大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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ジュディ様とのお出かけ

「やっと来たわね・・!」

マルグリット侯爵家に到着した私とアマンド様は、腕組みをしたジュディ様に出迎えられた。

初めて見るジュディ様のワンピース姿だ。

ワインレッドのスタンドカラーのワンピースは、前見頃の部分に金のダブルボタンで装飾されている。

髪はきっちりしたポニーテール。

ジュディ様の栗色の髪と服の色ワインレッドがよく似合っていた。

「以前も思ったが・・・あのご令嬢は、なんであんなに勝ち誇った顔をしてるんだ?」

アマンド様が小声で尋ねてくる。

「あれが張り切ってる時のジュディ様の通常運転ですわ」

「何をこそこそ話してるの!早く出発するわよ!」

今日も待てないジュディ様が、先に馬車に乗り込んだ。







前の馬車にジュディ様と私たち、後ろの馬車にゲルトさんが乗り2台の馬車が出発した。

アマンド様が今日の飛び入りの礼を述べるとジュディ様は「ふふん」と不敵に笑う。

「まさか来るとは思わなかったけど、ちょうど良かったわ。」

「今日はどちらへ?」

「着いたら教えてあげるわよ。・・・それはそうと私、最近招ばれていくつかのお茶会に参加したのだけど、あなた達、社交界で、理想のカップルだと持て囃されてるらしいわね?」

ふぇっ?

「理想のカップル!?」

「令嬢達が騒いでいたわよ?こないだの王宮の宴で、アマンド ガーナーは婚約者に何度もキスする熱々ぶりだったって」

「キ、キスなんて・・!」

してない、と言おうとして詰まる。

いや、されてた・・頭にだけど、1回だけキスされてた・・。

「でも、1回だけです!そんな何度もなんてしてないです!・・ね?アマンド様?」

そう言って隣に座るアマンド様に同意を求めたが、私に見えたのは彼の後頭部だけ。あれ?

可笑しそうにジュディ様が目を細めた。

「1回だけ?」

「1回です!きっと、話に尾ヒレをつけて面白おかしくされてるだけで・・」

「私がお母様に聞いた話と違うわねぇ。」

ジュディ様が勿体ぶって首を傾げる。

「登場して囲まれた時に頭に1回、2人でダンスしてる間に頬に2回、ディフィート兄様とレイリアがダンスし終わって戻った後は、確認できただけで8回は至る所にキスされてたって聴いたけど。」

「え!え!?」

ダンス?ディフィート様とも?

ていうか8回って何?

ぐりんと隣席を見ると、アマンド様が更に顔を逸らした。

「安心なさい、レイリア。私が訂正しておいてあげたわ」

ニッコリ笑むジュディ様に、嫌な予感が増す。

「何度もどころか、5分に1回はキスする熱々ぶりだった、って。」

「ジュディ様ぁ!」

コロコロ笑うジュディ様の笑い声を響かせながら、馬車は進んで行く。






「着いたわね。」

1時間ほどして馬車が完全に停まり、降り立つと、目の前にはのどかな風景が広がっていた。

豊かな牧草地の向こうに連なる山々。

澄み渡る青空を、スイスイとトンボが横切っていく。

「こっちよ。」

手を引かれ、馬車の反対側に回り込んで、初めてその大きな建造物に気がついた。

アマンド様が、やはり、と頷く。

「メイソン競馬場、か。」

「そう!今日はマロニエ賞のレースがあるのよ」

ウキウキと入り口に向かうジュディ様を見遣りながら、アマンド様が小声でたずねてきた。

「ご令嬢の貯めたポイントは、もしや競馬に使っていると言うことか?」

「まさか・・!未成年ですし、流石にそれはないんじゃ?」

「でもだからこそ、易々と出来ないようにポイント制にしているんじゃないか?バトラーに代理で馬券を買わせるとか、手はいくらでもあるだろう?」

アマンド様の眉間の皺が深まる。

「レイリア、止めよう。侯爵家が許しても、流石にこれは見過ごせない。」

「は、はい!」

急ぎジュディ様を追いかけ入場すると、左手方向に大勢の人が列を作っており、その先に並ぶカウンターには『馬券売り場』と掲げられていた。

その列の後方で、ジュディ様がゲルトさんから何かの券を受け取っている。

「ご令嬢!」

「ジュディ様!その券は」

ダメです!と言う前に、「はい」と券を手渡された。

私とアマンド様に、1枚ずつ。

「一般席が良いって言ったのに、ゲルトが貴賓席を買ってきちゃったわ。いいかしら?」

「え?あ、これ馬券じゃ無い・・?」

よく見ると、『入場券』と印字されている。

「レイリアあなた・・馬券を買いたいの?」

ジュディ様が呆れたように馬券売り場を指差す。

「買いたいんだったらあそこに並ばないとだけど、年若い令嬢が馬券を買うなんてあまり褒められた行為じゃないから、婚約者に買ってもらいなさいね。私はパドックに行きたいから先に行くわよ」

ん?

アマンド様と顔を見合わせて、先へ急ごうとするジュディ様に慌てて声をかける。

「あの、ジュディ様?」

「何よ?」

「今日ここに来た理由って・・?」

ジュディ様は思い切り変な顔をした。

「ここに私が来る理由なんて、馬を見る以外、他に何があるの?」

「・・・ナイですね、ハイ」

怪訝な様子で一瞥するジュディ様を、私たちは素知らぬ顔でやり過ごした。


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