大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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御前試合

試合の行方

午後の初戦も、ディフィート様から始まった。

余興の後、慌ただしく部屋に戻ってきたジュディ様と侯爵夫人と共に、観覧席でディフィート様の勝利を見届ける。

余興の剣舞がお気に召したようで、ジュディ様は大層ご機嫌だ。

「剣舞にはあまり興味なかったけれど、私でも楽しめたわ。エルバート殿下に感謝しないとね。」

夫人がそう言うからには、余興としても大成功だったのだろう。

「で?アマンド ガーナーの用事は何だったわけ?」

「その・・ただ私に会いにきたみたいです」

思い出しただけで顔が熱くなり、ジュディ様の方を見れないが、何だかジュディ様からジトっとした視線を感じる。

「なに照れてるのよ。あー、つまんない。やっぱり剣舞を選んで正解だったわ」



その後の試合も、熱戦揃いで目を離せない。

アマンド様も3試合を順調に勝ち進んだ。試合の度に毎回ハラハラしてしまったけれど、いざ試合が始まれば、アマンド様は圧倒的な強さで対戦相手を捩じ伏せていく。

勝利すると毎回こちらを見上げるアマンド様。

場内のキャーという黄色い歓声と、ジュディ様のじっとりした視線の中、小さく手を振ると、微笑んで退場する。

そうこうしているうちに、準決勝進出者が出揃った。

危なげなく勝ち進んだアマンド様と、言わずもがなのディフィート様、同じく王宮騎士団のNo.2、長身のデライト様、国境騎士団最強のダント アンプという布陣だ。

準決勝が始まる。

2大人気のアマンド様とディフィート様の対戦とあって、場内のボルテージは最高潮だ。

「すごい盛り上がり・・」

「"剛と気の剣"ザガーベルケンと、"柔と知の剣"レークロイドの最強同士の対決だもの。実力から言えば、実質の決勝戦よ。レイリア、お兄様が勝つけれど、恨みっこなしよ。」

力で押すザガーベルケンと違い、レークロイドは速さと突き技に長けた剣だ。

ディフィート様の剣は特に速い。速すぎて、何が起こったのかわからないうちに対戦相手が倒れていることもあった。 

去年、唯一アマンド様が敗れた相手。

2人が木剣を構えて対峙すると、否応にも緊張が高まる。

「始めっ!」

開始の合図とともに一気に間合いを詰めて、ディフィート様が突きを繰り出す。

後退り躱したアマンド様に向けて更に踏み込み突きを入れるが、それを下から薙ぎ払ったアマンド様が、ディフィート様の胴を目掛けて剣を振るう。

低い姿勢で躱したディフィート様は再び突きを繰り出し、アマンド様が危うい所で剣で払った。そこからは近接して、お互い連打を打ち合う。

カカンカカッ カカカカンッ!

連打の切れ目にアマンド様が大きく剣を振るうと、ディフィート様が大きく飛び退って連打は一旦休止となった。

これまでにない好戦に、会場は大盛り上がりだ。

「ふん、去年よりはついて来れてるけど、今年も同じね。お兄様の早技で、剣に上手く力を乗せられないのよ。今年もお兄様が勝つんだから!」

(アマンド様、頑張って・・!)

再び連打が始まる。

一瞬でも気を抜けない。

勝負の行方が気になるけれども、見るのも怖い。

カカッカンカカッカッ!カカカッ!

再び小休止が訪れる。

2人とも息が上がっている。

訪れる静寂。多分、次で決まる。

観客が固唾を飲んで見守る中、それまで両手で剣を握っていたアマンド様が、剣を片手に持ち替え、その切先を地面に向けた。

ジリッと地面を踏み締め、ディフィート様が仕掛ける。頭、首、胴の三段突きだ。アマンド様は横に飛び退ってそれを避けながら、下からディフィート様の剣を掬い上げた。ディフィート様の手から、剣が離れる。

アマンド様はその返しで頭に向けて剣を下ろしーーしかしひと足早く姿勢を下げたディフィート様が、手放した剣を地面につく前にキャッチして、アマンド様の首に突きを繰り出した。

首に剣を突きつけられ、動きを止めるアマンド様。

シンとする場内。

ディフィート様の勝利を告げる声に、割れんばかりの拍手と惜しみない歓声が贈られる。

アマンド様が、負けてしまった。

ポロポロと涙をこぼしながら、私も夢中で拍手を贈る。

礼をして退場するアマンド様は、今度はこちらを見上げることはなかった。






















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