146 / 165
秋
実は計画進行中だったようです。
しおりを挟む
「実はね、あなたを誘拐した一味はその日のうちに捕まっててね、今王都にいるの。」
え、そうなの?
振り返ってアマンド様を見ると、彼が神妙な顔で頷いた。
「まだ罪を認めていないけど、実はその他にも余罪があるらしくて・・王都で危険な薬を売り捌いてた疑いがあるんですって。」
「薬・・!」
あの苦いチョコレートが頭に過ぎる。
「ああ、あなたの飲まされた鎮静薬とはまた別だから安心してね。」
「はあ。」
「その余罪を追求するためにも、まずはあなたを誘拐した罪を確定させることが大事なの。」
「・・私が顔を確認して、『この人に攫われました』って言えばいいですか?」
それならもう確認に行けるけど・・。
おばさまは首を横に振った。
「あなたじゃなくてアマンドが確認すれば済む話だから大丈夫よ。実はね、誘拐犯たちは悪い貴族と組んでその危険な薬を広めていたらしくって、どうせなら悪い貴族も炙り出したいってことで保安局から協力要請があったの。」
「保安局・・」
「平民じゃなくて伯爵令嬢を誘拐したわけだから、もし犯人だって確定できたら反逆罪も視野に入れて捜査ができるんですって。つまり、他に協力者がいなかったか、保安局も捜査権を持てて、もっと厳しい取り調べと捜査ができるのよ。そうなったら、誘拐犯達が悪い貴族を告白するかもしれないし、保安局が怪しいと思えば貴族でも捜査に従わないといけなくなる。つまり・・」
ニヤリ、とおばさまが笑う。
「悪い貴族達は今、気が気じゃないってこと。それで、保安局は悪い貴族を一掃するために罠を仕掛けたの。そのために、あなたは意識不明の重態、アマンドは憔悴しきって証言どころじゃないってことになってます。」
私こんなにピンピンしてるのに!?
「明日、あなたの意識が戻ったと王都に報せることになっているの。それで明後日、あなた達に確認してもらうために、王都からここまで、手薄な警備で犯人たちを連れてくるのよ。悪い貴族たちは邪魔しにくるでしょうね。なんなら、手っ取り早く犯人達を始末するかもしれないわ。実際は王国騎士団と保安局がガッチリ周りを固めてるから手出しできないけどね」
何の目的で拐われたのかとか、犯人たちが今どうなってるのかとか・・何だか怖くてこれまで聞けないでいた。
ドキドキしてきて、私は何となく、アマンド様に近づく。
横に並んでみたけど、何か違う。
「リア?」
うろうろして、彼の前に立ってみる。
すぐ背後にアマンド様がいると思うと、ようやく落ち着けた。
「その・・犯人たちじゃなくて、こっちが狙われることはありませんか?」
証言させないために私たちを消そうとするかもしれない。
この家にいれば危険はないと思っていたけれど、私がいることで、おばさまやこの家の人たちを危険に晒していたのでは?
外に散歩に行きたい、なんて気持ちは跡形もなく消えていた。
おばさまは私と私の後ろを交互に見ながら「あらあらまあまあ」と呟く。
「こちらは大丈夫よ。警備も固めてるし、西城の王宮騎士団もこの辺りを巡回してくれてるのよ。それに・・特に明後日は、こちらを狙うことは諦めるんじゃないかしら?」
ふふ、と笑うおばさまから目を離し、私は後ろを振り返った。
「アマンド様」
「ん?どうした?」
「さっきの・・取り消させてください」
「さっきの・・?」
「まだ、一緒にお部屋にいて欲しいです。その・・少し怖いから。」
呆れたのか、アマンド様は一瞬天を仰いでからギュッと抱きしめてきた。
「リア大丈夫だよ。俺がいるからね。」
コクン、と頷く私の背後からおばさまの声がする。
「あー認めちゃったわね、レイリアちゃん。見て、アマンドのあのいい笑顔。先が思いやられるわ。」
え、そうなの?
