52 / 86
第8章~アリア・エクノルエ~
第50話 決断――人生は決断の連続だって言うけど、私的に決めることと決断は全然別物。
しおりを挟む
アリアが御使いであることが判明してから二日後。エクノルエ家の屋敷の庭では新たな御使いの誕生を祝って、エクノルエ領をあげてのパーティーが開催されていた。
「「新たな御使いの誕生を祝って!!」」
パーティー会場のあちらこちらで乾杯の声が聞こえる。ただでさえ娯楽の少ない田舎だ。そんな所に降って湧いた新たな御使いの誕生という一大ニュースは瞬く間に領内全域に広がり、パーティーの参加者は100名を越え、最早パーティーと言うよりは祭りと呼べるほどの規模となっていた(因みに後年になると実際に祭りとなる)
そんな中、現領主であるカルロスはエクノルエ領内の各町村の代表らに囲まれ、祝いの言葉を受けていた。
「いや~誠にめでたい。長男のトリオラ様も来年には王都の学園にご入学が決まり、その上アリア様がまさか御使いであったとは、これでエクノルエ領も安泰ですな」
「いや、まったく」
「本当にめでたい」
村長たちが口々に祝いの言葉をカルロスに送る。送られたカルロスも満更ではない様子で、
「いや~ハッハッハ!」
と酒で頬を赤らめながら上機嫌に笑っていた。
そんな中アリアはというと、祝いの会場の奥に設けられた主役席に赤いドレスを着飾って行儀良く座っていた。
会場を盛り上げるために呼ばれた旅芸人の一座の一人であるクラウンの仮面を着けた道化師が、アリアの目の前でジャグリングや玉乗り等の大道芸を披露する。
「すごいすごい!!」
そんな道化師の芸を見ても、手を叩いて喜ぶアリア。そんなアリアの反応に気を良くしたのか、道化師は次々と芸を披露しなが、段々とアリアに近づいて行く、しかし、祝いの席と言うこともあってか、その事を注意するしたり、気に止める者はほとんどいなかった。そう、ほとんど……
「おい、おい!おいってば、座長!!」
旅芸人の一座の別の人間が一座の座長に向かって声をかける。
「なんだよ、こっちは今、忙しいんだ!!」
演目の進行表とにらめっこしていた座長が面倒くさそうに言う。
「でも、座長!」
それでもしつこく座長のことを呼ぶ座員。
「一体なんだってんだ!!」
座長は腹立たし気に進行表から目を離し、座員を見る。
「ほら、あっちあっち」
座員はアリアの近くで芸をする道化師わ指差した。
「まったく、こっちはただでさえ忙しいってのに」
ぶつくさと文句を言いながら座員の指差す道化師を見る座長。すると、
「んん?」
と怪訝な顔をする。
「でしょ!でしょ!!」
と座員は座長に同意を求める。
「うちにあんな奴いたか?」
アリアの前で芸を行っていた道化師は、既にアリアの目の前まで迫っていた。しかし、それを咎める者はなし。すると、その道化師はアリアに一つの飴玉をまるでその飴玉が貴重な献上品であるように恭しく両手で差し出した。
「いいの?」
アリアが瞳を輝かせて言う。それに対して道化師は言葉を発することはせず、その代わりにボディランゲージでどうぞ、とアリアに飴玉を差し出す。するとアリアは道化師差し出した飴玉を手に取ろうとして、その手を止めた。道化師はしゃべらないその代わりに首を傾げてみせた。
アリアも一応は貴族の娘、普段より知らない人から食べ物を貰ったり、ついていったりするなと躾られていたのだ。しかし、アリアはまだ7歳目の前にある魅力的な飴玉の魔力に勝てるはずもなく
「ありがとう」
そう言って飴玉を手に取り口の中に放り込む。当然この時アリア周囲には護衛の兵士やメノアがいたのだが、なぜかその時だけ客人に話しかけられたり、トラブルが発生したりと全員が全員アリアから目を離すよう誘導されていた。
アリアが飴玉を口の中に入れたことを確認した道化師は、踊りながらアリアから離れていき、やがてパーティー会場から姿を消した。
そして数分後、最初にアリアの異変に気が付いたのはアリアの母メノアであった。
「アリア、どうかしたの?」
アリアの顔は熱を帯びて赤くなり、目も虚ろで焦点が合わない。
「アリア!アリア!!」
