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御前試合
断っておこうと思います。
「それじゃあ行ってくるよ。セバスチャン、頼んだぞ」
「行ってらっしゃいませ、旦那様、奥様。」
「2人とも、しっかりね!」
意気揚々と馬車に乗り込む両親を見送ると、私とカインは顔を見合わせて笑い合った。
「よし!これで1週間、自由だー!」
両手を広げて伸びをしながら、カインが明るく笑う。
「あまり羽目を外しちゃだめよ、カイン」
「わかってるって。俺、早速これからロイと出かけてくる!今日、ザルツ国境騎士団の到着日なんだ!」
3日後に迫った御前試合に向けて、各地から王国騎士団、国境騎士団が続々と王都入りしている。
彼らは地区ごとですでに一次予選を終えており、王都に集まっているのは勝ち上がった精鋭達だ。
王都を守る王国騎士団と王宮騎士団、そして各地からの精鋭達で繰り広げられる試合を見るために、王都には大勢の見物客も押し寄せる。
この時期は試合見物のために停泊する客船も多いのだ。
ザルツ国境騎士団にもお目当ての騎士が居るらしく、カインは朝からソワソワしていた。
「ザルツのダント アンプって、国境騎士団最強なんだ!熊みたいな大男なんだって!会えるかなぁ!」
頬を紅潮させながら支度するカインを見ていると、それだけで王都に残って良かったと、そう思う。
試合を観に行くことに決まってからも、どちらかと言うと、嬉しさよりも引け目を感じていた私がいたが、徐々に試合に向けて活気づく街を見ていたら、最近では試合を楽しみに思う気持ちの方が勝ってきた。
(それに、気付かれないようにすれば、きっと大丈夫・・)
アマンド様に気づかれないように、その日は変装・・とまではいかないが、極力目立たないようにするつもりだ。
「あ、そうだ!姉さんの作ってる国境騎士団のバッジ、2つもらってってもいい?目立つところに付けて行きたい!」
「いいわ。私が買ったことにする」
「ありがと!」
バッジを受け取ると、カインは待ちきれない様子で走り去っていった。
「私も出かけないと」
今日は、クラブ活動の日なのだ。
持ち寄ったバッジはかなりの数だった。
御前試合は1日目が予選トーナメント、2日目が決勝トーナメントとなる。
参加人数の多さから、予選トーナメント会場は4つに分かれていて、その4つの会場すべてにバッジの売り場を置いてもらえることになっていた。
納品に向けて、皆でバッジの検品と仕分けをする。
「このバッジが貴族の間でかなり話題になって、予約販売は予定よりも早くに締め切ったのですって」
「私、この間、街でこの王宮騎士団のバッジをつけている子どもを見ましたわ!」
「私なんて、3つとも付けているご婦人を見ましたわ!」
「まあ、なんて節操のない!」
すでに予約分だけでもかなりの収益が出ているらしい。
来年度からは全国的なチャリティーに展開しようという話も出ているらしく、ビシュヌ様は喜びで目を潤ませながら皆に報告していた。
休憩時間になり、私はメイベルに声をかけ、人気の少ないところへ連れ出した。
それとなく、メイベルに伝えておきたかったのだ。
アマンド様には余計なお世話かもしれないけれど。
「レイリア、話って何かしら?」
「メイベルに、ひと言断っておこうと思って。」
私は、今年もアマンド様に呼ばれなかったことを伝えた。
「まあ、そうなの?レイリア、教えてくれて、ありがとう!」
喜色を隠せないメイベルに、続ける。
「メイベル、その・・今年は私も付き合いで、御前試合を観に行くことになったんだけれど、その・・アマンド様には気付かれないようにするつもりだから。メイベルも、私のことは気にしないでね?」
2人のおじゃま虫になりたくないし、アマンド様には絶対に気付かれたくない。
「付き合いって、どういうこと?誰と行くの?」
「いえ・・その、ジュ・・マルグリット侯爵家のジュディ様からご招待を受けて、それで」
「マルグリット・・」
呟くと、メイベルが瞳を輝かせた。
「すごいわ!レイリア、そんなの今までひと言も言ってくれなかったじゃない!ってことは、シーリーウッド闘技場の観覧席で見るのね!?私も仲良くなりたいわ!ね、私のことも紹介して?」
「え・・・」
この間のお茶会で、ジュディ様が自分から積極的に社交するタイプでないことがよくわかった。
誰かを紹介されることに、なんのメリットも感じないだろう。
メイベルの頼みでも、ジュディ様が求めていないのならそこは遠慮したい。
「それは・・難しいと思うわ」
「難しいって?最近とってもお優しくなったんでしょう?お友達から聞いたもの。ね?お願い!」
「ジュディ様は実は社交が嫌いだから紹介できない」と言えたら楽だけれど、社交が嫌い、なんて知られるのも嫌だろう。
私が明かしていい話ではない。
「・・ごめんなさい、メイベル」
その後も納得させられるだけの理由が思いつかず、なかなか諦めてくれないメイベル。
最終的には、もし会場でバッタリ会うようなことがあったらその時は紹介するから、と約束して、どうにか納得してもらったのだった。
