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第10章~モンスターパレード~
第75話 悔恨と勝利――どうせ勝つなら気持ちよく勝ちたいよね。
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アリアが山喰らいを貫き倒したその時、その一部始終を見ていたカルロスは驚愕していた。
それも当然の話だ。災害指定モンスターとはその名のとおり、災害と認められたモンスター。言い換えれば人類の手に余り現状討伐することの出来ないモンスターのことである。その生きる災害をアリアは単独討伐したのである。カルロスの驚きようも当然と言えた。
「我が娘ながら末恐ろしいとは思ってはいたが、まさかここまでとは……私はてっきり主が――」
「呼びましたか?」
レイの空中からの呼び掛けに心臓を跳ねさせるカルロス。
「あ、主、急に現れないで下さい。心臓に悪いです」
言いながら心臓の辺りを押さえるカルロスにレイは申し訳なさそうに、
「それは悪いことをしました。大丈夫ですか?」
と言うと、カルロスは「問題ありません」と一言言った後、居住いを正してレイに深々と一礼する。
「主よ、今回の一件のご助力にエクノルエの民を代表して感謝いたします。主がいなければエクノルエ領は滅んでいたことでしょう。誠にありがとうございました」
「いえ、僕のしたことなど大したことではありません。それよりもアリアのことを誉めてあげて下さい」
「それは勿論です。しかし、今回のモンスターパレードは遊撃隊と主の活躍が目覚ましかったですな。これはデュオスとカトレアも誉めてやらねば」
「それは必要ありませんわ」
レイとカルロスの後方からカトレアが現れてそう口にした。そしてカルロスの言葉にレイは顔を暗くする。
「カトレア、それは一体どういう意味だ。それに主までそんな暗い顔をして、どうか私めにもわかるよう説明して頂きたい」
「わたくしは何もしていませんもの、誉められる理由はございませんわ。それに……」
言いかけてカトレアは口をつぐむするとレイが、
「カトレア、そこから先は僕が説明します」
そう言って、レイは深呼吸、意を決する。
「カルロス、落ち着いて聞いて下さい。デュオスが……戦死しました」
言われたカルロスは最初は意味がわからないと言った反応をし、
「……そんな、悪い冗談はよしてください、カトレアも」
そう言ってカトレアの方を見るが、カトレアは首を横に振るのみであった。すると、レイが
「いえ、本当のことです敵中深くまで侵入してしまったアリアを助けるために、山喰らいの懐深くまで入り、その時に山喰らいに潰されて……」
沈痛な面持ちでそう言レイ。
「それで、遺体は……」
「僕が引き取って別空間に保管しています」
「一目見せては頂けないのでしょうか?」
「――それは、どうしてもと言うならかまいませんが……」
見ない方が良い。レイは言外にそう言っていた。カルロスにもそんなレイの思いが通じたようで、
「そうですか」
と肩を落とし、力なくそう言うばかりであった。
―――数時間後
戦は終わってもやるべきことは多い。負傷者の救護や、モンスターの死骸の片付け特に今回は山ほどの大きさの山喰らいの死骸をどうするか。そのままにしておくことは腐敗等の心配があり、放置は出来ない。だからと言って食用とするにも限界がある。
そういうこともあって、今回は素材を必要なだけ解体し、取り出した後にレイの浸蝕魔法により、長期保存が可能な塩に変えることで決着とした。
そんな中、アリアはというと、デュオスが潰されてしまった場所にある山喰らいの足跡で、デュオスの血まみれの記章を胸に抱き、デュオスの死を悼んでいた。すると、アリアの後方に人影が現れる。
「ここにおりましたのね」
アリアが振り返るとそこにはカトレアがいた。
「カトレア」
「皆さんが事後処理に忙しくしているなか、貴女ときたら――それで、その顔の理由は何ですの?」
カトレアが言うように、アリアはデュオスの死を悲しんでいるでもなく、何か困っているような顔をしていた。
「悲しくないのです」
