93 / 165
御前試合
対面
ドアを開いたアマンド様が、目の前の光景に固まっている。
「やあ、久しぶりだねアマンド」
殿下が声をかけると、すぐにアマンド様は胸に手を当て礼をとった。
「王子殿下に拝謁いたします。」
「堅苦しいのはいい。君と私は友人だろう?」
「・・畏れ多いことです。その節は、大変失礼しました」
「いつ気づいた?」
「あの日のうちに。遠方からお姿を拝見した事が何度かあったので、もしや、と。ディフィート卿の反応で確信しました」
「ふっ、レイリアさんに警戒されないように君の髪色で変装したんだが、効果なかったか。それはそうと、素晴らしい試合だった。陛下も感嘆しておられたよ。」
「身に余るお言葉です。」
「いつか手合わせを願いたいな。ああ、来週に宮で夜会があるんだ。参加するように。勿論、レイリアさんも一緒にね」
「・・承知いたしました」
王子殿下が振り返ってジュディ様に微笑む。
「さて、それでは・・ジュディ、待たせたね。行こうか」
「その前に、私、ガーナー伯爵令息と初めてお会いしますの」
アマンド様が再び礼をとる。
「アマンド ガーナーです。先ほど侯爵夫人にもご挨拶させていただきました。急な申し出にも関わらず、入室を許可してくださり、ありがとうございました」
「ジュディ マルグリットよ。色々とあなたには言いたいことがあるけど、今日は火急の用事があるからまた今度にするわ。殿下、場所はどこです?」
「ここの屋上だよ」
「殿下、お先に!それじゃレイリア、またね!」
待てないジュディ様が、あっという間にドアの向こうに消えていく。
「それじゃ私も失礼するよ。・・・ああ、アマンド、レイリアさん」
「はい?」
「今日は夜空が綺麗だろうから、暗くなるまで待っているといい」
そう言って、王子殿下もすぐに後を追う。
殿下とジュディ様が退室して、残された私たち2人はしばし呆然としてしまった。
あ、そうだ。お祝いの言葉を伝えないと!
「アマ」「レイリア、話は後だ!急ぐぞ!」
「はぇ?ちょっ!」
何を言う暇もなく、急いでいる風のアマンド様に手を引っ張られドアを抜けると、私は観覧席の回廊を必死で走らされていた。
今日の靴はそんなにヒールは高くないが、走ることは想定していない。
観覧席の専用入り口に到着する頃にはすっかり息が上がり、足が痛い。
慌てていたアマンド様も、そこまで来てようやく私の格好に思い至ったらしい。
「あ・・すまない!間に合うかギリギリで・・」
「ハァ、ハァ、アマンド様、一体何をそんなに」
振り返り、空を仰ぎ見たアマンド様が、まずい!と叫んだ。
「日が沈む!レイリア、話は後だ!おぶって行かせてくれ!」
おぶ!?
「さすがにそれは・・」
中腰になって背中を向けるアマンド様が焦れたように声を上げた。
「屋台!」
え?
「俺が毎年行ってた屋台が、今年も来てるんだ!珍しい異国のお菓子の・・今日を逃したら来年まで食べられない!」
「それって・・」
アマンド様の話にあった、あの?
いつか行ってみたいと子供の頃から夢だった、あの!?
「ほら、レイリア!おぶうのは少しの間だから!」
促され、意を決して彼の肩に手をかける。
アマンド様におぶってもらうのは、子供の頃以来だ。
「し、失礼します!」
私をおぶって立ち上がったアマンド様が、何やら動かない。
あれ?
「・・アマンド様?」
「レイリア、これから全力で走る。すごく揺れるし、振り落としてしまうかもしれないから、しっかり掴まってほしい」
そんなに急いでいたとは・・!!