アリアの異常に気付いたメノアはアリアの名を何度も呼ぶが、アリアからの反応は返ってこない。その異変に周りの者も気が付いたのかパーティー会場の視線がアリアの方に集まってゆく。
「アリアがどうかしたのか?」
異変に気が付いたカルロスは、メノアとアリアの元までやって来る。
「あなた!アリアが、アリアが返事をしないの!!」
メノアがカルロスに助けを求める。
「アリア、しっかりしなさい、アリア!!」
アリアからの返事はない。そしてアリアは崩れ落ちるようにその意識を落とした。
―――管理者部屋
「おいおいレイ君、アリアちゃん流石にヤバくないかい?」
「おそらく先程アリアが食べた飴玉、あれに毒が仕込まれていたのでしょう」
「どうするの?助ける?」
リンネの問いにレイは迷う。今アリアを助けて良いものかと。ここでアリアを助けることは簡単だ。しかし、その後ことを考えれば――管理者たるレイ、地球人類の言う主が、アリアのことを直接、間接を問わずに助けたという事実は、アリアに何らかの影響を及ぼすだろう。それこそ最悪、エルバとラルゴ兄弟の事件の再来ともなりかねない。
その時になってまた自分は後悔するのか。そんなことは二度としたくはない。しかし――
「レイ君!!」
レイはリンネの声にハッとする。そして見る。リンネの目を迷うくらいなら早く助けろ。彼女の目はそう言っているように見えた。それとも彼女の目に写る自身がそう言っているのか。
レイは管理者部屋の窓に映るアリアを見る。レイが迷っている間にも飴玉の毒はアリアを蝕み彼女の美しかった金髪を白く、その澄んだ青色の瞳を血のような赤色に変容させていた。
「レイ君!!」
リンネの何度目かの呼びかけ、もう時間はあまり残されていないだろう。決断の時は今しかない。
「決めました」
レイは覚悟を決めた。彼女を救い共に歩む覚悟を……
「アリアを僕の眷属にします!!」
リンネは何も言わず、真剣な表情でただ一度コクリと頷いた。
「時間がありません。早速アリアの元に向かいましょう」
レイがそう言うとリンネが再度コクリと頷く。そしてレイは管理者ウィンドウを操作し『顕現』の権能を使用、発動させた。
「「新たな御使いの誕生を祝って!!」」
パーティー会場のあちらこちらで乾杯の声が聞こえる。ただでさえ娯楽の少ない田舎だ。そんな所に降って湧いた新たな御使いの誕生という一大ニュースは瞬く間に領内全域に広がり、パーティーの参加者は100名を越え、最早パーティーと言うよりは祭りと呼べるほどの規模となっていた(因みに後年になると実際に祭りとなる)
そんな中、現領主であるカルロスはエクノルエ領内の各町村の代表らに囲まれ、祝いの言葉を受けていた。
「いや~誠にめでたい。長男のトリオラ様も来年には王都の学園にご入学が決まり、その上アリア様がまさか御使いであったとは、これでエクノルエ領も安泰ですな」
「いや、まったく」
「本当にめでたい」
村長たちが口々に祝いの言葉をカルロスに送る。送られたカルロスも満更ではない様子で、
「いや~ハッハッハ!」
と酒で頬を赤らめながら上機嫌に笑っていた。
そんな中アリアはというと、祝いの会場の奥に設けられた主役席に赤いドレスを着飾って行儀良く座っていた。
会場を盛り上げるために呼ばれた旅芸人の一座の一人であるクラウンの仮面を着けた道化師が、アリアの目の前でジャグリングや玉乗り等の大道芸を披露する。
「すごいすごい!!」
そんな道化師の芸を見ても、手を叩いて喜ぶアリア。そんなアリアの反応に気を良くしたのか、道化師は次々と芸を披露しなが、段々とアリアに近づいて行く、しかし、祝いの席と言うこともあってか、その事を注意するしたり、気に止める者はほとんどいなかった。そう、ほとんど……
「おい、おい!おいってば、座長!!」
旅芸人の一座の別の人間が一座の座長に向かって声をかける。
「なんだよ、こっちは今、忙しいんだ!!」
演目の進行表とにらめっこしていた座長が面倒くさそうに言う。
「でも、座長!」
それでもしつこく座長のことを呼ぶ座員。
「一体なんだってんだ!!」
座長は腹立たし気に進行表から目を離し、座員を見る。
「ほら、あっちあっち」
座員はアリアの近くで芸をする道化師わ指差した。
