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御前試合
私の帽子がっ!
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帽子・・私の帽子がっ!
帽子を外され、スースーする頭を両手で抱えて私は狼狽えていた。
「ほらレイリア。ふざけてないでちゃんと立ったらどう?不敬で捕まりたいのかしら?」
うぐ・・
観念して、手を下ろし起立する。
「クフッフフ」
目の前の、ジュディ様の肩が揺れている。
帽子をそのままかぶっている私に、珍しく何も言わないな、とは思っていた。
さてはこうなることを見越して・・!
「面白がらないでください。」
「帽子を外された時のレイリアのお間抜けな顔、最高だったわ。」
「そんな意地悪を言うなら、こちらにも考えがあります」
「フフン、レイリアの考えることなんて、たかが知れてるわよ」
そう言って、余裕そうに笑うジュディ様。
言いましたね?
ファンファーレが鳴って、カーテンシーを決める。
国王陛下の登場に、場内は大歓声だ。
・・大丈夫。アマンド様がいるのは列の前の方。振り返りでもしない限り、私に気づくことはない・・多分。
「もう、楽にしていいわよ。」
侯爵夫人に言われて顔を上げ、素早く会場を見回すと、さっきまで会場に整列していた騎士達が、ゲートに向かってゾロゾロと歩き出したところだった。
その中に、背を向けているアマンド様の姿を見とめてホッとする。
チッと隣から舌打ちが聞こえた気がするが気にしない。
よし、帽子を・・と振り返ると、侯爵夫人がしげしげと私のカンカン帽を手にして眺めていた。
「この形は、やっぱり若い娘向けよねぇ。ほら、ジュディ、一回かぶらせてもらいなさい。あなたがかぶった姿を一度見てみたいわ。」
「嫌よ。そんな変な帽子。ほら、レイリア。受け取って。」
ジュディ様から帽子を手渡され、早速頭にかぶってようやく人心地ついた。
アマンド様も退場したことだし、ここからは心ゆくまで試合を観覧するのみ!
隣では相変わらず侯爵夫人とジュディ様の不毛なやり取りが続いている。
「そんなこと言わずに、あなたも今時の流行に少し乗ってみたらいいのよ。ファッションにまで頑固なんだから・・」
「余計なお世話よ。そんな気になるなら、お母様が自分でかぶればいいじゃない。私は絶対に・・あ」
あ?
「気が変わったわ。レイリア、借りるわね」
かぶったばかりの帽子が、また私の頭から離れていく。
「まあ!やっぱり似合う!今日のドレスには抜群に似合わないのが残念だけど!」
興奮気味の侯爵夫人。
ジュディ様は褒められてニコニコと嬉しそうだ。
「今度外商に頼んでおくわね。リボンの色はラベンダーがいいかしら」
「そうね。こんな愉快な気持ちになれるなら、あってもいいかもしれないわ。どう?レイリア」
帽子に手を添えて、笑顔で小首を傾げポーズをとるジュディ様に嘆息する。
「私よりもお似合いですよ」
小顔で羨ましい限りだ。
「フフ、嬉しいわ。それじゃ、褒めてくれたお礼に教えてあげるけど」
「なんですか?」
「あなたの婚約者、会場に戻ってきてるわよ」
え?
ブワッと全身の毛が逆立つ感覚。
ギュンッと会場に顔を向けると、ゲートの入り口、退場する騎士達の中、こちらを見上げるアマンド様の姿ーー
ピシリと固まる私に、ジュディ様が帽子を差し出す。
「用が済んだからもう返すわ。最も、あなたももう、これに用はなさそうだけど。」
帽子を外され、スースーする頭を両手で抱えて私は狼狽えていた。
「ほらレイリア。ふざけてないでちゃんと立ったらどう?不敬で捕まりたいのかしら?」
うぐ・・
観念して、手を下ろし起立する。
「クフッフフ」
目の前の、ジュディ様の肩が揺れている。
帽子をそのままかぶっている私に、珍しく何も言わないな、とは思っていた。
さてはこうなることを見越して・・!
「面白がらないでください。」
「帽子を外された時のレイリアのお間抜けな顔、最高だったわ。」
「そんな意地悪を言うなら、こちらにも考えがあります」
「フフン、レイリアの考えることなんて、たかが知れてるわよ」
そう言って、余裕そうに笑うジュディ様。
言いましたね?
ファンファーレが鳴って、カーテンシーを決める。
国王陛下の登場に、場内は大歓声だ。
・・大丈夫。アマンド様がいるのは列の前の方。振り返りでもしない限り、私に気づくことはない・・多分。
「もう、楽にしていいわよ。」
侯爵夫人に言われて顔を上げ、素早く会場を見回すと、さっきまで会場に整列していた騎士達が、ゲートに向かってゾロゾロと歩き出したところだった。
その中に、背を向けているアマンド様の姿を見とめてホッとする。
チッと隣から舌打ちが聞こえた気がするが気にしない。
よし、帽子を・・と振り返ると、侯爵夫人がしげしげと私のカンカン帽を手にして眺めていた。
「この形は、やっぱり若い娘向けよねぇ。ほら、ジュディ、一回かぶらせてもらいなさい。あなたがかぶった姿を一度見てみたいわ。」
「嫌よ。そんな変な帽子。ほら、レイリア。受け取って。」
ジュディ様から帽子を手渡され、早速頭にかぶってようやく人心地ついた。
アマンド様も退場したことだし、ここからは心ゆくまで試合を観覧するのみ!
隣では相変わらず侯爵夫人とジュディ様の不毛なやり取りが続いている。
「そんなこと言わずに、あなたも今時の流行に少し乗ってみたらいいのよ。ファッションにまで頑固なんだから・・」
「余計なお世話よ。そんな気になるなら、お母様が自分でかぶればいいじゃない。私は絶対に・・あ」
あ?
「気が変わったわ。レイリア、借りるわね」
かぶったばかりの帽子が、また私の頭から離れていく。
「まあ!やっぱり似合う!今日のドレスには抜群に似合わないのが残念だけど!」
興奮気味の侯爵夫人。
ジュディ様は褒められてニコニコと嬉しそうだ。
「今度外商に頼んでおくわね。リボンの色はラベンダーがいいかしら」
「そうね。こんな愉快な気持ちになれるなら、あってもいいかもしれないわ。どう?レイリア」
帽子に手を添えて、笑顔で小首を傾げポーズをとるジュディ様に嘆息する。
「私よりもお似合いですよ」
小顔で羨ましい限りだ。
「フフ、嬉しいわ。それじゃ、褒めてくれたお礼に教えてあげるけど」
「なんですか?」
「あなたの婚約者、会場に戻ってきてるわよ」
え?
ブワッと全身の毛が逆立つ感覚。
ギュンッと会場に顔を向けると、ゲートの入り口、退場する騎士達の中、こちらを見上げるアマンド様の姿ーー
ピシリと固まる私に、ジュディ様が帽子を差し出す。
「用が済んだからもう返すわ。最も、あなたももう、これに用はなさそうだけど。」
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