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御前試合
おやすみ
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「ボートウェル子爵家に、厳重に抗議する。」
花火が終わり、馬車寄せでガーナー家の馬車がこちらに近づくのを見ながら、アマンド様が私に告げた。
「詳細は君のお父上が帰ってきてからだが、連名での抗議文になるだろう。」
「その・・あまり大ごとには」
してほしくない、と言い切る前に「レイリア」と嗜められた。
「俺たちを意図的に破局させようとしていたんだぞ?許容出来るわけがない。王家も認めている伯爵家同士の婚約を破談させようとするなど・・出るところに出れば、反逆罪にもなり得る大罪だ。そこを抗議に留めるんだから、むしろ感謝してほしいくらいだ。非は向こうにある。」
「・・はい」
できれば争いは避けたい。
でも、アマンド様に言葉にされてようやく、私の考えの甘さに気づく。
メイベルのしたことは、とっくに「ごめんなさい」で済む問題ではなくなっていたのだ。
「今後は俺にもレイリアにも、一切接触しないよう要請するつもりだ。君も、ボートウェル子爵令嬢とはもう会わないでほしい。そうじゃないと安心できない。」
「・・はい。」
ふと、今日のメイベルの格好を思い返し、背筋が冷える。
なんであんな・・私そっくりの格好をしていたんだろう。
去年アマンド様が私と見間違えた、同じ髪色の人物も・・前後の状況や言動から考えて、メイベルの可能性が高い。
彼女に嘘をつかれていたのもショックだが、それよりも何か・・いつの間にか得体の知れない者になり変わっていたような、そんな気味悪さを感じてしまう。
「さ、乗ろう。」
気づくと馬車が目の前に到着していた。
*******************************
揺れが止まり、意識が少し浮上する。
「アマンドー!姉さんもおかえり!え・・姉さん寝てるの!?」
「カイン!しー!静かに・・!」
アマンド様の顰めた声が、上の方から聞こえる。
私はいつから横になっていたんだろう。
優しく頭を撫でる手はそのままで、安心する。
「姉さん、今朝散々俺のことバカにしてたんだよ。夕食中に寝るなんて信じられないって。自分は夕食にもなる前から寝ちゃってんじゃん」
カインの笑い声。
だってしょうがないじゃない。
身体がいうことを聞かないんだもの。
今日は朝から何度も泣いて、ドキドキしたりホッとしたり・・そうそう、ドレス姿で走ったりもしたんだった。
眠くて眠くて、馬車が走り出してすぐに寝てしまった。
身体が重くて、指先をピクリとも動かせない。
「姉さん、姉さん、おーい。うちに着いたよ」
「カイン、起こさないでやってくれ。俺が運ぶ」
「いいっていいって。アマンドはちょっと待ってて。今、誰か護衛とか連れてくるから。」
「護衛?」
「姉さんのベッドまで運ぶの、代わってもらった方がいいだろ?アマンド疲れてるだろうし」
「必要ない。俺が連れて行く」
抱えられ、横向きのままふわっと持ち上げられた。
「ええ?アマンドが姉さんの部屋に行くのはまずいんじゃない?」
「カインも着いてきてくれれば問題ないだろ」
「あ、そっか。」
心地よい浮遊感。
ゆらゆらする揺れに誘われ、私はまた深い眠りに潜っていく。
「キーラ!姉さん寝て帰ってきたんだよ」
「ま、お嬢様!」
「どこに運べばいい。寝支度などもあるだろう?」
「は、ハイ!そうですね・・ではこちらのベッドへお願いします」
そっと横たえられ、ベッドが沈む。
さっきまでのゆらゆらが無くなってしまって、なんだか残念に思えた。
「他に何か手伝えることはあるか」
「いえっ!あとはこちらにお任せください。大変ありがとうございました。」
「・・・そうか。それでは失礼する」
足音が再び近づいてきた。
額に当たった柔らかな感触が、ゆっくりと離れていく。
「おやすみ、レイリア。」
