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秋
退場
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接見室から足早に出口を目指し、外に通じるドアを開けて、ようやく俺は大きく息を吐いた。
外は月明かりの中、リーリーと虫が鳴く程度で、それ以外は静けさに満ちている。
荒ぶる感情が、静けさと肌寒さで徐々に冷やされていった。
確認だが、と殿下が静かに切り出す。
「さっきの自白で、国外追放よりももっと重い刑にもできるが・・・いいのか?」
俺は首を横に振った。
「それよりも俺は、レイリアの人生から、そして心から、あの女に早く退場してもらうことを望みます。」
例えレイリアに真実を隠し、嘘をつくことになろうとも、その決意は変わらない。
殿下が凪いだ瞳で頷いた。
「私も君と同意見だ。あの誘拐現場に彼女がいたことは、このままレイリアさんには伏せておこう。君たちがコルンにいる間に、彼女は追放する。」
「・・・ありがとうございます」
「拐われた理由は、本人にどう説明する?」
「ボートウェル子爵の関与は伏せて、俺に個人的に恨みを持つ者の犯行ということでレイリアには説明しようと思います。」
「そう、それがいい。こちらのことは気にせず、休暇を楽しんでくるといい」
そこで俺は殿下と別れた。
接見を終えた翌日、寝覚めの悪い朝を迎えたが、ようやく別荘に戻れると思うといくらか気分が沸き立つ。
レイリアの家に寄り、お父上に報告を終えると、レイリア宛に届いた見舞い状を受け取る。
「あぁ、アマンド君。そういえば、注文の品ができたとクレアから連絡があったよ。今日こちらに届けてくれる予定なんだが、どうするかね?」
よかった!間に合った!
「出立前に取りに行きます。」
注文の品を受け取って、コルンの別荘地を目指す。
そしてようやく…
到着して馬車を降りると、リアが待っていてくれた。
「おかえりなさいませ、アマンド様」
茜空の下、茜色の髪のリアが笑顔でそこにいる。
ああ・・・もう。
「ただいま、リア」
早く毎日リアに『おかえり』を言われる生活がしたい‥!
その日の内に、俺はレイリアに説明を終えた。
誘拐犯は俺が以前捕まえた強盗犯が逆恨みしてきたようだと説明すると、「やっぱり騎士様は大変ですね‥」と心配された。
「確かに最近、アマンド様と一緒に行動することが増えてきたから、悪い人にも私が婚約者だと知られてしまったんですね。すみませんでした」と反省すると、「これからは私も周囲に注意して、すぐには捕まらないように気を付けていきます。この腕の怪我が治ったらすぐにでも護衛さんのトレーニングに加わらないと‥!」と明後日の方向で張り切りだした。
レイリアを諫めながら思う。
(俺の婚約者が尊い‥!)
