亜LIVEダンジョン探索記

ウツロうつつ

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第三章 サグルとチユと臆病「治癒師」

第16話 サグルとチユと再開①

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「お、おはよう」
「おはようございます……」

 ミリアが探索者としての覚悟を見せた日の翌日の朝、チームSAGURUTVの二人は宿屋の自室の入り口で挨拶を交わし、いつものように――とはいかずとも共に朝食を摂った後、ギルドまで足を運んで作戦会議を始めた。

「それでサグル君、あのヒーラーの件ですけど、まさかまさか諦めたとは言わせませんよって言ってるぜ兄ちゃん」
「それは当然だよミリアさん。ミリアさんが覚悟を決めたとはいえ、ヒーラー僕らのパーティーに必要不可欠。ポーションの件が解決したとはいえ、彼女の存在は必要だよって言ってるぜ嬢ちゃん」
「それでどうやって勧誘しましょうかって言ってるぜ兄ちゃん」
「それは簡単だよ、要はあのヒーラーさんがオーケーを出してくれれば良いんだから相手が折れるまで何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も頼み込む。名付けて無限三顧の礼作戦さ、って言ってるぜ嬢ちゃん」
「ナルホドそれは良い案ですね。って言ってるぜ兄ちゃん」
「じゃあその作戦でいこうって言ってるぜ嬢ちゃん」
「いい加減にしろ」

 4人ともリリィに殴られた。

「いくら昨日の今日っつったって度が過ぎるんだよアホどもが、会話くらい互いの顔を付き合わせてしやがれってんだ」

「「だってリリィさん……」」
「だってもクソもねぇよ。たかだかキスの一回や二回くらいで」
「「まだ一回です!!」」
「ほ~う一回たあ、お熱い関係になったもんだなぁ」
「「混ぜっ返さないで下さい!!」」
「すまねえ、すまねえ。で、だ。ポーション件は一応解決はしたがあのヒーラーの姉ちゃんを仲間に引き入れるつもりなんだな」
「「はい」」
「だったらこれを持っていきな」

 リリィはそう言ってサグルに一枚のメモ用紙を渡す。

「「これは?」」
「あのヒーラーの姉ちゃんが普段利用している宿屋のの住所だ。そこに向かえば会えるはずだぜ」
「「リリィさん……」」
「それじゃあ早速行ってきな!!」
「「はい!!」」

 そう言ってサグルとミリアは二人そろってギルドを後にする。そしてリリィはそんな二人を見て独りごちる

「あの二人は本当にキスで止まってんだよな?」

――――

「で、私に何か用かしら」

 あからさまに不機嫌な様子で対応をする件のヒーラー。今日はオフの日だと予想されるのに相変わらずトレードマークの赤いローブを着ている。

「ちょっとお話がありまして」

 それまでの苦笑いで対応していたサグルを退けてズイと前に出るミリア。つつかれても痛いところが無くなったミリアは自信に満ち溢れている。

「話?パーティー加入の件なら昨日断ったはずだけど」
「フッフッフ」

スパリと斬り捨てようとするヒーラーにミリアは不適な笑みで返す。するとそんなミリアの態度から何かを察した件のヒーラーは

「まさか貴女」

と、戦慄する。
 ミリアはおもむろに懐からポーションの入った薬ビンを取り出し、その蓋を親指を弾いて開ける。

「ちょっとミリアさん。俺、何も聞いてない!?」

 そんなミリアの態度にサグルは何かを察して逃げようとするが、ミリアはサグルの首根っこを片手で素早く捕まえて捕獲。逆の手で持った薬ビンからポーションを大量に口に含ませると。手に持っていた薬ビンを捨てる。そして、サグルの頬を両手でホールドするとサグルの唇の上から覆い被せるように自身の唇を重ねてそのまま口内のポーションをサグルに口移しで飲ませた。

「な、ちょ、え!?」

 突然口移し行為を見せられた件のヒーラーはドン引きしつつもミリアたちから目が離せない。
 そしてミリアが口内に入ったポーションを全てサグルに飲ませ終えると、ゆっくりとその唇を離して勝ち誇った顔で件のヒーラーのことを見る。