そうして私は、再び深い眠りの世界へ旅立っていった。
花火が終わり、馬車寄せでガーナー家の馬車がこちらに近づくのを見ながら、アマンド様が私に告げた。
「詳細は君のお父上が帰ってきてからだが、連名での抗議文になるだろう。」
「その・・あまり大ごとには」
してほしくない、と言い切る前に「レイリア」と嗜められた。
「俺たちを意図的に破局させようとしていたんだぞ?許容出来るわけがない。王家も認めている伯爵家同士の婚約を破談させようとするなど・・出るところに出れば、反逆罪にもなり得る大罪だ。そこを抗議に留めるんだから、むしろ感謝してほしいくらいだ。非は向こうにある。」
「・・はい」
できれば争いは避けたい。
でも、アマンド様に言葉にされてようやく、私の考えの甘さに気づく。
メイベルのしたことは、とっくに「ごめんなさい」で済む問題ではなくなっていたのだ。
「今後は俺にもレイリアにも、一切接触しないよう要請するつもりだ。君も、ボートウェル子爵令嬢とはもう会わないでほしい。そうじゃないと安心できない。」
「・・はい。」
ふと、今日のメイベルの格好を思い返し、背筋が冷える。
なんであんな・・私そっくりの格好をしていたんだろう。
去年アマンド様が私と見間違えた、同じ髪色の人物も・・前後の状況や言動から考えて、メイベルの可能性が高い。
彼女に嘘をつかれていたのもショックだが、それよりも何か・・いつの間にか得体の知れない者になり変わっていたような、そんな気味悪さを感じてしまう。
「さ、乗ろう。」
気づくと馬車が目の前に到着していた。
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揺れが止まり、意識が少し浮上する。
「アマンドー!姉さんもおかえり!え・・姉さん寝てるの!?」
「カイン!しー!静かに・・!」
アマンド様の顰めた声が、上の方から聞こえる。
私はいつから横になっていたんだろう。
優しく頭を撫でる手はそのままで、安心する。
「姉さん、今朝散々俺のことバカにしてたんだよ。夕食中に寝るなんて信じられないって。自分は夕食にもなる前から寝ちゃってんじゃん」
カインの笑い声。
だってしょうがないじゃない。
身体がいうことを聞かないんだもの。
今日は朝から何度も泣いて、ドキドキしたりホッとしたり・・そうそう、ドレス姿で走ったりもしたんだった。
眠くて眠くて、馬車が走り出してすぐに寝てしまった。
身体が重くて、指先をピクリとも動かせない。
「姉さん、姉さん、おーい。うちに着いたよ」
「カイン、起こさないでやってくれ。俺が運ぶ」
「いいっていいって。アマンドはちょっと待ってて。今、誰か護衛とか連れてくるから。」
「護衛?」
「姉さんのベッドまで運ぶの、代わってもらった方がいいだろ?アマンド疲れてるだろうし」
「必要ない。俺が連れて行く」
抱えられ、横向きのままふわっと持ち上げられた。
「ええ?アマンドが姉さんの部屋に行くのはまずいんじゃない?」
「カインも着いてきてくれれば問題ないだろ」
「あ、そっか。」
心地よい浮遊感。
ゆらゆらする揺れに誘われ、私はまた深い眠りに潜っていく。
「キーラ!姉さん寝て帰ってきたんだよ」
「ま、お嬢様!」
「どこに運べばいい。寝支度などもあるだろう?」
「は、ハイ!そうですね・・ではこちらのベッドへお願いします」
そっと横たえられ、ベッドが沈む。
さっきまでのゆらゆらが無くなってしまって、なんだか残念に思えた。
「他に何か手伝えることはあるか」
「いえっ!あとはこちらにお任せください。大変ありがとうございました。」
「・・・そうか。それでは失礼する」
足音が再び近づいてきた。
額に当たった柔らかな感触が、ゆっくりと離れていく。
「おやすみ、レイリア。」
そうして私は、再び深い眠りの世界へ旅立っていった。
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