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第8章~アリア・エクノルエ~
第51話 眷属―― 一人目
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―――エクノルエ領エクノルエ家の屋敷アリアの部屋
アリアは毒に倒れるとすぐに屋敷内の自室のベットに運ばれ、バロルからの魔法による治療を受けていた。
「私が付いていながら……なんてこと……」
アリアの母のメノアがその目に涙を溜め、自分を責めるように言う。
「メノア、今回の件は決してお前のせいではない。そう自分を責めるな」
カルロスが後ろからメノアの肩に手を置いて言う。
「アリアに飴玉を渡した旅芸人もそうだが、あの時お前に話しかけてきた行商人、どうやら既に姿をくらましているらしい」
「え?」
「それに護衛の兵士に関してもそうだが、トラブルを起こした張本人が見つからなかったらしい」
「それって……」
「してやられた。ということですな」
アリアの治療にあたっていたバロルが忌々しげに言う。
「バロル卿、アリアの容態はどうなんですか?」
バロルは目を伏せて首を横に振る。するとメノアが泣き崩れ、カルロスは犯人への怒りと、何も出来ない自身の不甲斐なさにその身を震わせる。
「手は尽くしました。しかし、アリアさんに使われた毒が特殊なものでして――魔法毒と言えばわかりますかな?」
「魔法毒――魔力にありとあらゆる毒の特性を付与した魔法による毒」
カルロスが言う。
「その通り、きっとその毒を飴玉に魔法付与したのでしょう。非常に手の込まれた手段です。これは一朝一夕で出来ることではありません。おそらく犯人は――」
「――ドルヘルの手の者」
カルロスがそう言うと、バロルは頷き、
「そう考えるのが妥当でしょう」
と言う。
「しかし、アリアが御使いだと判明したのはたったの二日前ですよ。いくらドルヘルといえども、そんなに早く刺客を差し向けられるものでしょうか?」
「難しいですが不可能ではありません」
「一体どうやって」
「私の後をつけてくれば良いのです。私は聖王陛下から御使いの捜索の任を仰せつかっています。当然、その任は他国の者に知られないよう極力秘密裏に行っているのですが、長期的に辛抱強く、私に気付かれないように私の動きを追っていれば自ずと私の行動の意味も見えてくるというものです」
そこまで言ってバロルはカルロスたちに向かって深く頭を下げる。
「バロル卿何を!!」
「謝って済む問題ではないとはいえ、謝らなければ私の気が済みません。私とて敵の追跡には十分気を付けていたつもりでした。しかし、結果がそうとは言わなかった。本当に申し訳ない」
悔しそうに懺悔するようにバロルは言う。
その時だった。アリアの部屋を眩い光が包み込む。
「な、なんだ!?」
予期しない出来事にあわてふためく3人。そんな中、レイとリンネの二人がアリアの部屋に『顕現』する。
「リンネ、僕は『眷属化』の権能を使用しますのでアリアの解毒をお願いします」
「りょーかい!」
時間がない。早速作業に取りかかる二人。この時の二人の姿は、眩い光によってカルロスらに見られることは無かった。
レイは管理者ウィンドウを操作して『眷属化』の権能を使用する。その対象は勿論アリアだ。すると、管理者ウィンドウに『眷属紋を対象に刻んでください』と表示される。
「リンネ『眷属紋』とは一体何ですか?」
時間がない、レイは焦りながらアリアの治療をするリンネに訊く。リンネもアリアの治療を休めることなく答える。
「簡単に言うとしるしだよ。この子はレイ君の眷属だっていうしるし」
「しるし――」
レイは一瞬の逡巡の後、アリアの胸元に眷属紋を刻む。その紋様は百合の花の形をしていた。
「なんでまた百合なのさ?」
リンネが訊く
「なんとなく――直感です」
「フーン」
レイがそう言うと既に治療を終えていたリンネが言う。
「眷属化も解毒も完了したし、後は放っておいても大丈夫でしょ」
「わかりました。それでは管理者部屋に戻るとしましょう」
レイはそう言うと管理者ウィンドウを操作『顕現』の権能をオフにする。
「それではアリア、これからよろしくお願いします」
レイは管理者部屋に戻る直前、アリアに向かってそう言うと、アリアの部屋から姿を消した。するとそれに伴ってアリアの部屋を包んでいた眩い光も消える。
「一体何だったんだ」
カルロスが不思議そうに言う。すると、
「あなた!!」
メノアの驚きの声が聞こえる。
「どうした!何かあったのか!?」
「それが――」
メノアは戸惑いを見せながらアリアのことを見る。カルロスはそんなメノアの態度を不思議に思いつつもアリアの方を見る。すると、先程まで苦しみもがいていたアリアが、スヤスヤと安らかな寝息をたてて何もなかったかのように眠っている。
「バロル卿これは?」
言われてバロルは魔力を使用してアリアの体をサーチする。すると、
「信じられない!毒が完全に解毒されている!!」
「本当ですか!!」
カルロスが喜びの声をあげる。
「それにこの紋様……」
バロルはアリアの胸元にある眷属紋を指し示す。
「これは――百合の花、ですかね?」
カルロスが言う