「どうです。これが私の覚悟です!!」
「貴女たち馬鹿じゃないの!?」
「馬鹿とはなんです馬鹿とは!!」
「これを馬鹿と言わないで何て言うのよ!」
「だけど私はちゃんと覚悟を見せました。だから貴女も私たちのパーティーに入って下さい!!」
「はあ!?確かに私は貴女たちのパーティーに誘われて断ったけど、それと貴女が彼とキスをすることに何の関係があるのよ!」
「キ、キスじゃありませんこれは正当な口移し行為です。それに貴女は私たちのパーティーの誘いを論外と言っただけです。つまり私たちはまだパーティーの誘いを断られてはいない!それに私たちはもう貴女の言う論外のパーティーじゃありません。だから……だからせめて話くらいは聞いて下さい!!」

 そう言って頭を下げるミリア。そこにはミリアの不器用なりの真剣な思いが込められていた。
 そんなミリアの様子を見た件のヒーラーはしばらく黙り込み、やがて長いため息と共に口を開いた。

「わかったわ、話を聞いてあげる」
「あ、ありが――」

「ただし」ミリアの言葉を遮った上で件のヒーラーは言う。

「これは結果のわかりきった交渉よ。それでも良いって言うのなら――」
「わかりました!!」

 今度はミリアが件のヒーラーの言葉を遮るように食い気味に言った。

 サグルにたち三人は件のヒーラーが宿泊している宿屋の食堂の席を借りてそれぞれが席に着くと早速サグルが口を開いた。

「早速なんですけどヒーラーさん」
「何よ」
「まず貴女のお名前を聞かせてはもらえないでしょうか?」
「嫌」
「それはまたなぜ」
「私は自分の名前は信用できる人にしか教えてないの。だからヒーラーでも何でも好きに呼ぶといいわ」
「そうですか……ではヒーラーさん」
「何よ」
「うちのパーティーに入って下さい!!」
「嫌」
「理由をうかがっても?」

 サグルの問いに件のヒーラーは短いため息と共に口を開く。

「確かに貴方たちは私の言った探索者の覚悟に一つの正解を出したわ。だけどそれと私が貴女たちのパーティーに加入することとは別の話。私は元より誰かのパーティーに入るつもりはないの。だから貴方たちが私をどんなに勧誘しても無駄なのよ」
「なぜパーティーに入るつもりがないのですか?」

 サグルが続けざまに質問すると、件のヒーラーは自嘲するように「フッ」と鼻で笑う。

「簡単な話よ私は貴方たち普通の探索者のと違って命を削ってまで一山当てようだとか、ダンジョンを攻略しようだとかそんな野心が元々ないのよ。それに私は稼ぎだけなら辻ヒーラーでも十分にやっていける。だからパーティーにパーティーに入るつもりなんてさらさらないの」

 そう言いきる件のヒーラーにサグルはなにも言えない。だがミリアは違った。

「それは嘘です」
「何を根拠に」

 言いきるミリアを馬鹿にするように言う件のヒーラー。しかし、ミリアはそんなあからさまな態度を取るヒーラーに対して怒りを見せることはなかった。

「そんなものはありません。けど、私は知ってるんですこの世界にいる探索者は理由は様々ではありますけど皆ダンジョンの最奥を目指しているって。だから貴女もきっと――」
「私も理由を隠しながらダンジョンの最奥を目指しているはずだってこと?馬鹿馬鹿しいそんなわけないじゃない」

 ミリアの決めつけるような物言いに対して怒りを見せる件のヒーラー

「もういいでしょう。私は自室に戻らせてもらうわ」

 件のヒーラーがそう言って席を立ったその時であった。サグルの下からの視点から件のヒーラーの顔がわずかに見えたのだ。すると、サグルは「あ!!」と大きな声を出して立ち上がり、テーブル越しに件のヒーラーに手を伸ばす。

「ちょっとすみません」

 ふいを突かれた件のヒーラーはサグルの成すがまま被っていたフードを脱がされる。するとフードの中からサグルがいつぞやに街路でぶつかった赤髪ショートカットの眼鏡美人が現れたのだった。
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