トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

文字の大きさ
19 / 86
第3章~大戦~

第19話 暗殺者――なんか『混沌』の方がキャラ濃くない?

しおりを挟む
「キターーーーー」

 ペインからの作戦決行の合図に、心臓を跳ねさせるマキリ。

 マキリはケイオスの眷属の中でも隠密行動に秀でているのだが、その性格と存在感のなさも相まって、自身の存在を忘れ去られることも多く、今回の作戦を愛しのペインから直接言い渡された際、

「あんた陰キャだから敵にも見つかりにくいっしょ(笑)だから隠れて敵の頭殺してきてよ。いちおー合図もするから、それが作戦決行の合図ってことで。じゃ、ヨロ」

と言われただけ、作戦決行の合図がどんなものであるのかもわからない。正直忘れ去られているものだと思ってた。なんなら暗き星が投擲されるのも知らなかった……

 だが、合図らしきものはあった。愛しのペインタソからのラブコール(死語)マキリは決して忘れ去られてはいなかったことに歓喜、ヤル気全開テンアゲマックスである!!

「セ、セ、拙者一世一代の大勝負。必ずや管理者レイ·アカシャを亡き者にし、愛しのペインタソに勝利を捧げるでゴザル」

 言ってマキリは自信を構成するマナに働きかけ、自身の存在感を極限まで薄くする。ちなみにではあるがマキリの姿は全身黒タイツの顔に仮面を被った成人男性を思い浮かべて頂きたい……そのまんまである。
 
 しかし、この闇の多い宇宙空間において、マキリの全身黒タイツ姿は隠密行動に優れ、本人の「あんまり目立ちたくないでゴザル」という陰キャ然とした嗜好にもかなった完璧な姿なのである。

 マキリはゆっくりと着実に歩を進める。途中何度か『秩序』の兵士の目の前を通り過ぎが、兵士に見つかった様子はない。臭っ腐ってもケイオスの眷属。その実力は確かなものである。

――見つけたでゴザル

 マキリは標的を見つけたことで動揺、自身を構成するマナに揺らぎが生じる。

――まずいでゴザ

 マナの揺らぎは波となり他の者に伝わり、敵に見つかる原因となる。

――無心にゴザル

 マキリは必死に自身のマナの揺らぎを抑え込む。

 マナの揺らぎを抑え込むことに成功したマキリは、標的とその周囲を確認。幸い誰にも気付かれなかったようだ。

――よし、でゴザル

 マキリは心の中でガッツポーズ、レイの元へ歩を進める。そして自身の右手を巨大で鋭利な爪へと変形させる。

――遠い、まだまだでござる

 レイまでの距離約10メートル。マキリは獰猛な四足獣のように身体を丸める。

――まだ、まだでゴザル

 レイまでの距離約7メートル。そのままジリジリと這うように距離を詰める。

――まだでゴザル

 レイまでの距離約5メートル。身を低くして予備動作を無くし、自身の足にマナを集中させ抑え込む。

――今、でゴザ!!

 マキリは抑え込んだマナを一気に解放。肉食獣のようにレイの後方から襲いかかった。タイミングは完璧、攻撃の威力も十分、作戦は成功、マキリは勝利を確信した。

 しかし、マキリは見誤っていた、レイ・アカシャという管理者の実力を。

「ミルストリス」

 レイは自身の護衛の名を呼ぶ。すると、レイの持つ杖から「は~い」と気の抜けた返事が聞こえ、レイの持つ杖がミルストリスに変形した。

「あるじ、かた」

「どうぞ」

 一瞬のやり取りの後、ミルストリスはレイの肩に飛び乗り深くその膝と体を曲げ力を溜める。次の瞬間、ミルストリスはレイの肩を発射台として、後方から襲いかかるマキリを狙って自身を発射させた。

