大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

文字の大きさ
117 / 165

王子殿下がR15にそぐわない話を始めたんだが。

しおりを挟む
「マルグリット侯爵令嬢が王妃となるというのは・・・決定事項ですか?」

「・・・そう思ってもらっていい。」

「しかしいまだに殿下もマルグリット侯爵令嬢も、婚約されておりませんが・・」

ギューっとしがみついてくるレイリアの頭を撫でながら、バランスを崩されないように、壁際に寄りかかった。

殿下が、しばらく黙った後に「聴くか?」と尋ねてくるので俺は頷いた。

王族の事情に立ち入るのは自分の首も締めかねないので本意ではないが、レイリアの友人が次期王妃候補なのであれば、こちらもそれなりの心づもりで付き合っていく必要がある。

「殿下、レディは外にお連れしましょうか?」

ずっとそばで控えていた殿下の侍従が申し出て、殿下は俺を見た。

「アマンド、どうする?」

機密に関わる話、ということか。 

さっきの侍女ももう居ないし、この状態のレイリアを近衛に預けるのは、いささか心配だ。

「いえ、大丈夫です。」

必要ならば、また耳を塞げばいい。

殿下が凪いだ目で話し始める。

「ジュディは元々、私の婚約者に内定していた。本当なら、去年の今頃には婚約しているはずだった」

「ジュディ様のお話?」

レイリアが振り返り、俺に背を預けて王子殿下に向き直った。

「何があったんですか?」

「若さ故の過ち、というやつだ」

若さ故の・・?

「ジュディは私が見初めたんだ。家柄的にも婚約するのに問題はなかった。ただ、マルグリット家から、ジュディは選り好みが激しいから少し相性を見させて欲しいと注文がついてね。それで、友のディフィートの家に遊びに行くという名目で、何度もマルグリット家に遊びに行った。ジュディとも順調に関係を築けて、婚約が内定したのは3年前のことだ。」

つまり、その後に何かが起こったと言うことか。

「私は早熟でね・・ジュディへの熱が高まりすぎて、時々どうしても熱を発散させずにはいられなくて・・」

しもの話だと気づき、俺は光の速さでレイリアの耳を塞いだ。

「それである日、侯爵家に遊びに行った時に、ジュディの部屋に忍び込んで、彼女の部屋で熱を逃がしていたんだが・・見つかってしまった。もちろんジュディ自身に何かしたわけじゃないんだ。あくまで場所を借りただけで。」

俺は何を聴かせられているんだ?

てっきり浮気とかそう言う話かと思っていたのに、それより遥かにヤバい話じゃないか!

耳を塞がれたレイリアが「あら?王子殿下が口パクしてる・・」と不思議そうにしている。

レイリアには絶対に聴かせてはいけない。

「それで侯爵家を出禁になってしまってね。婚約もほぼほぼ内定していたところが、消滅する危機で・・なんとかそれは阻止して一旦保留という形にはしたんだが、ジュディには不潔だと泣かれて罵られて嫌われて・・あの時は流石に落ち込んだものだ。厄年だったよ」

厄年の一言で片付けられる問題ではないと思う。

「ジュディの中で私は変態まで成り下がったかもしれないが・・あの時は生まれて初めての強い衝動で抗えなかったんだ。あれから丸々2年経つし、私も成長した。今はもう大丈夫だ。」

後ろで殿下の侍従が頷いている。

ホントか?信じていいのか?

「今はまだ、婚約は保留の状態ですか」

「ああ。マルグリット侯爵家からは、2年間ジュディとの接触を一切断って、それでも私が婚約を望むのであれば検討すると言われている。ようやく2年経ったんだ。2人きりでなければ会っていいと許しももらったから、これからは婚約に向けて動くのみだ。そういう訳で、これからもジュディの行くところに私が現れる可能性がある。友人として応援よろしく頼む。」

遠慮したい。

激しく遠慮したい。

あぁ・・俺が耳を塞いでいることにレイリアが気づいて嫌がり出した・・ここまでか・・。

俺は大きく息をつく。

「応援と言っても大したことは出来ませんが・・条件があります。」

「何だ?」

「絶対にレイリアと2人きりにならないと、約束してください。」

ブホッと殿下の侍従が吹き出した。

「・・レイダン、不敬だぞ」

「クハハハハ!だって殿下、全然信用されて無いじゃないですか・・あー可笑しい」

ひとしきり笑うと、侍従が一歩進みでて礼をした。

「失礼いたしました。侍従のレイダン バーナードと申します。お疑いかもしれませんが、殿下は今はまともですよ。元々欲のない方だったので、その反動もあって思春期の熱を御しきれなかったのだと思います。淡々とお話されていますが、この2年間、とても反省されていたんですよ。あ、この話を知っているのは極々限られた人間のみですので、どうかご内密にお願いします」

言われなくてもこんな話、墓場まで持っていくしかないないんだが?

「それでは皆さま、そろそろ広間へ戻られた方が。」

侍従に促され、ようやくその場は解散となった。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた

今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。 二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。 ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。 その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。 が、彼女の前に再びアレクが現れる。 どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…

『めでたしめでたし』の、その後で

ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。 手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。 まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。 しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。 ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。 そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。 しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。 継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。 それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。 シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。 そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。 彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。 彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。 2人の間の障害はそればかりではなかった。 なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。 彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

h.h
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。

有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。 けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。 ​絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。 「君は決して平凡なんかじゃない」 誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。 ​政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。 玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。 「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」 ――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

処理中です...