ボートウェル子爵の話の後に、メイベルの話をした。
子爵が有罪となったため、娘のメイベルも表向きは国外追放の刑となったが、寧ろ彼女は喜んで愛する男の下へ旅立っていったと伝える。
「これまで君に勝手を言ってすまなかったと最後に俺に言いに来た。自分は幸せだから、レイリアにも幸せになってほしい、と。」
それをレイリアがそのまま信じたかはわからない。
思いつめたような表情でそれを聴いていたレイリアは「そうですか‥」と頷いた。
レイリアの目が潤んでいる。
あの女がレイリアに与えた苦しみが透けて見えるようで、俺は奥歯を嚙み締めながら微笑んだ。
「色々と振り回されたけれど、やっと終わったんだ。俺は彼女のことは好きではないが、君に幸せになってほしいと願う気持ちだけは一緒だ」
「アマンド様‥」
「王都に戻るまで、リアが元気になれるように楽しいことだけして過ごそう。」
俺が接見を終えた3日後に、メイベル ボートウェルは母親と共に国外に追放された。
その後の行方は誰にも知らされず、一部では「実は運命に出会い幸せに暮らしているらしい」とも噂されたが、真実を確かめた者は誰もいない。
外は月明かりの中、リーリーと虫が鳴く程度で、それ以外は静けさに満ちている。
荒ぶる感情が、静けさと肌寒さで徐々に冷やされていった。
確認だが、と殿下が静かに切り出す。
「さっきの自白で、国外追放よりももっと重い刑にもできるが・・・いいのか?」
俺は首を横に振った。
「それよりも俺は、レイリアの人生から、そして心から、あの女に早く退場してもらうことを望みます。」
例えレイリアに真実を隠し、嘘をつくことになろうとも、その決意は変わらない。
殿下が凪いだ瞳で頷いた。
「私も君と同意見だ。あの誘拐現場に彼女がいたことは、このままレイリアさんには伏せておこう。君たちがコルンにいる間に、彼女は追放する。」
「・・・ありがとうございます」
「拐われた理由は、本人にどう説明する?」
「ボートウェル子爵の関与は伏せて、俺に個人的に恨みを持つ者の犯行ということでレイリアには説明しようと思います。」
「そう、それがいい。こちらのことは気にせず、休暇を楽しんでくるといい」
そこで俺は殿下と別れた。
接見を終えた翌日、寝覚めの悪い朝を迎えたが、ようやく別荘に戻れると思うといくらか気分が沸き立つ。
レイリアの家に寄り、お父上に報告を終えると、レイリア宛に届いた見舞い状を受け取る。
「あぁ、アマンド君。そういえば、注文の品ができたとクレアから連絡があったよ。今日こちらに届けてくれる予定なんだが、どうするかね?」
よかった!間に合った!
「出立前に取りに行きます。」
注文の品を受け取って、コルンの別荘地を目指す。
そしてようやく…
到着して馬車を降りると、リアが待っていてくれた。
「おかえりなさいませ、アマンド様」
茜空の下、茜色の髪のリアが笑顔でそこにいる。
ああ・・・もう。
「ただいま、リア」
早く毎日リアに『おかえり』を言われる生活がしたい‥!
その日の内に、俺はレイリアに説明を終えた。
誘拐犯は俺が以前捕まえた強盗犯が逆恨みしてきたようだと説明すると、「やっぱり騎士様は大変ですね‥」と心配された。
「確かに最近、アマンド様と一緒に行動することが増えてきたから、悪い人にも私が婚約者だと知られてしまったんですね。すみませんでした」と反省すると、「これからは私も周囲に注意して、すぐには捕まらないように気を付けていきます。この腕の怪我が治ったらすぐにでも護衛さんのトレーニングに加わらないと‥!」と明後日の方向で張り切りだした。
レイリアを諫めながら思う。
(俺の婚約者が尊い‥!)
ボートウェル子爵の話の後に、メイベルの話をした。
子爵が有罪となったため、娘のメイベルも表向きは国外追放の刑となったが、寧ろ彼女は喜んで愛する男の下へ旅立っていったと伝える。
「これまで君に勝手を言ってすまなかったと最後に俺に言いに来た。自分は幸せだから、レイリアにも幸せになってほしい、と。」
それをレイリアがそのまま信じたかはわからない。
思いつめたような表情でそれを聴いていたレイリアは「そうですか‥」と頷いた。
レイリアの目が潤んでいる。
あの女がレイリアに与えた苦しみが透けて見えるようで、俺は奥歯を嚙み締めながら微笑んだ。
「色々と振り回されたけれど、やっと終わったんだ。俺は彼女のことは好きではないが、君に幸せになってほしいと願う気持ちだけは一緒だ」
「アマンド様‥」
「王都に戻るまで、リアが元気になれるように楽しいことだけして過ごそう。」
俺が接見を終えた3日後に、メイベル ボートウェルは母親と共に国外に追放された。
その後の行方は誰にも知らされず、一部では「実は運命に出会い幸せに暮らしているらしい」とも噂されたが、真実を確かめた者は誰もいない。
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