亜LIVEダンジョン探索記

ウツロうつつ

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第三章 サグルとチユと臆病「治癒師」

第17話 サグルとチユと再会②

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「やっぱりだオレだよオレオレ」

 サグルは素顔を見せた件のヒーラーに心当たりがあるのか自身の顔を指差してアピール。しかし、件のヒーラーはそんなことを言われてもといった感じで困惑している。

「サグル君それじゃあオレオレ詐欺の謳い文句ですよ」
「え、そう?」
「そうです。相手に思い出してほしいことがあるのなら情報をしっかりと出さないと思い出したくても思い出せませんよ」
「そっか……」

 言ってサグルは腕を組んで考え込み「そうだ!」と何かを思い出す素振りをする。

「チーちゃんだよチーちゃん。確か君の名前は平井チユ。そんでもって俺は君のことをチーちゃんって呼んでたんだ」

 サグルの言葉に件のヒーラーは驚きを隠せない

「確かに私の名前はチユだけど……貴方の名前は確か――」
「サグルだよ、虎穴探」
「探……もしかしてサッ君?」

 件のヒーラー――チユの言葉に顔を明るくするサグル。

「そうだよチーちゃん!!」

 心から嬉しそうにチユの両手を握るサグル。

「ビックリしたよ、チーちゃんとこんな所で再会出来るなんて」
「私も驚いたわよ、というかサッ君10年も前のこと良く覚えていたわね」
「え?もうそんなに経つっけ?」
「ええ、私がこの世界に来てから10年経つのだもの年は間違えてないはずよ」
「10年前ってチーちゃんでも10歳じゃないか、そんな頃からダンジョンの探索者をしてるなんて……」
「私は良いのよこの世界にだって自分で望んで来たのだから」
「でも、10歳の女の子にはこの世界は厳しすぎやしないかな?」
「あら、意外とそうでもないのよ。この世界にも孤児院はあるし、探索者としても前衛は無理でも後衛やサポーターなら役割を持てる。知ってるサッ君この世界の子供たちは下手をしたら貴方たちよりも強いのよ」

 そう言って笑顔を見せるチユにサグルは苦笑い。

「でも、親御さんとかの説得とかは大変じゃなかったのですか?」

 ミリアが素朴な疑問を口にする。確かに前の世界では15歳未満の者がこの世界に来るには保護者の承認がいるとされている。

「ねぇ、貴女」
「ミリアです。チユさん」
「それじゃあミリアさん。貴女この世界の女神に会ったことはあるのかしら?」
「それは当然です」
「だったらおかしいと思わない?あの女神が15歳未満の子供だけを特別扱いすると思う?」
「それは……確かに。あの性悪女が子供だけを特別扱いするとはとても……」
「思えないわよね。15歳未満の者に課せられたそのルールはあちらの世界の大人が勝手に決めたことなのだから……ごく稀にだけど私のような例外の探索者だってするのよ」
「なるほどそう言う訳なのですね」
「でも、その女神のお陰でチーちゃんと再会できた。それだけは感謝してもいいかな」
「ええ、それは私も同感よ」
「それでさ、チーちゃん改めてお願いなんだけど……」
「パーティー加入の件かしら?」
「うん、俺たちのパーティーのヒーラー役、お願い出来ないかな?」
「……」

 チユはなんとも難しい顔をするばかりで何も答えない。

「チーちゃん?」
「ごめんなさいサッ君、私、貴方の期待に答えられない」
「どうして……」
「私はね、ヒーラー、治癒師としてどうしても不適任な欠点があるのよ」
「そんなの、俺は気にしないよ」
「サッ君は昔から優しいもんね。でも、それだと私が納得出来ないの」
「じゃあ一体どんな欠点がチーちゃんにあるのさ?」
「それは……」
「言いにくいことなのはわかってる。だけど俺はそれを聞かないと引き下がれない」

 サグルがそう言うと、しばらくの沈黙が辺りを包み込んだ。そしてチユが絞り出すように言葉にする。

「怖いのよ」
「怖いって何が?」
「良いサッ君。ヒーラーって言ったらパーティーの生命線よ。ヒーラーの行動次第で戦線維持だけでなくパーティーメンバーの生死にだって関わる重要なJobなの――」
「そんなのタンク――」