振り返ってアマンド様を見ると、彼が神妙な顔で頷いた。
「まだ罪を認めていないけど、実はその他にも余罪があるらしくて・・王都で危険な薬を売り捌いてた疑いがあるんですって。」
「薬・・!」
あの苦いチョコレートが頭に過ぎる。
「ああ、あなたの飲まされた鎮静薬とはまた別だから安心してね。」
「はあ。」
「その余罪を追求するためにも、まずはあなたを誘拐した罪を確定させることが大事なの。」
「・・私が顔を確認して、『この人に攫われました』って言えばいいですか?」
それならもう確認に行けるけど・・。
おばさまは首を横に振った。
「あなたじゃなくてアマンドが確認すれば済む話だから大丈夫よ。実はね、誘拐犯たちは悪い貴族と組んでその危険な薬を広めていたらしくって、どうせなら悪い貴族も炙り出したいってことで保安局から協力要請があったの。」
「保安局・・」
「平民じゃなくて伯爵令嬢を誘拐したわけだから、もし犯人だって確定できたら反逆罪も視野に入れて捜査ができるんですって。つまり、他に協力者がいなかったか、保安局も捜査権を持てて、もっと厳しい取り調べと捜査ができるのよ。そうなったら、誘拐犯達が悪い貴族を告白するかもしれないし、保安局が怪しいと思えば貴族でも捜査に従わないといけなくなる。つまり・・」
ニヤリ、とおばさまが笑う。
「悪い貴族達は今、気が気じゃないってこと。それで、保安局は悪い貴族を一掃するために罠を仕掛けたの。そのために、あなたは意識不明の重態、アマンドは憔悴しきって証言どころじゃないってことになってます。」
私こんなにピンピンしてるのに!?
「明日、あなたの意識が戻ったと王都に報せることになっているの。それで明後日、あなた達に確認してもらうために、王都からここまで、手薄な警備で犯人たちを連れてくるのよ。悪い貴族たちは邪魔しにくるでしょうね。なんなら、手っ取り早く犯人達を始末するかもしれないわ。実際は王国騎士団と保安局がガッチリ周りを固めてるから手出しできないけどね」
何の目的で拐われたのかとか、犯人たちが今どうなってるのかとか・・何だか怖くてこれまで聞けないでいた。
ドキドキしてきて、私は何となく、アマンド様に近づく。
横に並んでみたけど、何か違う。
「リア?」
うろうろして、彼の前に立ってみる。
すぐ背後にアマンド様がいると思うと、ようやく落ち着けた。
「その・・犯人たちじゃなくて、こっちが狙われることはありませんか?」
証言させないために私たちを消そうとするかもしれない。
この家にいれば危険はないと思っていたけれど、私がいることで、おばさまやこの家の人たちを危険に晒していたのでは?
外に散歩に行きたい、なんて気持ちは跡形もなく消えていた。
おばさまは私と私の後ろを交互に見ながら「あらあらまあまあ」と呟く。
「こちらは大丈夫よ。警備も固めてるし、西城の王宮騎士団もこの辺りを巡回してくれてるのよ。それに・・特に明後日は、こちらを狙うことは諦めるんじゃないかしら?」
ふふ、と笑うおばさまから目を離し、私は後ろを振り返った。
「アマンド様」
「ん?どうした?」
「さっきの・・取り消させてください」
「さっきの・・?」
「まだ、一緒にお部屋にいて欲しいです。その・・少し怖いから。」
呆れたのか、アマンド様は一瞬天を仰いでからギュッと抱きしめてきた。
「リア大丈夫だよ。俺がいるからね。」
コクン、と頷く私の背後からおばさまの声がする。
「あー認めちゃったわね、レイリアちゃん。見て、アマンドのあのいい笑顔。先が思いやられるわ。」
524
あなたにおすすめの小説
元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。
有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。
けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。
絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。
「君は決して平凡なんかじゃない」
誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。
政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。
玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。
「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」
――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。
[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜
h.h
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」
二人は再び手を取り合うことができるのか……。
全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
『めでたしめでたし』の、その後で
ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。
手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。
まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。
しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。
ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。
そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。
しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。
継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。
それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。
シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。
そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。
彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。
彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。
2人の間の障害はそればかりではなかった。
なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。
彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる