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俺の朝は早い

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どうしても、寝ると悪夢を見てしまう。

目の前で馬車が落ち、必死に斜面を駆け降りてようやく馬車を見つけるのに、そこにレイリアがいないのだ。

うなされて目覚めるのが夜明け前。

そこから完全に目が冴えてしまう。

眠れなくて、レイリアの姿を見ないと安心できなくて。

結局レイリアの部屋に行ってしまう。

今日もいつも通り、レイリアの部屋の前まで来たが、ドアの前の人影に眉を顰めた。

母上め・・とうとう護衛を増やしたな?

「あ、若!おはようございます!」

敬礼する中堅どころの護衛に頷く。

もう1人、爽やかな笑顔で俺に笑いかけるのは、確かうちに入って3年目になる護衛だ。

「ご苦労。」

そう言いながら、ドアの取手に手をかけると「いけません」と止められた。

「奥様が来られるまで、ここをお通しすることはできません」

「そうか」

ここ最近、未明に繰り返されるお決まりのやり取りだ。

「いやだと言ったら?」

途端に辺りに漂う緊張感。

「・・奥様から、全力でお止めするよう申しつかっております。」

フッと笑いが漏れる。

「・・2人いれば、俺を止められるとでも?」

「チッ!若はやる気だ!怯むな!打ち合わせ通り挟み込んで・・グハッ」

「グエッ」

背負い投げを決めて護衛を沈める。

両手を叩きながら思う。

(うちの護衛を鍛え直す必要があるな)






日が昇り、起きたリアの包帯を巻き直していると、母上がこめかみを押さえながらやってきた。

「アマンドあなたね・・少しは手加減しなさいよ」

手加減?とキョトンとしているレイリア。

「あんな護衛ではリアのことを任せられません。」

あいつらが弱いのがいけない。

リアの護衛を務めるにあたり、弱さは罪と等しい。

「実力がなければリアを守れない。俺はその事実を知らしめたまでです。」

「すっごいまともなこと言ってるように聞こえるわね・・無許可でレディの部屋に入ってるくせに」

「今日から、リアの昼寝中にあいつらを鍛え直します。」

「まずはあなたの行動を改めてほしい所ではあるけれど、鍛錬する必要性については私もそう思うわ。」

レイリアが声を上げた。

「あ、アマンド様、どうか私のことは気にせず、今からでもどうぞ鍛錬にいらしてください!むしろ私は1人でも全然大じょ・・うぷ」

今すぐにでも護衛を鍛え直してほしいと思うほど、リアは不安なのだろう。

とりあえず、リアを抱きしめておく。

「え?なんで今抱きしめた?今の会話のどの要素で?」

母上がうるさい。





リアの昼寝の時間になり、俺は鍛錬場に向かうために退室したが、同じく部屋を出た母上に呼ばれ、足を止めた。

「決行は、3日後になったわ。」

「そうですか。・・怪しい動きは?」

「もちろん、把握しているわ。ふふ、血湧き肉躍るわね」

母上は女性にしては目つきが鋭い方なので、悪い顔がよく似合う。

「あなたも、鈍った体をちゃんと鍛え直してきなさいよ。」

そう言い捨て、踵を返す母に俺も呟く。

「もちろん、そのつもりだ。」

































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