大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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それぞれの御前試合

王子殿下の特命⑤世界の果てからの帰還

ドンドコドンドコドンドコドンドコ 

闇夜に響く、絶え間ないドラムの音。

俺は周りを囲むムキムキの男たちを見回した。

「おい、アル。あいつなんて言ってんの?」

「『神にササゲヨ』言ってる。」

捧げるって、普通に考えて殺られるんじゃね?

現に、俺とアルは後ろ手に縛られて、連中の囲む焚き火近くに転がされている。

「敵じゃないし、剣舞を披露してほしくて依頼しにきたって言ってくれ」

アルが訳して話すが、連中はゲラゲラと笑うばかり。

「おい、アル!ちゃんと意味通じてんのか?」

「ワタシ、ドレアドの言葉話しテル。デモ、この人たち、話しツージない。」

どうやら言葉の問題じゃないらしい。



そう、俺とアルは馬車で北西へ向かい、広大なジャングルに到着した。

狩猟民族ドレアドに会いたいんだが、と地元民に相談すると、「ジャングルに行けば自ずと会える」と言われ、ジャングルを彷徨うこと3日。

ドレアドには会えた。

というか、会った瞬間に捕獲され、縄で縛られ歩かされ、夜になり・・そして今に至る。

余興の開催どころか、その前に命が危うい。

一番体が大きく、虎を従えた男が俺たちに話しかけてきた。

アルの訳を待つ。

「このヒト、族長。奴隷になるか、供物になるかキイテル。」

どっちもヤダ。

「奴隷になるナラ、役にたつコトないとダメ」

アルは奴隷を選んだ。

初めは通訳出来ることを売り込んだが却下され、ダメ元でハーモニカを吹いたら大ウケ。

見事に奴隷に確定した。 

次は俺の番だ。

ヤバいぞ、何も特技なんて思い浮かばない。

そうこうする内に、太鼓に合わせてどうやら剣舞が始まった。

これが獣使いの剣、ドレアド ガガンか。

1人に対し、従える獣は1匹。

狼や犬、猿など種類は様々だ。

湾曲した中剣を持ち、従える獣と見事なコンビネーションを取りながら、一心不乱に舞い続ける。

それは勇壮で猛々しく、舞というより・・・それは祈りのようだ。

そう思ったところで、あの分厚い本、「世界の剣舞~その起源と今昔~」のドレアドのページを思い返す。

確か・・ドレアド ガガンの"ガガン"はドレアド語で武神という意味だ。

連中にとって、これはドレアドの武神をこの地から解き放つ儀式なのだ。

地に眠る武神を儀式により解き放つと、武神はその礼に、森の恵みをもたらす。

だからドレアド族は定住せず、ジャングルの至る所でドレアド ガガンを踊る。

武神を解き放ち、森の恩恵に預かるために。

"ドレアド ガガン"はドレアドにとって、剣舞ではない。

意味を履き違えていたのは俺の方だった。

ということはつまり・・

「ドスル?奴隷?供物?」

聞いてくるアルに、首を横に振ると、俺は族長に直接語りかけた。

「ドレアドの民よ。私はバルト王国より参ったグース トラべリッチだ。実は、我が国の聖地で、他国と共に武神を解き放つ祭りを開催する。我が国で、貴殿らの武神も呼び起こしてはくれまいか。遠く離れた異国の地での儀式に、ガガンもお喜びとなろう。」




ドレアドから3人の若い衆と3匹を派遣することを族長から約束され、俺とアルは無事に解放された。

因みに、太鼓を鳴らす男衆の中に、明らかにドレアド族と顔立ちが違うヤツがいて、確認したら、やっぱり消息不明になってた影さんだった。

奴隷になってた影さんの解放も交渉してみたけど、族長は許してくれなかったので、若い衆が王都に来る時の案内役に推しておいた。

影さんに、「ミッションに失敗して、もう国には帰れないと思っていました・・これで帰る言い訳ができます・・!」って泣いて感謝されたのはここだけの話だ。

さらに南下して、最後の流派の誘致に成功し、俺のミッションは終了。

大きな港でアルに別れを告げて、俺は約4ヶ月ぶりに、バルト王国の王都に帰りついた。






「失礼します」

この部屋に来るのも、実に4ヶ月ぶりだ。

「ああ、トラべリッチさん、長旅ご苦労様でした。随分、顔つきが精悍になられて・・」

レイダンさんに招き入れられ、王子殿下の執務室に足を踏み入れる。

この4ヶ月の成果の報告に訪れたのだが、今日は王子殿下もご在室なので緊張感が違う。

「お願いしていた5件とも、誘致に成功したと聞いて、殿下もお喜びです。」

すでに報告内容はご存知のようだ。

となれば俺が殿下に伝えることは1つ。

「リュシールデュールについてはまだ保留と言われてしまっていますが・・その、衣装のデザイナーの件は、独断で進めてしまって申し訳ございませんでしたっ」

勝手に決めて、あろうことか殿下にデザイナーの手配をお願いするとか、懲戒プラス不敬罪も適応されかねないんじゃないかと俺は内心ヒヤヒヤしていた。

「ああ、あれには驚きましたが大丈夫ですよ。殿下が一筆書いただけで、"ハイルスミス"は喜んで応じてくれましたし、早速デザイナーチームが現地に赴いているそうです」

良かった・・一歩前進だ。

でもハイブランドに衣装を依頼することになったし、やっぱり・・

「費用もかさんでしまいましたよね・・」

「あ、それも大丈夫です。次の公務の際に、殿下がハイルスミスの靴とアクセサリーをお召しになればそれで済む話ですから。」

「あ、そっすか。」

「ハイルスミスとの調整は6課6班にお任せしてるので、そちらに聞いてもらった方が早いでしょう。迅速に動いてくれて助かってます」

へぇ・・シム班長かな?

「・・開催方法は、何か良い案が見つかったのか?」

相変わらずの無表情で王子殿下が口を開く。

「はい。途中に見学した祭りから、何となくヒントはもらいました。少し班に戻って検討してからお伝えしますので、今しばらくお待ちください」

エルバート殿下は小さく頷く。

「わかった。引き続き励め。」




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