トガビト_ワールドクリエイション

ウツロうつつ

文字の大きさ
75 / 86
第10章~モンスターパレード~

第73話 百鬼行進3――本当は百鬼夜行にしたかったんだけど夜行じゃないからね。

しおりを挟む
「え?」

アリアは状況が飲み込めずに立ち尽くす。幸いなことに先程まで周囲にいたモンスターたちは、エクノルエの町方に移動している。ただ、
 ドスンという轟音と地震のような激しい揺れがアリアの周囲で起きていた。どうやらデュオスを潰した巨大な何かはモンスターの足のようである。
 アリアがデュオスのいた。場所を呆然と見ていると、巨大な柱のようなモンスターの足が持ち上がってゆく。それと共に、そのしたにあるモノが見えてくる。
 アリアは見たくないという気持ちがあるにも関わらずその場から目が離せないでいた。そして、

「あ……あぁ……」

 その場にあったモノ――無惨に潰されたデュオスの亡骸を目にしてしまう。
 肉親の死という14歳の少女には耐え難い事実。
 そのショックによりアリアのスイッチが強制的に切り替わる。

「お兄様!!デュオスおにいさま――」

 アリアは大粒の涙を流しその場で泣き崩れてしまう。しかし、そこはまだ巨大なモンスターの足元、危険地帯であることには変わりはない。
 やがてアリアの元にもその巨大な足の影が移動してくる。しかし、アリアは泣き崩れたまま、その場を動こうとはしない。そして、巨大なモンスターの足がアリアを踏み潰す。
 ことにはならなかった。

「アリア!!」

 アリアは名を呼ばれたその呼び主の方を見る。そこにはレイがおり、巨大なモンスターの足を魔力防壁によって防いでいた。

―――時は少し遡り開戦直後。

 レイはその時はまだエクノルエの町の周囲を取り囲む防壁の上でカルロスらと戦況を見ていた。

「これは……話が娘ながら……」

 末恐ろしい。カルロスはそう言いながら、迫り来るモンスターたちを次々と屠るアリアの姿を見ていた。

「父上、それに主よ、アリアの活躍も然ることながら我が軍も素晴らしい活躍を見せていますよ」

 流石メルリリスによる過酷な訓練を耐え抜いてきた兵士たちである。迫り来るモンスターたちに怯むことなく果敢に攻め、エクノルエ軍は優勢にたっていた。

「しかし、アリアは大丈夫でしょうか。あんなに前にでてしま――」

 レイはそこまで言って気づいた。今回のモンスターパレードの原因に。

「何ですかあれは!!」

 レイが驚きと共に指差したその先には山のように巨大な6本足の亀ようなモンスターがいた。

「山喰らいだと!?なぜだ!!エクノルエ周辺は奴の活動範囲外のはずだぞ!!」

 驚愕の表情でカルロスがそう言う。

「まさか、これがドルヘルの仕業だと!?一体どうやって山喰らいを」

 そうトリオラが言うと、カルロスが努めて平静に言う。

「今は方法など考えている場合などではない!!今考えるべきは山喰らいへの対処、どうあれを攻略するかだ!!」

 カルロスの言にトリオラが狼狽しながら言う。

「相手は災害指定のモンスターの一角ですよ!?そんな存在相手に逃げる以外の選択肢が――」

 トリオラはそこまで言って気付いた。あの、生きる災害をどうにか出来うる存在に、それはカルロスもまた同様であった。

「「主よ!!」」

 期せずしてカルロスとトリオラが同時にレイを見て言う。しかし、二人の言わんとすることを理解したレイは首を横に振る。

「僕が今ここにいるのは、貴方たちの味方をするためではありません。それに貴方たちの話を聞く限り、今回のモンスターパレードの原因は他国の工作によるものらしいではないですか。と、なればこれは国対国、人対人の戦いです。そんなことに僕の力を貸すわけにはいきません」

「しかし、それでは我が領民が――」

 トリオラがそこまで言ってカルロスに制される。

「わかりました。それではせめて、我が娘のアリアだけでも助けてはもらえないでしょうか?」

 言われてレイはアリアが戦っていた方を見る。するとそこには、ただ立ち尽くすアリアとアリアを踏み潰そうとする山喰らいの姿があった。

「アリア!!」

 レイはほとんど反射的に転移魔法を使用し、アリアの元へ転移する。防壁の上に立つトリオラと、僅かに口の端しを歪めるカルロスを残して……
 
―――そして現在

 レイは魔力による防壁を展開したまま、山喰らいの足下でアリアの肩を強く揺する。

「アリア!!しっかりしてください!!」

 すると、その瞳を涙で濡らしたアリアが小さく「主様」と言い。

「お兄様が、デュオスお兄様が」

 と、うわごとのように繰り返し、デュオスの亡骸のある場所を指差す。レイは差された方に目をやると、デュオスの無惨な姿を目にし、その悲惨さに思わず目を背けると同時、アリアを強く抱き締めた。

「アリア、大丈夫です。大丈夫ですから」

 一体何が大丈夫であるのか、それはレイにも分からない。ただレイはアリアにかける言葉が見つからず。ただ大丈夫とアリアに言い聞かせ、少しでもアリアを安心させたいという必死な思いがそこにはあった。

「主様ぁ、デュオスお兄様がぁ~」

 そう言いながらレイの腕の中で泣きじゃくるアリアに、レイはなにもすることが出来ず、ただただ強く抱き締めることしか出来ない。しかし、無情にも状況は変わり続ける。
 このまま山喰らいが進行し続ければ、半刻もしない内にエクノルエの町に浸入し、エクノルエの町を壊滅させることだろう。それに山喰らいに追いたてられたモンスターの大群もまだ存在している。それらの対処まで考えると状況は絶望的。それこそ何者かの救いの手なくしてはこの状況は打開出来ないであろう。
 レイはアリアを強く抱き締めている間でも悩み続けていた。自分はどうするべきなのかと、カルロスたちの求めに応じてエクノルエに手を貸すべきか否か。レイがそう迷っていると空からメルリリスがやって来る。
 レイは突然現れたメルリリスに困惑しつつも、

「メルリリス」

と声をかけるが、メルリリスはレイを一瞥いちべつすると、レイからアリアを引きはがし、アリアの頬に平手で一発ひっぱたいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

スキル買います

モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」 ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。 見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。 婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。 レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。 そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。 かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。

処理中です...