「デュオスさんの死がですの?」
「はい、デュオスお兄様が亡くなった直後はあんなにショックで、悲しくて、涙が止まらなかったのに、今はデュオスお兄様のことをどれだけ想おうとも涙が出てこないのです」
「まだ戦いが終わってからそこまで時は経っていないですもの、気分がまだ高揚しているだけでしょう」
「そうだと良いのですが――」
「そうでないといけない理由でもありますの?」
「え?」
「ですからアリアさんは一度デュオスさんのために涙を流したのでしょう」
「はい」
「それはつまり、デュオスさんの死を悼んだということですわ。それを何度も繰り返すなんて、わたくしに言わせてもらえればはっきり言って無駄ですわ」
カトレアの暴論にアリアは目を丸くする
「ですから今のアリアさんがするべきことはたった一つですの」
「たった一つ」
「そうです。たったひとつ」
「それはいったい――」
アリアはそこで気付いた。カトレアが涙を流していることに
「この、初陣だというのに何も出来ず、大切な仲間を失った親友にその胸を貸すことですわ」
声を震わせながらそう言ったカトレアは、アリアの胸に飛び込み声を出して泣いた。その時アリアは思った。自身の不甲斐なさを悔やみ、デュオスの死を悼んでいるのは自分だけではなかったのだと。この親友も、自分と同じ思いをしているのだと。
そう思った時、アリアの目に再び涙がこぼれていた。
それは、自身にまだ仲間がいるという安心からか、それともまだ泣いても良いのだという赦しを得たように感じたからなのか……
アリアは再び泣いた唯一無二の親友と共に。その鳴き声は周りに大きく響いたがそれを咎める者などはいなかった。
やがて二人が落ち着きを取り戻すと、カトレアが右拳を前に突き出す。すると、アリアもそれに応じるように右拳を突き出した。
「アリアさん貴女は今後どのような戦場でも生き残れるでしょう。何せあの山喰らいを単独討伐したのですから。ただ、わたくしも貴女に負けてはいられません。今後どのような戦場でも生き残り、貴女の隣に立ち続けます」
「カトレア……」
「それがアリアさんの親友たるわたくしの務めですから」
そう言ってカトレアは太陽のような笑顔を見せ、アリアの拳にコンと自身の拳をぶつけた。
それも当然の話だ。災害指定モンスターとはその名のとおり、災害と認められたモンスター。言い換えれば人類の手に余り現状討伐することの出来ないモンスターのことである。その生きる災害をアリアは単独討伐したのである。カルロスの驚きようも当然と言えた。
「我が娘ながら末恐ろしいとは思ってはいたが、まさかここまでとは……私はてっきり主が――」
「呼びましたか?」
レイの空中からの呼び掛けに心臓を跳ねさせるカルロス。
「あ、主、急に現れないで下さい。心臓に悪いです」
言いながら心臓の辺りを押さえるカルロスにレイは申し訳なさそうに、
「それは悪いことをしました。大丈夫ですか?」
と言うと、カルロスは「問題ありません」と一言言った後、居住いを正してレイに深々と一礼する。
「主よ、今回の一件のご助力にエクノルエの民を代表して感謝いたします。主がいなければエクノルエ領は滅んでいたことでしょう。誠にありがとうございました」
「いえ、僕のしたことなど大したことではありません。それよりもアリアのことを誉めてあげて下さい」
「それは勿論です。しかし、今回のモンスターパレードは遊撃隊と主の活躍が目覚ましかったですな。これはデュオスとカトレアも誉めてやらねば」
「それは必要ありませんわ」
レイとカルロスの後方からカトレアが現れてそう口にした。そしてカルロスの言葉にレイは顔を暗くする。
「カトレア、それは一体どういう意味だ。それに主までそんな暗い顔をして、どうか私めにもわかるよう説明して頂きたい」
「わたくしは何もしていませんもの、誉められる理由はございませんわ。それに……」
言いかけてカトレアは口をつぐむするとレイが、
「カトレア、そこから先は僕が説明します」
そう言って、レイは深呼吸、意を決する。
「カルロス、落ち着いて聞いて下さい。デュオスが……戦死しました」
言われたカルロスは最初は意味がわからないと言った反応をし、