 割って入ろうとしたミリアをサグルはミリアの口を押さえる形で制止する。

「?」

 頭に疑問符を浮かべてサグルたちを見るチユにサグルは掌を見せて続きを催促。

「だから私、怖いのよ。私の行動次第でパーティーメンバー全員を死なせてしまうんじゃないかって。私が死んでしまうことでパーティーメンバーまで道連れにしてしまうんじゃないかって。だから私はね比較的責任の少ない辻ヒーラーをしているの……わかったでしょサッ君、私は貴方のパーティーメンバーに――」

ふさわしくない。チユがそこまで言おうとする前にサグルがチユの言葉を遮るように言う。

「つまりチーちゃんはヒーラーって役割が好きなんだね」
「「は?」」

 サグルの一見何の脈絡もない発言にミリアとチユは思わず声をそろえる。

「だってミリアさんも言っていたんだ。タンクはパーティーの生命線だって。役割は違うけどチーちゃんもヒーラーをパーティーの生命線だって断言してる。これってそれだけその役割のことが好きってことなんじゃないかな」
「かなって、サッ君私の話ちゃんと聞いてたわよね」
「もちろん」
「だったらなんでそう言う結論になるのよ。私はサッ君のパーティーには――」

相応しくない。そんな言葉は

「大丈夫だよ、チーちゃん」

決して言わせない。サグルの瞳には有無を言わせない程の固い意思が込められていた。

「……」
「だから一緒にパーティーを組もう?」
「なんで……」
「?」
「なんでそんなことが言えるのよ!!なんで、臆病なヒーラー失格の治癒師なんかこっちから願い下げだって言ってくれないのよ!!」

 叫ぶように、悲鳴をあげるようにそう言うチユ。

「……簡単だよ」

 涙を流すチユの顔、サグルはそっと指で涙を拭う。

「俺がチーちゃんをどうしても仲間にしたいから、じゃ、駄目かな?」

 言ってサグルは満面の笑みをチユに向ける。

「ホント、サッ君は昔から変わらないね」

 チユはサグルに右手を差し出す。サグルはその手をギュッと優しく握りしめる。
 こうして、チームSAGURU TVに新メンバーとして治癒師のチユが加わったのであった。
 そんな二人の様子を見てミリアが涙ながらに呟く。

「いやーいいものですね昔からの幼馴染み同士が再会するなんてドラマチック過ぎます」
「「え?」」

 サグルとチユがミリアの発言に疑問符を浮かべる。

「え?ってお二人は幼馴染みの関係なんですよね?」
「ああそっか、普通はそう思うよね」
「普通はって何か違う点でもあるのですか?」
「いや、その……チーちゃん代わりに言える?」
「サッ君、こういうことはリーダー自ら言わないといけないと私は思うの」
「ええ……」

 サグルは何か言いずらそうにミリアの方を向くとボソリと

「――です」

 ほぼ聞き取れない声で言う

「え?そんな声じゃ聞き取れませんもっとはっきりと言って下さい」
「元カノです!」
「え」

 サグルの告白に固まるミリア。どうやら脳の処理が追い付いていないらしい

「ミリアさん。おーい」

数秒後、ミリアの時は動き出す

「ええ~!?」

 耳をつんざくミリアの声にサグルとチユは耳を塞ぐ。

「そんな、私ったらてっきり、だ、だけど……ええ……え~!?」

 ミリアは顔を赤くしながら状況の整理を行う

「と、いうことはサグル君がチユさんの元カレでチユさんがサグル君の元カノってことですよね」

「うん」「そうね」

「でも、10年前って言ったらサグル君はまだ小学一年生でチユさんは小学――」
「3年生ね」
「早すぎません?」
「ミリアさん貴女にはまだわからないのかもしれないけれど……恋するのに年齢は関係ないのよ」

 言われたミリアはバッとサグルの方を見るが、サグルはバッとミリアから目をそらす。

「なんでサグル君は目をそらすんですか!!」
「恥ずかしいからに決まってるでしょ!!」
「サッ君、今カノ、元カノがそろって居たたまれないのは分かるけど自分の立場ははっきりさせないといけないわよ」
「ああ、ほら事態が余計にややこしくなった」

 ちなみにではあるがサグルとミリアの関係をチユに説明するのに、更に時間を要することになるのであった。
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