その後具体的な指示があり、レクチャーされた通り、張り付くようにぴっとり身を寄せると、仄かにベルガモットの香りがした。
アマンド様が走り出す。
まさか、屋台に連れていってもらえるなんて。
『御前試合の2日間は、街がそれ一色になるんだ。見たこともないような異国の屋台もやってきて、その時だけ王都が違う国になったみたいで!とにかくほんっと凄いんだから!リアもいつか一緒に行こう。毎年絶対行く屋台があるんだ。そこの珍しいお菓子、リアにも食べさせてあげるからね。』
広く硬い背中に揺られながら、期待に胸を膨らませた。
「やあ、久しぶりだねアマンド」
殿下が声をかけると、すぐにアマンド様は胸に手を当て礼をとった。
「王子殿下に拝謁いたします。」
「堅苦しいのはいい。君と私は友人だろう?」
「・・畏れ多いことです。その節は、大変失礼しました」
「いつ気づいた?」
「あの日のうちに。遠方からお姿を拝見した事が何度かあったので、もしや、と。ディフィート卿の反応で確信しました」
「ふっ、レイリアさんに警戒されないように君の髪色で変装したんだが、効果なかったか。それはそうと、素晴らしい試合だった。陛下も感嘆しておられたよ。」
「身に余るお言葉です。」
「いつか手合わせを願いたいな。ああ、来週に宮で夜会があるんだ。参加するように。勿論、レイリアさんも一緒にね」
「・・承知いたしました」
王子殿下が振り返ってジュディ様に微笑む。
「さて、それでは・・ジュディ、待たせたね。行こうか」
「その前に、私、ガーナー伯爵令息と初めてお会いしますの」
アマンド様が再び礼をとる。
「アマンド ガーナーです。先ほど侯爵夫人にもご挨拶させていただきました。急な申し出にも関わらず、入室を許可してくださり、ありがとうございました」
「ジュディ マルグリットよ。色々とあなたには言いたいことがあるけど、今日は火急の用事があるからまた今度にするわ。殿下、場所はどこです?」
「ここの屋上だよ」
「殿下、お先に!それじゃレイリア、またね!」
待てないジュディ様が、あっという間にドアの向こうに消えていく。
「それじゃ私も失礼するよ。・・・ああ、アマンド、レイリアさん」
「はい?」
「今日は夜空が綺麗だろうから、暗くなるまで待っているといい」
そう言って、王子殿下もすぐに後を追う。
殿下とジュディ様が退室して、残された私たち2人はしばし呆然としてしまった。
あ、そうだ。お祝いの言葉を伝えないと!
「アマ」「レイリア、話は後だ!急ぐぞ!」
「はぇ?ちょっ!」
何を言う暇もなく、急いでいる風のアマンド様に手を引っ張られドアを抜けると、私は観覧席の回廊を必死で走らされていた。
今日の靴はそんなにヒールは高くないが、走ることは想定していない。
観覧席の専用入り口に到着する頃にはすっかり息が上がり、足が痛い。
慌てていたアマンド様も、そこまで来てようやく私の格好に思い至ったらしい。
「あ・・すまない!間に合うかギリギリで・・」
「ハァ、ハァ、アマンド様、一体何をそんなに」
振り返り、空を仰ぎ見たアマンド様が、まずい!と叫んだ。
「日が沈む!レイリア、話は後だ!おぶって行かせてくれ!」
おぶ!?
「さすがにそれは・・」
中腰になって背中を向けるアマンド様が焦れたように声を上げた。
「屋台!」
え?
「俺が毎年行ってた屋台が、今年も来てるんだ!珍しい異国のお菓子の・・今日を逃したら来年まで食べられない!」
「それって・・」
アマンド様の話にあった、あの?
いつか行ってみたいと子供の頃から夢だった、あの!?
「ほら、レイリア!おぶうのは少しの間だから!」
促され、意を決して彼の肩に手をかける。
アマンド様におぶってもらうのは、子供の頃以来だ。
「し、失礼します!」
私をおぶって立ち上がったアマンド様が、何やら動かない。
あれ?
「・・アマンド様?」
「レイリア、これから全力で走る。すごく揺れるし、振り落としてしまうかもしれないから、しっかり掴まってほしい」
そんなに急いでいたとは・・!!
その後具体的な指示があり、レクチャーされた通り、張り付くようにぴっとり身を寄せると、仄かにベルガモットの香りがした。
アマンド様が走り出す。
まさか、屋台に連れていってもらえるなんて。
『御前試合の2日間は、街がそれ一色になるんだ。見たこともないような異国の屋台もやってきて、その時だけ王都が違う国になったみたいで!とにかくほんっと凄いんだから!リアもいつか一緒に行こう。毎年絶対行く屋台があるんだ。そこの珍しいお菓子、リアにも食べさせてあげるからね。』
広く硬い背中に揺られながら、期待に胸を膨らませた。
あなたにおすすめの小説
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
あのひとのいちばん大切なひと
キムラましゅろう
恋愛
あのひとはわたしの大切なひと。
でも、あのひとにはわたしではない大切なひとがいる。
それでもいい。
あのひとの側にいられるなら。
あのひとの役にたてるなら。
でもそれも、もうすぐおしまい。
恋人を失ったアベルのために奮闘したリタ。
その恋人がアベルの元へ戻ると知り、リタは離れる決意をする。
一話完結の読み切りです。
読み切りゆえにいつも以上にご都合主義です。
誤字脱字ごめんなさい!最初に謝っておきます。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
※表紙はあさぎかな先生(@yatusiro1)にコラージュアートを作成していただいたものです。
(*´˘`*)シアワセデスッ
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。
Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。
そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。
かつての自分は同じ大陸のこことは別の国……
レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。
そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、
シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。
しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。
何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。
そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。
当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い!
そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。
アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……?
前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?
さよなら、私の初恋の人
キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。
破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。
出会いは10歳。
世話係に任命されたのも10歳。
それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。
そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。
だけどいつまでも子供のままではいられない。
ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。
いつもながらの完全ご都合主義。
作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。
直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。
※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』
誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。
小説家になろうさんでも時差投稿します。
(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た
青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。
それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。
彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。
ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・
ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。