「おそらくはそうでしょう。しかし、こんなもの私は見たことがない」
「一体アリアの身に何が起こったのでしょうか?」
「わかりません。ただこれだけは断言できます」
バロルはそう区切って言う
「神の奇跡が起きたのです」
アリアは毒に倒れるとすぐに屋敷内の自室のベットに運ばれ、バロルからの魔法による治療を受けていた。
「私が付いていながら……なんてこと……」
アリアの母のメノアがその目に涙を溜め、自分を責めるように言う。
「メノア、今回の件は決してお前のせいではない。そう自分を責めるな」
カルロスが後ろからメノアの肩に手を置いて言う。
「アリアに飴玉を渡した旅芸人もそうだが、あの時お前に話しかけてきた行商人、どうやら既に姿をくらましているらしい」
「え?」
「それに護衛の兵士に関してもそうだが、トラブルを起こした張本人が見つからなかったらしい」
「それって……」
「してやられた。ということですな」
アリアの治療にあたっていたバロルが忌々しげに言う。
「バロル卿、アリアの容態はどうなんですか?」
バロルは目を伏せて首を横に振る。するとメノアが泣き崩れ、カルロスは犯人への怒りと、何も出来ない自身の不甲斐なさにその身を震わせる。
「手は尽くしました。しかし、アリアさんに使われた毒が特殊なものでして――魔法毒と言えばわかりますかな?」
「魔法毒――魔力にありとあらゆる毒の特性を付与した魔法による毒」
カルロスが言う。
「その通り、きっとその毒を飴玉に魔法付与したのでしょう。非常に手の込まれた手段です。これは一朝一夕で出来ることではありません。おそらく犯人は――」
「――ドルヘルの手の者」
カルロスがそう言うと、バロルは頷き、
「そう考えるのが妥当でしょう」
と言う。
「しかし、アリアが御使いだと判明したのはたったの二日前ですよ。いくらドルヘルといえども、そんなに早く刺客を差し向けられるものでしょうか?」
「難しいですが不可能ではありません」
「一体どうやって」
「私の後をつけてくれば良いのです。私は聖王陛下から御使いの捜索の任を仰せつかっています。当然、その任は他国の者に知られないよう極力秘密裏に行っているのですが、長期的に辛抱強く、私に気付かれないように私の動きを追っていれば自ずと私の行動の意味も見えてくるというものです」
そこまで言ってバロルはカルロスたちに向かって深く頭を下げる。
「バロル卿何を!!」
「謝って済む問題ではないとはいえ、謝らなければ私の気が済みません。私とて敵の追跡には十分気を付けていたつもりでした。しかし、結果がそうとは言わなかった。本当に申し訳ない」
悔しそうに懺悔するようにバロルは言う。
その時だった。アリアの部屋を眩い光が包み込む。
「な、なんだ!?」
予期しない出来事にあわてふためく3人。そんな中、レイとリンネの二人がアリアの部屋に『顕現』する。
「リンネ、僕は『眷属化』の権能を使用しますのでアリアの解毒をお願いします」
「りょーかい!」
時間がない。早速作業に取りかかる二人。この時の二人の姿は、眩い光によってカルロスらに見られることは無かった。
レイは管理者ウィンドウを操作して『眷属化』の権能を使用する。その対象は勿論アリアだ。すると、管理者ウィンドウに『眷属紋を対象に刻んでください』と表示される。
「リンネ『眷属紋』とは一体何ですか?」
時間がない、レイは焦りながらアリアの治療をするリンネに訊く。リンネもアリアの治療を休めることなく答える。
「簡単に言うとしるしだよ。この子はレイ君の眷属だっていうしるし」
「しるし――」
レイは一瞬の逡巡の後、アリアの胸元に眷属紋を刻む。その紋様は百合の花の形をしていた。
「なんでまた百合なのさ?」
リンネが訊く
「なんとなく――直感です」
「フーン」
レイがそう言うと既に治療を終えていたリンネが言う。
「眷属化も解毒も完了したし、後は放っておいても大丈夫でしょ」
「わかりました。それでは管理者部屋に戻るとしましょう」
レイはそう言うと管理者ウィンドウを操作『顕現』の権能をオフにする。
「それではアリア、これからよろしくお願いします」
レイは管理者部屋に戻る直前、アリアに向かってそう言うと、アリアの部屋から姿を消した。するとそれに伴ってアリアの部屋を包んでいた眩い光も消える。
「一体何だったんだ」
カルロスが不思議そうに言う。すると、
「あなた!!」
メノアの驚きの声が聞こえる。
「どうした!何かあったのか!?」
「それが――」
メノアは戸惑いを見せながらアリアのことを見る。カルロスはそんなメノアの態度を不思議に思いつつもアリアの方を見る。すると、先程まで苦しみもがいていたアリアが、スヤスヤと安らかな寝息をたてて何もなかったかのように眠っている。
「バロル卿これは?」
言われてバロルは魔力を使用してアリアの体をサーチする。すると、
「信じられない!毒が完全に解毒されている!!」
「本当ですか!!」
カルロスが喜びの声をあげる。
「それにこの紋様……」
バロルはアリアの胸元にある眷属紋を指し示す。
「これは――百合の花、ですかね?」
カルロスが言う
「おそらくはそうでしょう。しかし、こんなもの私は見たことがない」
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