大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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規格外のパーティになりそうです

今日はジュディ様にお呼ばれして、パーティーの打ち合わせのためにマルグリット侯爵家へお邪魔している。

「レイリアさん、元気そうで安心したわ!」

わざわざ出迎えてくれたマルグリット侯爵夫人は、打ち合わせに同席するために、今日の予定を空けておいてくれたらしい。

「ご迷惑おかけしますがよろしくお願いします。」

「こちらこそ、ご迷惑じゃなかったかしら?うちは大歓迎なのよ!だってまさか、ジュディが誕生日パーティーを自分から開きたいなんて言うと思わなかったもの・・レイリアさんがうちに来てくれるようになってから、驚かされることばかりよ。ジュディは本当に社交を嫌っていたから。」

ジュディ様は、夏のお茶会を通して慕われたご令嬢たちと、その後もお付き合いを続けているそうだ。

「以前のジュディは思ったことをそのまま言ってしまって遠慮もなかったから、同年代の子からは怖がられてしまっていたの。」

「自分に正直だっただけよ」

「それがようやく、淑女らしく受け答えできるようになったから、私も安心して送り出せるわ。」

「フン、正直に伝えたところでその労力が無駄になるだけと気づいただけよ」

ああ言えばこう言うジュディ様と連れ立って歩きながら、屋敷の中を案内してもらう。




「ここがうちのバンケットホールよ」

藤の花のレリーフが美しい重厚なドアを開くと、そこは王城のホールと見紛うような広さだった。

ホールに降り立つ大階段、その踊り場の壁にある大きなステンドグラスには大きな藤の花が描かれている。

所々に立つ太い円柱にも、シェルタイルが埋め込まれていて、白光りする様は神々しいほどだ。

しばらくぽかんと口を開けて眺めてしまった。

「どう?気に入ってくれたかしら?」

気に入るも何も・・・

「とっても広くて、広すぎて驚いています」

「ここがうちの一番大きなホールなの。今回はジュディの成人のお祝いでもあるし、うちだけじゃなくてレイリアさんの招待客も沢山お招きできるようにここにしたのよ。だからレイリアさんも気兼ねなくご友人を招待してね」

私の友人・知人を手あたり次第招待したとしても、このホールの1/10にも満たないんじゃないだろうか。

「そうしたら早速、ここでお茶をしながら、ホールの飾り付けについて少しお話ししましょう」

テキパキと侍従さん達が大階段の踊り場にお茶の準備をセッティングしてくれて、ホールを見下ろしながらお茶会が始まる。

ゲルトさんがお茶をサーブしてくれる。

「レイリアさんに1つだけお願いがあって・・ホールの中央に飾るオブジェは、ジュディのデビュタントをイメージして白いお花を飾りたいのだけれどいいかしら」

「もちろんです!」

寧ろ私の誕生日は添え物と思って頂いて構わないので!

「ありがとう、レイリアさん。それ以外のホールの飾り付けはあなた達に任せるから、好きなように考えてね。なにか二人で考えていることはあるの?」

ジュディ様は上品にお茶を飲むとカップを置いた。

「会場のカラーは、私とレイリアの色からとって、夕暮れから夜のグラデーションにするつもりよ」

「まぁ、いいわね!太陽の沈む際の艶やかなオレンジ色が、紫の夜空に滲んで夜深くなっていくイメージね!ジュディの成人の意味合いも出せて、とてもいいと思うわ!早速食器を注文しましょう」

え?

「お母さま、シャンパングラスもよ」

「勿論よ。」

え、え?

「まさか、そのためだけに食器を作るんですか・・・!?」

侯爵夫人が振り返った。

「あら、レイリアさんは気にしないでね?これは私の趣味みたいなものだから」

「いえ、だって」

このホールに見合う招待客の人数を考えると、食器の数はものすごいことになる。

「いいのいいの。それにうちが注文がすることで、商人も職人も喜ぶし、ね?そうそう、成人していない子息子女もいらっしゃるから、その方たち用のグラスは形を変えましょう」

「子息子女も楽しめるように、何か催しが欲しいわ」

「そうね、そしたら大道芸でも手配しておきましょう。料理は…」

桁違いの規模の話がどんどん進んでいくので、気を抜くと聞き逃してしまいそうだ。

「さて、次にドレスだけれど、ドレスの形はお揃いにして、色違いにするのはどうかしら」

ハッ!いけない!

私はティーカップを置いて咳払いした。

「そのことなんですが、ドレスはアマンド様が贈ってくれることになっていまして」

ドレスは絶対にアマンド様が準備することを、必ずジュディ様に念押ししておくように、とはアマンド様から課された今日のノルマだ。

「あら、そうなのね」という侯爵夫人に対し、ジュディ様は目つきを鋭くした。

「自分が出席できないからって、あなたの婚約者は随分必死なのね」

「ジュディ?誰のせいだと思っているの。ガーナー卿ばかりか王子殿下も出禁にする令嬢なんてあなた位よ」

「その代わりにお父様からエスコートしてもらう話は引き受けたじゃない」

「当たり前でしょう!成人を迎えるパーティで、あなたがお父様を出禁にしようとしてたから仕方なく譲歩しただけです!全く!あなたの我儘も大概になさい!」

母娘の会話が沸騰しそうな頃合いで、ゲルトさんが声をかけてくれた。

「レイリアお嬢様、キャラメルアップルパイはいかがですか」

「ありがとうございます」

艶々に光る綺麗なパイにフォークを入れる。

パリパリの食感のパイ生地に、ジューシーなアップルコンポートと、とろりと絡まるほろ苦いキャラメルソース。

なんておいしいんだろう。

「ガーナー伯爵令息様が来れないとあっては、レイリア様のエスコートはどなたがなさるんですか?」

「私の方は、弟のカインにお願いするつもりです」

年若い子息子女が集まるのなら、カインもそんなに退屈しないだろうし、彼の社交の練習にもなるだろう。

楽しみですね、とゲルトさんと頷き合っていると、ジュディ様が不服そうな顔を向けた。

「レイリア!ガーナー卿に、ドレスはスペルネ ミハエラのデザイン以外は認めないと伝えて頂戴。私に並ぶのに、変なドレスじゃ困るのよ。」

スペルネ ミハエラと言えば、大人気の一流デザイナーだ。

彼女の予約は1年先まで埋まっていると聞いたことがある。

しかも顧客は王族や高位貴族ばかりだ。

「そんな‥無理ですよジュディ様。今から予約なんてとても‥」

「まぁ、ちょうどよかった!」

侯爵夫人がにこやかに手を合わせた。

「この後スペルネが来るから、来週の予約枠を押さえておきましょう!」

そんなわけでとんとん拍子に話は進み、気づけば翌週にスペルネ ミハエラの予約枠が取れていた。

…自分の誕生パーティでもあるけれども、何もかも、規模が違いすぎやしませんか。

「敵に塩を送るわけだから、感謝してほしいものだわね」

不敵に笑う、やけに満足げなジュディ様に見送られて、私は放心しながら屋敷を後にしたのだった。

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