「まったく、こっちはただでさえ忙しいってのに」
ぶつくさと文句を言いながら座員の指差す道化師を見る座長。すると、
「んん?」
と怪訝な顔をする。
「でしょ!でしょ!!」
と座員は座長に同意を求める。
「うちにあんな奴いたか?」
アリアの前で芸を行っていた道化師は、既にアリアの目の前まで迫っていた。しかし、それを咎める者はなし。すると、その道化師はアリアに一つの飴玉をまるでその飴玉が貴重な献上品であるように恭しく両手で差し出した。
「いいの?」
アリアが瞳を輝かせて言う。それに対して道化師は言葉を発することはせず、その代わりにボディランゲージでどうぞ、とアリアに飴玉を差し出す。するとアリアは道化師差し出した飴玉を手に取ろうとして、その手を止めた。道化師はしゃべらないその代わりに首を傾げてみせた。
アリアも一応は貴族の娘、普段より知らない人から食べ物を貰ったり、ついていったりするなと躾られていたのだ。しかし、アリアはまだ7歳目の前にある魅力的な飴玉の魔力に勝てるはずもなく
「ありがとう」
そう言って飴玉を手に取り口の中に放り込む。当然この時アリア周囲には護衛の兵士やメノアがいたのだが、なぜかその時だけ客人に話しかけられたり、トラブルが発生したりと全員が全員アリアから目を離すよう誘導されていた。
アリアが飴玉を口の中に入れたことを確認した道化師は、踊りながらアリアから離れていき、やがてパーティー会場から姿を消した。
そして数分後、最初にアリアの異変に気が付いたのはアリアの母メノアであった。
「アリア、どうかしたの?」
アリアの顔は熱を帯びて赤くなり、目も虚ろで焦点が合わない。
「アリア!アリア!!」
アリアの異常に気付いたメノアはアリアの名を何度も呼ぶが、アリアからの反応は返ってこない。その異変に周りの者も気が付いたのかパーティー会場の視線がアリアの方に集まってゆく。
「アリアがどうかしたのか?」
異変に気が付いたカルロスは、メノアとアリアの元までやって来る。
「あなた!アリアが、アリアが返事をしないの!!」
メノアがカルロスに助けを求める。
「アリア、しっかりしなさい、アリア!!」
アリアからの返事はない。そしてアリアは崩れ落ちるようにその意識を落とした。
―――管理者部屋
「おいおいレイ君、アリアちゃん流石にヤバくないかい?」
「おそらく先程アリアが食べた飴玉、あれに毒が仕込まれていたのでしょう」
「どうするの?助ける?」
リンネの問いにレイは迷う。今アリアを助けて良いものかと。ここでアリアを助けることは簡単だ。しかし、その後ことを考えれば――管理者たるレイ、地球人類の言う主が、アリアのことを直接、間接を問わずに助けたという事実は、アリアに何らかの影響を及ぼすだろう。それこそ最悪、エルバとラルゴ兄弟の事件の再来ともなりかねない。
その時になってまた自分は後悔するのか。そんなことは二度としたくはない。しかし――
「レイ君!!」
レイはリンネの声にハッとする。そして見る。リンネの目を迷うくらいなら早く助けろ。彼女の目はそう言っているように見えた。それとも彼女の目に写る自身がそう言っているのか。
レイは管理者部屋の窓に映るアリアを見る。レイが迷っている間にも飴玉の毒はアリアを蝕み彼女の美しかった金髪を白く、その澄んだ青色の瞳を血のような赤色に変容させていた。
「レイ君!!」
リンネの何度目かの呼びかけ、もう時間はあまり残されていないだろう。決断の時は今しかない。
「決めました」
レイは覚悟を決めた。彼女を救い共に歩む覚悟を……
「アリアを僕の眷属にします!!」
リンネは何も言わず、真剣な表情でただ一度コクリと頷いた。
「時間がありません。早速アリアの元に向かいましょう」
レイがそう言うとリンネが再度コクリと頷く。そしてレイは管理者ウィンドウを操作し『顕現』の権能を使用、発動させた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
スキル買います
モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる