大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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トラウマになってるみたいです。

医師の診察後、私の意識がない間の話をおばさまに聞いたところ、実は結構死にそうな目に遭っていたことを知った。

確かにメイドの手を借りながら湯浴みをした時に、体のあちこちに大きな痣が出来ていて慄いたけれども・・乗った馬車が落とされるなんて大事故で、よくこの程度の怪我で済んだものだ。

アマンド様がすぐに見つけてくれていなかったら、多分命はなかっただろう。

とは言え、ずっと意識が無かった私には、他人事のようでどうにも実感が湧かない。

むしろ、目の前で馬車を落とされ、意識不明の私を介抱したアマンド様の方が心の傷は大きいようで・・おばさまが私に馬車が落とされた話をしている間、「気分が悪い」と席を外したほどだ。

彼は、超のつく心配症になってしまった。




チュッ

「・・・」

ペシリ

チュッチュッ

「・・・」

ペシリ

「母上、やめてください。」

「こっちのセリフよ。アマンド、あなた何してるの」

「・・・リアが目覚めないので少し意識の確認を」

「やめなさい。レイリアちゃんはただ寝ているだけです。」

「・・・・・」

チュッ

ペシリ

「我が息子ながら懲りないわね・・」

そんなやりとりがすぐ傍で繰り広げられていても、無視して眠れるほどに体は休息を求めていた。




「おはよう、リア」

目の前に輝く、アマンド様の笑顔が眩しい。

私が目覚めた時にはすでに目前に彼がいた。

・・・いつから見られていたのだろう。

「・・おはようございます」

右手をついて身体を起こそうとすると、「だめだよ、リア。俺に任せて」と、あっという間に抱き起こされた。

そのままキュッと腕の中に閉じ込められる。

「リア・・生きててくれてありがとう」

えっと・・

「怪我が治るまでは、俺が付きっきりで介抱するから。」

「アマンド様、重いです。」

物理的な重さではなく、主に精神的な方の意味で。

「今日も晴れそうだな」

窓に近づき、カーテンを開けるアマンド様。

それをボーッと眺めていると、寝起きでぼんやりしていた頭が、徐々にハッキリしてきた。

「いやいや、おかしくないですか。」

ん?とにこやかにアマンド様が振り返る。

「なんでここにいるんですか!」

アマンド様の顔色は元に戻っていて、昨日のうちにすっかり体調を取り戻したようだ。それはいいとして。

昨夜もいそいそとカウチソファで横になろうとしていたアマンド様が、「レイリアちゃんの目が覚めたのなら共寝は不要」とおば様に追い出されていたのを私は昨日確かに見た。

一人じゃ動かせそうにない重厚な造りのカウチソファも、本来の位置に戻されていたはずなのに、また昨日と同じ位置にぴったりと横付けしてある。

うーん、これはよろしくない。

いくら死にそうな目にあったからといって、こんな時間に異性と部屋で一緒に過ごすなんて。

というかお父様に怒られる。

婚約者といえど、やはり一線は引くべきだ。

「アマンド様、いつからいらしてたんですか」

「リアが起きた時にすぐに対応できるように、朝早くから待機してたんだ」

「もう随分痛みは良くなったので、今日からはもう大丈夫ですわ。ご飯も自分で食べれますし、もちろん一人で歩けますし。」

「・・さてと、まずは果実水からだな。」

とうとう聞こえないフリを始めたアマンド様に、思わず半目になったその時、ドアの向こうがガヤガヤしたかと思うと、部屋のドアが勢いよく開かれた。

「やっぱり!部屋にいないと思ったら!アマンド!いい加減になさい!」

また、賑やかな1日になりそう・・。

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