?」
「結婚記念日で予約してたんだけど、実は俺の奥さん、おめでたでさ。ちょうど今つわりの時期で、ちょっと無理そうなんだ。」
「そうなのか・・!フェリス、おめでとう」
「まだ他の団員には言ってないから内緒な」と言いながら、フェリスは嬉しそうに笑う。
「でも本当にいいのか?折角の人気店なのに・・」
「まだしばらくつわりだろうから、俺の方は気にしないでくれよ。それに、お前の婚約者が騎士団に来た時に、俺が門番で最初に対応したからさ。お前の婚約者に怖い思いさせちゃったから、お詫びも兼ねてな」
そんなやり取りがあり、奇跡的に俺はこの超人気店の予約をゲットした。
一番人気の窓際の席に案内される。
ああ、いいな。
窓一面の青と、茜色の髪。
クスクス笑う彼女は、本当に、太陽のようだ。
見惚れながらレイリアと話していると、店内が騒めいているのが気になった。
いつの間にか、俺たちは店内の客に注目されていたらしい。
せっかくレイリアとの2人きりの時間なのに煩わしい。
レイリアも気になるようでチラチラと周囲をうかがっている。
それだけならまだしも、男性客もウェイターも、レイリアを見すぎじゃないか?
はっきり言って、今日のレイリアはこの店の誰よりも輝いている。
これは婚約者の欲目ではなく、客観的に見てもそうだ。
俺とのデートのために着飾ってきてくれたレイリアを、見せびらかす趣味はない。
俺の独占欲が首をもたげる。
レイリアの後方にある窓から、テラス席が見えた。
テラス席には誰も客がいない。
この陽気だし、テラス席で食べるのも悪くない。
席を譲ってくれたフェリスには悪いが、俺はレイリアと2人の時間を大切にしたいんだ。
「レイリア」
「あ、はい?」
「テラス席ががら空きだ。レイリアさえ良ければ、あっちに移動しないか?」
ウェイターを呼びつけ、テラス席への変更を告げる。
「テラス席へ?宜しいのですか?」
「可能なら頼む。」
「本当に、よろしいのですね?」
度重なる確認。
そして、何かを窺うウェイター。
折角予約の取れた窓際の席を、本当にテラス席に替えていいのか、念入りに確認しているのだろう。
俺は呑気にそう考えていた。
テラス席へ移動し、少しして料理が運ばれてくる。
新鮮なシーフードをレイリアも気に入ってくれたようだ。
レイリアは最初、俺と一緒のメニューがいいと言っていた。
初めての店だったから、どの料理にしたらいいのか不安があったのかもしれない。
次々と運ばれる料理を眺めていて閃いた。
これは・・レイリアとの距離を縮めるチャンスなのでは?
この店は前回と違って、シェアするスタイルではないが、結婚を約束している仲だし、少しくらいいいだろう。
一面の海に、心地よい潮風。
まるで、リゾートに来たかのような開放感が、俺を大胆にさせる。
恥ずかしがるレイリアを説き伏せながら、食べさせ合いを実現させ、ようやく口を開けて、俺のフォークから食べるレイリア。
嬉々として続けようとした時、邪魔が入った。
「あれは・・・カモメか!」
カモメに料理を狙われ、ウェイターに店内の席に戻りたいと告げるが…
「申し訳ありません!カモメの鳥害でテラスを閉鎖したのが3年前。カモメもそろそろ代替わりしてテラスを狙うこともなくなるのではと思ったのですが・・・奴らを買い被っておりました!」
ウェイターの説明くさい告白に思わず舌打ちしそうになる。
さっき妙に歯切れが悪かったのはそのせいか。
席を変えてしまった俺のミスだ。
「恐れながら、まだカモメは10羽おりません。席が空くまで待つよりも、20羽、30羽集まってくる前に、ここで食事を済ませてしまう方が早いかと。微力ながら、私も誠心誠意、カモメからお二人と料理を守れるように防御に徹しますので」
確かに…次の店の予約時間に間に合うように食べ終えねばならない。
レイリアには悪いが、先を急ぎたい俺はウェイターの提案を受け入れた。
時間と共に集まるカモメ達。
今や、躊躇なく食べさせあいに応じるようになったレイリア。
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