「行ってらっしゃいませ、旦那様、奥様。」
「2人とも、しっかりね!」
意気揚々と馬車に乗り込む両親を見送ると、私とカインは顔を見合わせて笑い合った。
「よし!これで1週間、自由だー!」
両手を広げて伸びをしながら、カインが明るく笑う。
「あまり羽目を外しちゃだめよ、カイン」
「わかってるって。俺、早速これからロイと出かけてくる!今日、ザルツ国境騎士団の到着日なんだ!」
3日後に迫った御前試合に向けて、各地から王国騎士団、国境騎士団が続々と王都入りしている。
彼らは地区ごとですでに一次予選を終えており、王都に集まっているのは勝ち上がった精鋭達だ。
王都を守る王国騎士団と王宮騎士団、そして各地からの精鋭達で繰り広げられる試合を見るために、王都には大勢の見物客も押し寄せる。
この時期は試合見物のために停泊する客船も多いのだ。
ザルツ国境騎士団にもお目当ての騎士が居るらしく、カインは朝からソワソワしていた。
「ザルツのダント アンプって、国境騎士団最強なんだ!熊みたいな大男なんだって!会えるかなぁ!」
頬を紅潮させながら支度するカインを見ていると、それだけで王都に残って良かったと、そう思う。
試合を観に行くことに決まってからも、どちらかと言うと、嬉しさよりも引け目を感じていた私がいたが、徐々に試合に向けて活気づく街を見ていたら、最近では試合を楽しみに思う気持ちの方が勝ってきた。
(それに、気付かれないようにすれば、きっと大丈夫・・)
アマンド様に気づかれないように、その日は変装・・とまではいかないが、極力目立たないようにするつもりだ。
「あ、そうだ!姉さんの作ってる国境騎士団のバッジ、2つもらってってもいい?目立つところに付けて行きたい!」
「いいわ。私が買ったことにする」
「ありがと!」
バッジを受け取ると、カインは待ちきれない様子で走り去っていった。
「私も出かけないと」
今日は、クラブ活動の日なのだ。
持ち寄ったバッジはかなりの数だった。
御前試合は1日目が予選トーナメント、2日目が決勝トーナメントとなる。
参加人数の多さから、予選トーナメント会場は4つに分かれていて、その4つの会場すべてにバッジの売り場を置いてもらえることになっていた。
納品に向けて、皆でバッジの検品と仕分けをする。
「このバッジが貴族の間でかなり話題になって、予約販売は予定よりも早くに締め切ったのですって」
「私、この間、街でこの王宮騎士団のバッジをつけている子どもを見ましたわ!」
「私なんて、3つとも付けているご婦人を見ましたわ!」
「まあ、なんて節操のない!」
すでに予約分だけでもかなりの収益が出ているらしい。
来年度からは全国的なチャリティーに展開しようという話も出ているらしく、ビシュヌ様は喜びで目を潤ませながら皆に報告していた。
休憩時間になり、私はメイベルに声をかけ、人気の少ないところへ連れ出した。
それとなく、メイベルに伝えておきたかったのだ。
アマンド様には余計なお世話かもしれないけれど。
「レイリア、話って何かしら?」
「メイベルに、ひと言断っておこうと思って。」
私は、今年もアマンド様に呼ばれなかったことを伝えた。
「まあ、そうなの?レイリア、教えてくれて、ありがとう!」
喜色を隠せないメイベルに、続ける。
「メイベル、その・・今年は私も付き合いで、御前試合を観に行くことになったんだけれど、その・・アマンド様には気付かれないようにするつもりだから。メイベルも、私のことは気にしないでね?」
2人のおじゃま虫になりたくないし、アマンド様には絶対に気付かれたくない。
「付き合いって、どういうこと?誰と行くの?」
「いえ・・その、ジュ・・マルグリット侯爵家のジュディ様からご招待を受けて、それで」
「マルグリット・・」
呟くと、メイベルが瞳を輝かせた。
「すごいわ!レイリア、そんなの今までひと言も言ってくれなかったじゃない!ってことは、シーリーウッド闘技場の観覧席で見るのね!?私も仲良くなりたいわ!ね、私のことも紹介して?」
「え・・・」
この間のお茶会で、ジュディ様が自分から積極的に社交するタイプでないことがよくわかった。
誰かを紹介されることに、なんのメリットも感じないだろう。
メイベルの頼みでも、ジュディ様が求めていないのならそこは遠慮したい。
「それは・・難しいと思うわ」
「難しいって?最近とってもお優しくなったんでしょう?お友達から聞いたもの。ね?お願い!」
「ジュディ様は実は社交が嫌いだから紹介できない」と言えたら楽だけれど、社交が嫌い、なんて知られるのも嫌だろう。
私が明かしていい話ではない。
「・・ごめんなさい、メイベル」
その後も納得させられるだけの理由が思いつかず、なかなか諦めてくれないメイベル。
最終的には、もし会場でバッタリ会うようなことがあったらその時は紹介するから、と約束して、どうにか納得してもらったのだった。
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