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それぞれの夏
グルトの予感
調査を初めて5日目の早朝。
まだ朝を自覚していない町の通りを軽快に
ジョギングをしながら、グルトは考えていた。
ピート男爵家は、代々領地の紡績業で成功を収め、今に至る。
近年はテートから安価な綿糸が輸入されるようになり、国内の紡績業はかなりの打撃を受けている。
それなのに、ピート男爵家に至っては、売り上げは好調のままのようなのだ。
(宝石を買い漁るほど儲けられるって、相当だよな・・)
欲しかったロイリスの情報は、粗方集まったが、変装して港に荷物を受け取りに行ったと言う話も気にかかり、グルトは何となく、そのまま調査を続けていた。
ロイリスの恋人達は、ほぼ皆平民の女の子だった。
彼女達のことを思うと、悲しい気持ちになる。
(きっと貴族への憧れもあるんだろうけれど、自分以外にもたくさんの恋人がいることを、皆知らないんだろうな…。)
ロイリス唯一の人妻の恋人については、昨夜ようやく飲み屋で詳しい話を聴けたのだ。
飲み屋でその話をしてくれた男は、逢瀬に使っているらしいホテルの従業員だった。
情報料として駄賃を渡すと、男は意気揚々と喋り出した。
「毎週金曜の夜に会ってるよ。宿泊はしないね。女の方が部屋に先に入って、後から手土産を持って男が来て、1、2時間くらいして別々に出てくかな。」
その人妻は、ロイリスの付き合っている女性の中で唯一の貴族だった。
男爵夫人だと言うその女性は20代後半で、話に聞くところ、キツめの顔立ちで可愛いとは言い難いらしい。
それ以外の恋人達は10代後半でパッチリした目のカワイイタイプだったので、何となく違和感を感じる。
「なんか、ヤな感じだな」
グルトの勘の良さはその日の午後に証明された。
門番の詰所で油を売っていると、俄かに入り口が騒がしくなって、バンっとドアが開いたかと思うと、グルト直属の小隊長が駆け込んできた。
詰所のグルトを見つけて、途端に駆け寄る。
その目は血走っている。
「グルト・・グルト!お前・・来いっ!」
首根っこを掴まれる勢いで小隊長の部屋まで連行される。
「お前、何やらかしたんだ!」
「何って…」
「保安局のエースが来てるんだよ!お前を呼べって!」
「保安局?え?何で俺?」
保安局は公的機関や貴族などの捜査を主に担当する組織である。
知能犯罪などを暴くため、綿密な裏付けを必要とする捜査が多い。
担当する畑が違うため、騎士団に来ることなど滅多に無いはずだ。
「失礼します、お待たせしましたっ!グルト オルドリッジをお連れしました!」
自分の部屋に入るのにノックをした小隊長は、畏まってそう言った後、グルトを前に突き出した。
保安局は王立騎士団とは全く別の機関なので、厳密には下手に出る必要はないのだが、保安局は王直属の機関なので近衛隊と同列に扱っておいて間違いはない。
小隊長室の窓辺から、演習場を見ていた男が振り返る。
藍に近い髪をオールバックにした、細面の男がこちらをジッと見つめてきた。
理知的な雰囲気は、眼鏡をかけているからかもしれないし、何もかも見通すような隙のない様からかもしれない。
「グルト オルドリッジ。オルドリッジ伯爵家の長男か・・そこに座れ。悪いが君は退出を。」
小隊長にそう言うと、保安局の男は何の躊躇もなく小隊長の椅子に腰掛けて、手を組んでグルトを注視した。
まだ朝を自覚していない町の通りを軽快に
ジョギングをしながら、グルトは考えていた。
ピート男爵家は、代々領地の紡績業で成功を収め、今に至る。
近年はテートから安価な綿糸が輸入されるようになり、国内の紡績業はかなりの打撃を受けている。
それなのに、ピート男爵家に至っては、売り上げは好調のままのようなのだ。
(宝石を買い漁るほど儲けられるって、相当だよな・・)
欲しかったロイリスの情報は、粗方集まったが、変装して港に荷物を受け取りに行ったと言う話も気にかかり、グルトは何となく、そのまま調査を続けていた。
ロイリスの恋人達は、ほぼ皆平民の女の子だった。
彼女達のことを思うと、悲しい気持ちになる。
(きっと貴族への憧れもあるんだろうけれど、自分以外にもたくさんの恋人がいることを、皆知らないんだろうな…。)
ロイリス唯一の人妻の恋人については、昨夜ようやく飲み屋で詳しい話を聴けたのだ。
飲み屋でその話をしてくれた男は、逢瀬に使っているらしいホテルの従業員だった。
情報料として駄賃を渡すと、男は意気揚々と喋り出した。
「毎週金曜の夜に会ってるよ。宿泊はしないね。女の方が部屋に先に入って、後から手土産を持って男が来て、1、2時間くらいして別々に出てくかな。」
その人妻は、ロイリスの付き合っている女性の中で唯一の貴族だった。
男爵夫人だと言うその女性は20代後半で、話に聞くところ、キツめの顔立ちで可愛いとは言い難いらしい。
それ以外の恋人達は10代後半でパッチリした目のカワイイタイプだったので、何となく違和感を感じる。
「なんか、ヤな感じだな」
グルトの勘の良さはその日の午後に証明された。
門番の詰所で油を売っていると、俄かに入り口が騒がしくなって、バンっとドアが開いたかと思うと、グルト直属の小隊長が駆け込んできた。
詰所のグルトを見つけて、途端に駆け寄る。
その目は血走っている。
「グルト・・グルト!お前・・来いっ!」
首根っこを掴まれる勢いで小隊長の部屋まで連行される。
「お前、何やらかしたんだ!」
「何って…」
「保安局のエースが来てるんだよ!お前を呼べって!」
「保安局?え?何で俺?」
保安局は公的機関や貴族などの捜査を主に担当する組織である。
知能犯罪などを暴くため、綿密な裏付けを必要とする捜査が多い。
担当する畑が違うため、騎士団に来ることなど滅多に無いはずだ。
「失礼します、お待たせしましたっ!グルト オルドリッジをお連れしました!」
自分の部屋に入るのにノックをした小隊長は、畏まってそう言った後、グルトを前に突き出した。
保安局は王立騎士団とは全く別の機関なので、厳密には下手に出る必要はないのだが、保安局は王直属の機関なので近衛隊と同列に扱っておいて間違いはない。
小隊長室の窓辺から、演習場を見ていた男が振り返る。
藍に近い髪をオールバックにした、細面の男がこちらをジッと見つめてきた。
理知的な雰囲気は、眼鏡をかけているからかもしれないし、何もかも見通すような隙のない様からかもしれない。
「グルト オルドリッジ。オルドリッジ伯爵家の長男か・・そこに座れ。悪いが君は退出を。」
小隊長にそう言うと、保安局の男は何の躊躇もなく小隊長の椅子に腰掛けて、手を組んでグルトを注視した。
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