トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

文字の大きさ
21 / 86
第3章~大戦~

第21話 戦士長ーーメルリリスって名前かなり好き

しおりを挟む
――なんだこいつは
 
 それがメルリリスがケイオスに抱いた最初の感想であった。

 先程受け止めた一撃の威力もさることながら、個体としてのマナ保有量の底が見えない。レイの言ではマナ生命体は600前に誕生した生命だ。魂の特性上、マナは多くとも600年の量のはず、『秩序』に所属する兵たちは、レイの教えによって経年で取得出来るマナよりも多くのマナを保有しているが、しかし、この獣がその教えを知っていると仮定したとしても異常な量のマナを保有している。

「あんた、いったいどれだけの同族を喰ったのよ」

 メルリリスが率直に訊く。すると、ケイオスはつまらないことを訊くなといった風に、

「あ?知らねぇよそんなもん。エサなんて喰えて愉しけりゃそれでよし。いちいち数なんて数え―――おわ!?」

 メルリリスによる惑星砕きの一撃。しかしそれはケイオスを黙らせるためのテレフォンパンチ。たとえ不意打ちであろうと避けようと思えば避けられる一撃。案の定、ケイオスは驚きながらも避けて見せる。

「いきなり何すんだ手前ぇ!」

 ケイオスがそう言うと、メルリリスはケイオスに惑星砕きの先端を突きつける。メルリリスは感じたのだ。何を、ケイオスの底の見えないマナ保有量以上の何か、不自然で、歪な存在感を。

 だから突きつけたのだ。それ以上近づくなと、自分に触れようとするな、と。

 ケイオスは感じとる。こいつは今、自分に恐怖したと。ならばやることは一つ。

 ピトリ

 ケイオスが惑星砕きに触れた。瞬間、ケイオスとメルリリスの戦いの火蓋が切られた。

 メルリリスはケイオスが惑星砕きに触れるや否や、惑星砕きを手元に引き寄せ両手持ち、即座に横殴りに惑星砕きを振るう。

 対するケイオスは振るわれた惑星砕きによる一撃を前傾で避けて、そのままメルリリスの方へ疾走し、接近。マナを込めた右のボディーフックを繰り出した。

「おらぁ!!」

 ケイオスの一撃はメルリリスの腹部を直撃。ケイオスは会心の一撃を確信する。が、

「へ?」

 メルリリスに効いた様子はなし、殴った右手を掴まれる。

「ちょ、おい!」

 ケイオスは全力で右手を引くが、全くもってびくともしない。すると、殴った右手を引かれて、ケイオスはガクリと前屈み、同時にメルリリスの膝蹴りがケイオスの腹部に突き刺さる。