「ずつきみさいる」

 そう名付けられたミルストリスの全身を使った頭突きは、見事マキリにカウンターパンチならぬカウンターヘッドバットとして命中した。

 実のところマキリが潜んでいたことはレイには筒抜けであった。いくらマキリが隠密行動に秀でた獣といっても、相手はマナコントロールレベル上限突破の猛者レイ・アカシャである。レイのマナによる索敵はその範囲は星一つを包み込み、チリ一つの動きを感知する。その上感知対象も自由自在。戦の状況を確認しながらの片手間索敵ですらマキリの動きをしっかりと捉えていた。

 ミルストリスの頭突きミサイルはマキリの腹部をガッチリ捉え、その進行は止まることなく両軍からどんどん遠ざかっていく。

「ちょっと、キミ!!いつまで飛ぶつもりでゴザルか!?」

 両軍からどんどん離れていくことに不安を覚えたマキリは言う

「……なので」

 ミルストリスがマキリの質問に答えるが、上手く伝わらずマキリは「は?」と訊き返した。

「みさいるなので」

 マキリはみさいると言うものの知識など持ち合わせていない。しかし、ミルストリスの平坦な物言いはマキリに悪予感を想起させた。

「ばくはつする」

 次の瞬間、ミルストリスが自身のマナを操り大規模な爆発を起こした。その衝撃は凄まじく、丁度反対側に位置する『混沌』の群れカオスレギオンの端まで届いた。

「ミルス屋~」

 なぜかレイは急にそう言わずにはいられなかった。ミルストリスの後、宇宙にはミルストリスとマキリの顔が花火のように見事に咲いていた。

「マキリーーー!!」

 ペインが見事に花と散ったマキリの名を叫ぶ。その叫びがマキリに届いていたのか、花火となって咲いたマキリの顔は、どこか満足した様子の穏やかな笑顔であった。

 ガクリと肩を落とすペイン。適当な思いつきの作戦であったとはいえ、それなりに自信は持っていた。それが失敗したのだ。ペインはそれなりにショックを受けていた。なのに、

「んだよペイン。手前ぇだって失敗してんじゃねぇかよ」

ケイオスのデリカシーのない発言に、ペインの中の何かが切れた。

「あたしの崇高な作戦とボッスーのてきとーな作戦を一緒にすんな!!ボケ!アホ!カス!この甲斐性なし!!」

 ペインは駄々っ子のようにケイオスに詰め寄り、ポカポカとケイオスの叩く。叩かれているケイオスはペインの普段見せない姿に、

「わりぃ、悪かったって!ほら、謝ってんだろうが」

と困り果てていた。やがてペインは落ち着いたのかケイオスを叩くのを止め、

「それで――」

と言うがケイオスに上手く伝わず「ん?」と返される。

「それで次!!」

 涙目になりながらケイオスのことを睨むペイン。自分が先に失敗したのだから次の手はお前が考えろ、と言外に言っている。その言外の言葉がケイオスに伝わったのか、伝わらなかったのか、ケイオスは「あ~」と言いながら頭を掻いて、

「やっぱらしくねぇな」

と独り言、

「突撃、だな」

と邪悪に笑った。ペインは自身の耳を疑った。それを察したのかケイオスは説明する。

「やっぱよー俺たちって混沌じゃねえか、それなのに作戦って……バカじゃねぇか!?混沌が何真面目に作戦なんか立ててんだって!そりゃ失敗するわ!!」

 これまでの自分を嗤うように言うケイオス。そして、

「『混沌』なら戦い方も混沌にってな!!伝えろペインこれが最後の命令だ」

そう高らかに宣言し、

『混沌』の群れカオスレギオン全獣に命令する!!好きに暴れろ!!後先なんか考えんな!!祭りだ戦い祭り食い放題の収穫祭だ!!」

 ペインは喜ぶ、これこそがケイオスだと、これこそが混沌だと。

「あいさボッスー!!」 

 ペインはすぐさま伝令役の獣に伝達、ケイオスの命令が全獣に伝えられると群れの各所で雄叫びがあがる。
 
 当然、その雄叫びは『秩序』の軍勢フォースオブコスモス全軍にも届き『秩序』の軍勢フォースオブコスモスは警戒を強めた。

 そして『秩序』の軍勢フォースオブコスモス『混沌』の群れカオスレギオン、全軍の衝突が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...