大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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ジュディ様とのお出かけ②

「あの栗毛の小柄な馬がパルセミス、黒毛の大きなのがコックスウェルよ。コックスウェルは足が抜群に速いの!」

パドックで瞳をキラキラさせながら馬を鑑賞するジュディ様は満足気だ。

「ご令嬢は馬がお好きなんですね」

「こんなに美しい生き物、他にいないでしょ?あ、ジョナス!」

手を振るジュディ様に応えて手を挙げたのは柵の向こうで黒馬コックスウェルの手綱を引く快活そうな中年男性だった。

黒馬を他の人に託して、オーバーオールの裾についた枯れ草を払いながら、柵の手前までやってくる。

「やぁ嬢ちゃん、来てたんですかい」

よく日に焼けた顔に、人の良い笑顔を浮かべた。

「厩務員のジョナスよ。」

ジュディ様の紹介に、ジョナスさんは帽子を脱いで「どうも」と挨拶してくれる。

「礼儀を知らねえもんで、失礼があっても怒らねぇでくだせえ。嬢ちゃんのこともねぇ、侯爵家のお嬢様ってことは知っちゃいるんだが、こんな小さい頃から知ってるもんで、嬢ちゃん呼びが抜けなくて・・」

「馬好きの叔父様に連れてきてもらったのが最初よ。」

「そうさ!そんでその日にコックスウェルが初勝利したんでさぁ!嬢ちゃんはその日から俺たちのラッキーガールでね!」

「コックスウェルの実力だわ。あとジョナスの世話が行き届いているからよ。一流の厩務員なんだから」

「ハハッ!嬢ちゃんにそう言われたら嬉しいねぇ。ほら、コックスウェルが嬢ちゃんを見てる!こりゃ蜂蜜がもらえると思って張り切るぞ」

「ふふ、期待してるわ。」

「レースの後に会ってやってくだせえ。嬢ちゃんがくると大喜びしますんで!」

「ええ、後でね。」



ジョナスさんと別れ、貴賓席へ向かう。

バルコニーのように張り出したそこからは、眼前に遮るものがなく、競馬場が一望できた。

ゲルトさんがお茶の準備をしている間に、思い切って聞いてみる。

「ポイントで欲しいものって、もしかして馬ですか?」

「まぁ、そうね。自分の馬は欲しいけど・・どちらかと言うと、乗馬を習いたいのよ。自分の馬で、自由に色々な場所を走ってみたいの。お父様もお母様も、危ないからって最初は全然許してくれなかったけど、もう少しでポイントが貯まるから、そしたら私の馬を買ってくれる約束よ。レイリア絡みで、最近は思ったより早いペースで貯まったから助かったわ」

「・・お役に立てたようで何よりです」

貴族令嬢が本格的な乗馬をするというのはあまり聞いたことがないけれど、ジュディ様らしい。

「レースまであと1時間を切ったわね。馬券が欲しいなら、今買ってこないと閉まっちゃうわよ?」

「あ、私は大丈夫です。」

「そう、あなたは?」

「俺は少し屋台を見てきます。」

「あら、そう。」

アマンド様がいなくなると、ジュディ様が「で?」とニヤリと笑った。

「あの無礼女の家に何かしたの?無礼女が社交の場に出てこなくなったって、ちょっとした話題になってるわ」

抗議文を送り、私たちとの接近を禁止したことを伝えると、ジュディ様は頷いた。

「そう。対応としては甘いけど、甘い中ではまあ妥当よね。無礼女の家も、さすがにそれを破るほど馬鹿じゃないでしょ。」

結果として、メイベルと会うのは、あの決勝トーナメントの日が最後になった。

アマンド様と一緒にいて幸せを感じるその時に、心のどこかでメイベルのことを気にしてしまうのは、もう彼女の真意を聞くことが叶わないせいかもしれない。

もう会うことはない。

だから考えても仕方のないことなのに。

「ほら、そんな顔しないで。元気出しなさい。レイリアの好きな焼き菓子もあるわよ」

ジュディ様に、気遣われてしまった。

「お言葉に甘えて、いただきます!」

割り切れない気持ちから目を逸らし、私は笑顔で焼き菓子に手を伸ばした。








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