トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

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第8章~アリア・エクノルエ~

第50話 決断――人生は決断の連続だって言うけど、私的に決めることと決断は全然別物。

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 アリアが御使いであることが判明してから二日後。エクノルエ家の屋敷の庭では新たな御使いの誕生を祝って、エクノルエ領をあげてのパーティーが開催されていた。

「「新たな御使いの誕生を祝って!!」」

 パーティー会場のあちらこちらで乾杯の声が聞こえる。ただでさえ娯楽の少ない田舎だ。そんな所に降って湧いた新たな御使いの誕生という一大ニュースは瞬く間に領内全域に広がり、パーティーの参加者は100名を越え、最早パーティーと言うよりは祭りと呼べるほどの規模となっていた(因みに後年になると実際に祭りとなる)

 そんな中、現領主であるカルロスはエクノルエ領内の各町村の代表らに囲まれ、祝いの言葉を受けていた。

「いや~誠にめでたい。長男のトリオラ様も来年には王都の学園にご入学が決まり、その上アリア様がまさか御使いであったとは、これでエクノルエ領も安泰ですな」

「いや、まったく」

「本当にめでたい」

 村長たちが口々に祝いの言葉をカルロスに送る。送られたカルロスも満更ではない様子で、

「いや~ハッハッハ!」

と酒で頬を赤らめながら上機嫌に笑っていた。
 
 そんな中アリアはというと、祝いの会場の奥に設けられた主役席に赤いドレスを着飾って行儀良く座っていた。

 会場を盛り上げるために呼ばれた旅芸人の一座の一人であるクラウンの仮面を着けた道化師が、アリアの目の前でジャグリングや玉乗り等の大道芸を披露する。

「すごいすごい!!」

 そんな道化師の芸を見ても、手を叩いて喜ぶアリア。そんなアリアの反応に気を良くしたのか、道化師は次々と芸を披露しなが、段々とアリアに近づいて行く、しかし、祝いの席と言うこともあってか、その事を注意するしたり、気に止める者はほとんどいなかった。そう、ほとんど……

「おい、おい!おいってば、座長!!」

 旅芸人の一座の別の人間が一座の座長に向かって声をかける。

「なんだよ、こっちは今、忙しいんだ!!」

 演目の進行表とにらめっこしていた座長が面倒くさそうに言う。

「でも、座長!」

 それでもしつこく座長のことを呼ぶ座員。

「一体なんだってんだ!!」

 座長は腹立たし気に進行表から目を離し、座員を見る。

「ほら、あっちあっち」

 座員はアリアの近くで芸をする道化師わ指差した。

「まったく、こっちはただでさえ忙しいってのに」

 ぶつくさと文句を言いながら座員の指差す道化師を見る座長。すると、

「んん?」

と怪訝な顔をする。

「でしょ!でしょ!!」

 と座員は座長に同意を求める。

「うちにあんな奴いたか?」

 アリアの前で芸を行っていた道化師は、既にアリアの目の前まで迫っていた。しかし、それを咎める者はなし。すると、その道化師はアリアに一つの飴玉をまるでその飴玉が貴重な献上品であるように恭しく両手で差し出した。

「いいの?」

 アリアが瞳を輝かせて言う。それに対して道化師は言葉を発することはせず、その代わりにボディランゲージでどうぞ、とアリアに飴玉を差し出す。するとアリアは道化師差し出した飴玉を手に取ろうとして、その手を止めた。道化師はしゃべらないその代わりに首を傾げてみせた。

 アリアも一応は貴族の娘、普段より知らない人から食べ物を貰ったり、ついていったりするなと躾られていたのだ。しかし、アリアはまだ7歳目の前にあるに勝てるはずもなく

「ありがとう」

 そう言って飴玉を手に取り口の中に放り込む。当然この時アリア周囲には護衛の兵士やメノアがいたのだが、なぜかその時だけ客人に話しかけられたり、トラブルが発生したりと全員が全員アリアから目を離すよう誘導されていた。

 アリアが飴玉を口の中に入れたことを確認した道化師は、踊りながらアリアから離れていき、やがてパーティー会場から姿を消した。

 そして数分後、最初にアリアの異変に気が付いたのはアリアの母メノアであった。

 「アリア、どうかしたの?」

 アリアの顔は熱を帯びて赤くなり、目も虚ろで焦点が合わない。

 「アリア!アリア!!」

 アリアの異常に気付いたメノアはアリアの名を何度も呼ぶが、アリアからの反応は返ってこない。その異変に周りの者も気が付いたのかパーティー会場の視線がアリアの方に集まってゆく。

「アリアがどうかしたのか?」

 異変に気が付いたカルロスは、メノアとアリアの元までやって来る。

「あなた!アリアが、アリアが返事をしないの!!」

 メノアがカルロスに助けを求める。

「アリア、しっかりしなさい、アリア!!」

 アリアからの返事はない。そしてアリアは崩れ落ちるようにその意識を落とした。

―――管理者部屋

「おいおいレイ君、アリアちゃん流石にヤバくないかい?」
「おそらく先程アリアが食べた飴玉、あれに毒が仕込まれていたのでしょう」
「どうするの?助ける?」

 リンネの問いにレイは迷う。今アリアを助けて良いものかと。ここでアリアを助けることは簡単だ。しかし、その後ことを考えれば――管理者たるレイ、地球人類の言う主が、アリアのことを直接、間接を問わずに助けたという事実は、アリアに何らかの影響を及ぼすだろう。それこそ最悪、エルバとラルゴ兄弟の事件の再来ともなりかねない。
 その時になってまた自分は後悔するのか。そんなことは二度としたくはない。しかし――

「レイ君!!」

 レイはリンネの声にハッとする。そして見る。リンネの目を迷うくらいなら早く助けろ。彼女の目はそう言っているように見えた。それとも彼女の目に写る自身がそう言っているのか。

 レイは管理者部屋の窓に映るアリアを見る。レイが迷っている間にも飴玉の毒はアリアを蝕み彼女の美しかった金髪を白く、その澄んだ青色の瞳を血のような赤色に変容させていた。

「レイ君!!」

 リンネの何度目かの呼びかけ、もう時間はあまり残されていないだろう。決断の時は今しかない。

「決めました」

 レイは覚悟を決めた。彼女を救い共に歩む覚悟を……

「アリアを僕の眷属にします!!」

 リンネは何も言わず、真剣な表情でただ一度コクリと頷いた。

「時間がありません。早速アリアの元に向かいましょう」

 レイがそう言うとリンネが再度コクリと頷く。そしてレイは管理者ウィンドウを操作し『顕現』の権能を使用、発動させた。
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