「ぐえっ!!」

 腹部に強烈な一撃を喰らったケイオスは、前屈みになり、強烈な不快感と痺れを感じて大きな隙をさらしてしまう。

「なん、だ……これぇ!?」

 経験のない不快感に戸惑うケイオス。当然その隙をメルリリスは逃さない。

「どおっ、せいやああああああ!!」

 怒号と共に放たれる惑星砕きによる必殺の一撃。その一撃はケイオスをこれ以上ないほど見事に捉え、振り抜かれた。

 ケイオスはゴルフボールのように宇宙の彼方に飛んでいく。

「きゃははははは、だっせーボッスー吹っ飛ばされてやんの」

 ペインは打ち飛ばされたケイオスを嗤う。

「あんた、あいつの仲間じゃないの?」

「仲間だよ、それが何か?」

「『混沌』ってのは仲間がやられてもそれを嗤う奴らなの?」

「うん、そだよ」

 悪びれた様子もなくそう言うペインに、メルリリスは怒りをあらわにする。

「あんたたちにとって仲間ってのは何なわけ?」

 言われてペインは胡座をかいて考え込む。そういや今の今まで考えてみたこともなかったと。

「ん~なんだろね~」

 ペインの思考を放棄したような物言いに、メルリリスは怒りを通り越して唖然とし、やがて思い直す。『混沌』とはこういう奴らなのだと、こうだから『混沌』なのだと

「でもさ~」ペインが突然、前置いて、

「いいのあんた?」

そう訊いた。

「なにが?」

 メルリリスはペインの言葉の意図がわからず聞き返す。すると、ペインはニヤリと意味深に嗤い「だって」と再度前置き、

「まだ…ボッス―との戦闘中、でしょ?」

 言われてメルリリスは背後に気配を感じ、振り向こうとするが首に強い衝撃を感じ完全に振り向くことができなかった。
 
「な……んで」

 お前がそこにいるんだ?そこにいたのはケイオスだった。しかも惑星砕きの一撃などなかったかのようにピンピンしている。

「なんでってお前ぇ、俺があの程度の攻撃でどうにかなると思ってたのかよ」

「な!?」

 メルリリスはショックを受ける。無理もない、自身の最大最強の一撃がその程度呼ばわりされたのだから。

「まあ、あの膝蹴り?にはちょっとビビったけどな」

「ボッス―あの時ぐえっ!!って言ってたもんね、キャハハだっせー」

「うるせぇ!なら手前ぇも受けてみろってんだ」

 ならばもう一発、メルリリスはマナを込めた右拳による一撃を放つも今度はあっさりとケイオスに受け止められてしまう。

「うわっ!!受け止めた手がビリビリしやがる。これってあれだよな、マナの性質変化ってやつ」

 ケイオスの言う通り、ケイオスがメルリリスから喰らった膝蹴りには性質の変化した特殊なマナが込められていた。以前リンネがレイに説明した通り、マナには使用者の意思に呼応してその性質を変化させるという性質があり、またその変化できる性質に限りはない。故にメルリリスはケイオスに膝蹴りを喰らわせた際、強い痺れと不快感を感じるという性質を、マナに付与させていたのだ。

「それが……どうした」

 メルリリスがケイオスを睨みながらそう言うと、ケイオスはニヤリと嗤い

「俺にもできるんだぜ、その性質変化ってやつ」

 言ってケイオスはメルリリスに自身のマナを流し込む。もちろんとある性質を付与させたマナをだ。

「いやああああああ!」

 すると、メルリリスが悲鳴をあげ苦悶の表情で苦しみだす。

「ははっ!苦しいだろ、これ侵蝕って名前つけたんだけどよ、その名前の通り俺のマナが対象のマナを侵蝕してって俺のマナになるってもんでよ。これ喰らったやつはすげえ苦しみだすんだわ、なんにも出来ねえくらいに」
 
 ケイオスはメルリリスの苦悶の表情を見て嗤う。実に愉しそうに、悦に入って。

「でもよー、その無敵の侵蝕にも弱点があってな。一つはこうやって対象に直接触れていないといけねぇこと。そんでもう一つ、これが一番の弱点だな。」
 
 言ってケイオスは一層笑みを深くする。

「相手が死ぬまですんげえ時間がかかるんだわ」

 そう言うケイオスの表情は愉しみに満ちていた。今からお前を苦しみに苦しみぬかせて殺してやる喰ってやると、それが愉しくて愉しくてたまらないと。そういう表情に満ちていた。

 メルリリスは想像を絶する苦しみの中、ケイオスに対する恐怖に抗おうと必死だった。ここで恐怖に負けてはならぬと、体は負けても、精神までは死んでも負けてはやらないと。メルリリスは地獄の苦しみの中でケイオスのことを嗤ってやった。しかし、

「いいね、いいね、いいよお前。最高に混沌だ!!」

 ケイオスは混沌、予想も出来ない出来事を好む傾向にある。それに自身の都合の良し悪しは関係ない。それこそ思い通りにならないことなど最高の愉悦である。
 ケイオスは右手に込めるマナの量をさらに増やす。メルリリスの精神は既に限界を迎えていた。

「そこまでです!!」

 その声に安堵し、メルリリスは意識を手放した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...