「……そんな、悪い冗談はよしてください、カトレアも」
そう言ってカトレアの方を見るが、カトレアは首を横に振るのみであった。すると、レイが
「いえ、本当のことです敵中深くまで侵入してしまったアリアを助けるために、山喰らいの懐深くまで入り、その時に山喰らいに潰されて……」
沈痛な面持ちでそう言レイ。
「それで、遺体は……」
「僕が引き取って別空間に保管しています」
「一目見せては頂けないのでしょうか?」
「――それは、どうしてもと言うならかまいませんが……」
見ない方が良い。レイは言外にそう言っていた。カルロスにもそんなレイの思いが通じたようで、
「そうですか」
と肩を落とし、力なくそう言うばかりであった。
―――数時間後
戦は終わってもやるべきことは多い。負傷者の救護や、モンスターの死骸の片付け特に今回は山ほどの大きさの山喰らいの死骸をどうするか。そのままにしておくことは腐敗等の心配があり、放置は出来ない。だからと言って食用とするにも限界がある。
そういうこともあって、今回は素材を必要なだけ解体し、取り出した後にレイの浸蝕魔法により、長期保存が可能な塩に変えることで決着とした。
そんな中、アリアはというと、デュオスが潰されてしまった場所にある山喰らいの足跡で、デュオスの血まみれの記章を胸に抱き、デュオスの死を悼んでいた。すると、アリアの後方に人影が現れる。
「ここにおりましたのね」
アリアが振り返るとそこにはカトレアがいた。
「カトレア」
「皆さんが事後処理に忙しくしているなか、貴女ときたら――それで、その顔の理由は何ですの?」
カトレアが言うように、アリアはデュオスの死を悲しんでいるでもなく、何か困っているような顔をしていた。
「悲しくないのです」
「デュオスさんの死がですの?」
「はい、デュオスお兄様が亡くなった直後はあんなにショックで、悲しくて、涙が止まらなかったのに、今はデュオスお兄様のことをどれだけ想おうとも涙が出てこないのです」
「まだ戦いが終わってからそこまで時は経っていないですもの、気分がまだ高揚しているだけでしょう」
「そうだと良いのですが――」
「そうでないといけない理由でもありますの?」
「え?」
「ですからアリアさんは一度デュオスさんのために涙を流したのでしょう」
「はい」
「それはつまり、デュオスさんの死を悼んだということですわ。それを何度も繰り返すなんて、わたくしに言わせてもらえればはっきり言って無駄ですわ」
カトレアの暴論にアリアは目を丸くする
「ですから今のアリアさんがするべきことはたった一つですの」
「たった一つ」
「そうです。たったひとつ」
「それはいったい――」
アリアはそこで気付いた。カトレアが涙を流していることに
「この、初陣だというのに何も出来ず、大切な仲間を失った親友にその胸を貸すことですわ」
声を震わせながらそう言ったカトレアは、アリアの胸に飛び込み声を出して泣いた。その時アリアは思った。自身の不甲斐なさを悔やみ、デュオスの死を悼んでいるのは自分だけではなかったのだと。この親友も、自分と同じ思いをしているのだと。
そう思った時、アリアの目に再び涙がこぼれていた。
それは、自身にまだ仲間がいるという安心からか、それともまだ泣いても良いのだという赦しを得たように感じたからなのか……
アリアは再び泣いた唯一無二の親友と共に。その鳴き声は周りに大きく響いたがそれを咎める者などはいなかった。
やがて二人が落ち着きを取り戻すと、カトレアが右拳を前に突き出す。すると、アリアもそれに応じるように右拳を突き出した。
「アリアさん貴女は今後どのような戦場でも生き残れるでしょう。何せあの山喰らいを単独討伐したのですから。ただ、わたくしも貴女に負けてはいられません。今後どのような戦場でも生き残り、貴女の隣に立ち続けます」
「カトレア……」
「それがアリアさんの親友たるわたくしの務めですから」
そう言ってカトレアは太陽のような笑顔を見せ、アリアの拳にコンと自身の拳をぶつけた。
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