大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

文字の大きさ
96 / 165
御前試合

彼の気持ち 私の気持ち

その後、アマンド様にこれまでのことを話した。

友人から、アマンド様と愛し合っていると言われて、信じてしまったこと。

2人が結ばれるための協力を約束し、婚約の解消まで考えていたこと。

アマンド様は急かさずにじっと私の話に耳を傾け、聞き終えると、しばらく沈黙した。

「・・俺から、身を引こうとしていたの?」

「ごめ・・ごめんなさい」

「レイリアは・・俺は要らなかった?」

ふるふると首を横に振る。

アマンド様じゃない。

私が、要らない存在だと思っていた。

嫌われるために我儘を頑張って、でもうまくいかなくて。

嫌われようとしていたのに、アマンド様に会う度に、もっともっと好きになっていった。

アマンド様は、小さくため息をついた。

「まさかそんなことになっていたとは思わなかった・・・レイリアに信じてもらえなかったことは、正直、ショックだよ」

彼の言葉が重くのしかかり、ギュッと目を閉じる。

「でも、俺が去年レイリアにあんな態度をとっていなければ、つけ込まれることも、君がそれを信じてしまうこともなかった。君に嫉妬してほしくて、思わせぶりな態度をとってしまったことも、確かにあった。・・俺の自業自得だ。レイリア、目を開けて」

恐る恐る目を開き、見つめ返す。

月明かりを受けて、彼の金色の瞳は、本物の月のように輝いている。

「去年の俺は・・仕事に体力も気力も時間も奪われて、思い返せばこれまでで一番辛い1年だった。でも何より辛かったのは・・君と会えなかったことだ」

「私と・・?」

そうだよ、と彼は笑む。

「君が、俺の体や仕事を思って、会う頻度を減らそうと言ってくれていることはわかっていた。でも、そう言われる度に、俺は君から『要らない』と言われているようで、寂しかった。」

私の右手を、彼の左手がそっと包む。

「俺はね、レイリア。とても面倒くさい男なんだ。許されるなら、四六時中レイリアと一緒にいたいし、レイリアにも、いつも俺のことを思っていて欲しい。それくらい求めているから、君にそれを奪われるのが、耐えられなかったんだ・・」

初めて聞く、アマンド様の気持ち。

お茶会を減らそう、と提案しても、彼はいつも拒否して、その度に不機嫌になった。

私は彼から”怒り”の感情を感じていたものの、なぜ彼が怒るのか、その理由が分からなくて。

怒りの理由に思いを巡らすよりも、どうにか彼を休ませなければと、そればかり考えていた。

「会う回数を減らすことになってからも、本当はレイリアは俺と会いたくないんじゃないかって君のことを邪推して・・拗れに拗れて、あんな頑なな態度になっていた。・・・レイリアに信じてもらえなくてショックだとさっき言ったけど、訂正するよ。俺が言えた義理じゃない。俺だって、レイリアを信じられていなかったんだ・・」

会うことに固執した彼と、彼の体のことしか考えていなかった私と。

あの頃の私たちに欠けていたものーー

「私、もっと・・アマンド様とお話しするべきでした・・」

「俺もだよ。これからは、もっと話すようにしよう。」

少しの沈黙の後、アマンド様がキュッと私の手を握る。

「レイリア、その・・」

「はい」

「今もちゃんと、レイリアの気持ちは俺にあるって思っていい?」

・・そうだ。

彼にちゃんと、伝えなくちゃ。

右隣にいる彼に体を向けてから、顔を伏せて、息を整えた。

ドキドキする。

「アムド、大好き!」と気軽に言っていた、子どもの頃とはわけが違う。

改まってアマンド様に想いを伝えることなんて、実際初めてじゃないだろうか。

小さく息を吐き、顔を上げて目を合わせる。

「アマンド様。私も、アマンド様のことが」

ドーン!!

ヒュルルルルー ドーン!!ドーン!!

「へ?」

閃光と煌めき。

体の奥まで響く大音。

「・・花火!」

夜空に次々と咲き誇る大輪の花に、一瞬で目を奪われる。

「すごい!こんな近くで見れるなんて!王子殿下が仰っていたのは、もしかしてこのことだったんですね!」

「・・ああ、きっとそうだ」

興奮しながら見上げると、上がる花火に照らされて、アマンド様の表情がはっきりと目に映った。

繕ってはいたけれど、なんだかとってもしょんぼり見えて。

彼の手を握り返す。

「アマンド様」

「うん?」

次々と打ち上がる花火。

遠くに聞こえる歓声。

火薬の匂い。

「好きです。私も、アマンド様のことが、大好き」

言葉もなく抱き込まれて、彼の香りを胸いっぱい吸い込んだ。

耳元で囁かれる愛の言葉。

花火も見たいけれど、今はもっと、大事にしなきゃいけないことがあるから。

愛しい人に名を呼ばれ、私は瞼を閉じて、彼の口付けを受け入れた。





あなたにおすすめの小説

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

あのひとのいちばん大切なひと

キムラましゅろう
恋愛
あのひとはわたしの大切なひと。 でも、あのひとにはわたしではない大切なひとがいる。 それでもいい。 あのひとの側にいられるなら。 あのひとの役にたてるなら。 でもそれも、もうすぐおしまい。 恋人を失ったアベルのために奮闘したリタ。 その恋人がアベルの元へ戻ると知り、リタは離れる決意をする。 一話完結の読み切りです。 読み切りゆえにいつも以上にご都合主義です。 誤字脱字ごめんなさい!最初に謝っておきます。 小説家になろうさんにも時差投稿します。 ※表紙はあさぎかな先生(@yatusiro1)にコラージュアートを作成していただいたものです。 (*´˘`*)シアワセデスッ

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。

Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。 そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。 かつての自分は同じ大陸のこことは別の国…… レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。 そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、 シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。 しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。 何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。 そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。 当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い! そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。 アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……? 前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た

青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。 それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。 彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。 ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・ ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。