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第11章~咎人~
第77話 開戦前――あー忙しい忙しい。
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モンスターパレードから僅か二週間後、エクノルエ領は新たな危機に瀕していた。
それはドルヘル王国による侵略。エクノルエの次の敵はモンスターではなく人間。モンスター対人間の戦いから国対国――人対人との戦い移ったのであった。
だと言うのに、
「父上!!」
鎧姿のトリオラが怒りをあらわにして、エクノルエ軍の指揮所に設けられた天幕の中に入ってくる。が、それに対してトリオラと同じく鎧姿のカルロスは冷静そのもの。
「どうしたトリオラ」
と、余裕のある表情で怒れるトリオラを迎え入れる。
「どうしたもこうしたもありません。聖王国本隊の応援を断ったというのは本当ですか!!」
トリオラの追求に、カルロスはなんだそんなことかと余裕の表情。
「本当だ」
と、特に何でもない風に返答する。そんなカルロスの態度に、トリオラはより一層怒りをあらわにし、
「何故です。父上はエクノルエ領をドルヘルに明け渡す気ですか!!」
と言う。するとカルロスは
「そんなわけないだろう」
とトリオラの言葉を否定する。
「では何故!?」
「今の聖王国はモンスターパレードの一件から言っても信用できん。という理由もあるが、十分に勝算があるから、という理由が一番の理由だな」
「勝算って――斥候部隊の報告によるとドルヘルの兵は総勢3万を越す大部隊ですよ。それに対してこちらはたったの2千、正直戦にすらなりません。」
「だろうな」
「だろうなって――父上は乱心なされたか!!」
カルロスの態度についにトリオラは激昂し、カルロスを怒鳴りつける。しかし、カルロスはそんなものどこ吹く風といった態度を崩さない。
「まぁ落ち着きなさいトリオラ。私は別に乱心などしておらぬし、今回の戦は確実に勝てると確信している」
「それは――アリアと主のお力を借りる。ということですか?」
「なんだ、わかっているのではないか」
「父上、ご自分のおっしゃったことをお忘れですか?アリアの力に頼り過ぎると、いざという時に総崩れになるとおっしゃっていたではありませんか」
「あの時とは状況が違う。今回は最初から主も手を貸して下さることを確約して下さった」
レイの参戦の報にトリオラはそれまでの不安混じりの怒りの表情から、歓喜の表情に変わる。
「それは誠ですか!!」
「ああ、本当だ」
「そうですか。主のお力を借りられるとなれば百人力いや、千を超えて万にも届きましょう」
先程までの怒りは何処へやら、今やトリオラの機嫌は絶好調。そんなトリオラを見ながらカルロスは畳み掛けるように言う。
「それに加えて我が軍には『山穿ち』の英雄アリアがいるのだぞ、最早この戦勝ったも同然だ」
「それは確かに!!父上、私は安心いたしました。これで安心して軍の指揮をとることが出来ましょう」
「指揮をとる必要すら、ないやもしれぬがな」
「それは確かに」
ハッハッハと天幕に入る前とは真逆の表情で外に出ていくトリオラ。それを見送るカルロスは失望とも、可哀想な者を見る目とも、とれるような暗い顔をしていた。
その頃、レイはというと。
「主様本当によろしかったのですか?」
アリアと共に最前線において敵軍の到着を待ち受けていた。
「ええ、僕はもう決めましたから。アリア貴女と共に歩もうって」
言われてアリアは頬を朱に染めながら言う。
「その、それはとても嬉しいのですが、他の――四大使の皆様はどう言われたのですか?」
言われてレイは苦笑い。
「ガヘリスには呆れ顔で言われましたよ。もうお前の好きにしろって、だけど忠告もしてくれましたし、見捨てられた。というわけではなさそうです」
「忠告ですか?」
アリアがそう言うとレイは、
「こちらの話です」
とやんわり回答を拒否する。するとアリアはその素直な性格もあってか
「そうですか」
とそれ以上の追求をしなかった。
「そんなことよりもアリアは大丈夫なのですか?」
デュオスの死からまだ二週間しか経っていない。だと言うのに次は人間相手の戦争だ。レイはアリアの傷ついた心を想う。するとアリアは細い腕を曲げて元気さをアピールし、
「心配ありません。全然元気いっぱいです――と言いたいところなのですが、正直に言うと辛いです。主様、何故人は平和に暮らそうとはしないのでしょう。どうして主様の教えの通りに慎ましく暮らしてくれないのでしょうか?」
アリアの純粋な疑問に、レイはアリアの頭を優しく撫でながら言う。
「それは欲です。アリアにはありませんか?欲しいモノ」
言われてアリアは一考し、口を開く。
「皆が平和に暮らせる世の中が欲しいです」
アリアの壮大な欲にレイは顔をほころばせる。
「アリアらしい素晴らしい欲ですね」
「そうでしょうか?」
「でも、そう言った欲を人はそれぞれ持っているものなのです」
「その欲を満たすために人は戦うということですか?」
「はい、人――というよりも生命全体に言えることですが、欲と欲はぶつかり合うことが多々あります。だから生物は戦うのです。自身の欲を満たすために」
「では、私の恒久的平和という欲を満たすためには――」
「対立するすべての欲を戦いにより押し退けるか、話し合いによって互いの折衷案を出し合い合意するかの二択になると思います。ただ――」
「折衷案では自身の欲を完全には満たせない。故に人は戦うのですね」
「話し合える分人の方がマシ、とも考えられますけどね」
レイはそう言って人間のことをフォローするが、アリアは悲しそうな顔をする。そんなアリアを不憫に思ったレイは言う。
「僕は応援しますよ。アリアの世界平和という欲を」
「本当ですか!!」
アリアは明るい笑顔を見せ、レイの手を両手でギュッと握る。
「主様の応援があれば百人力、千人力、万人力です!!よーし決めました!!」
「何をですか?」
「目標です。私の目標は世界の誰もが平和に暮らせる世の中です。ですから主様も応援していて下さいね!!」
言われてレイはアリアに優しく微笑み「はい」と返事をした。
レイとアリアがそうやって仲睦まじくしていると、二人の後方からゴホンと大きな咳払い。二人は同時に振り返る。するとそこにはジト目で二人を見つめるカトレアがいた。
「お二人とも、仲睦まじいのもよろしいですが、ここは戦場、夢を語り合う場所ではありませんことよ」
「「ごめんなさい」」
レイとアリアが叱られた仔犬のようにシュンとする。
「わかればよろしい――それに、そろそろご到着のようですわよ」
言いながらカトレアは前方を顎で指す。
「ドルヘルのお客様方がですわ」
言われてレイがカトレアの指す方を見るとドルヘルの総勢3万にも及ぶ軍勢が目前まで迫って来ていた。
それはドルヘル王国による侵略。エクノルエの次の敵はモンスターではなく人間。モンスター対人間の戦いから国対国――人対人との戦い移ったのであった。
だと言うのに、
「父上!!」
鎧姿のトリオラが怒りをあらわにして、エクノルエ軍の指揮所に設けられた天幕の中に入ってくる。が、それに対してトリオラと同じく鎧姿のカルロスは冷静そのもの。
「どうしたトリオラ」
と、余裕のある表情で怒れるトリオラを迎え入れる。
「どうしたもこうしたもありません。聖王国本隊の応援を断ったというのは本当ですか!!」
トリオラの追求に、カルロスはなんだそんなことかと余裕の表情。
「本当だ」
と、特に何でもない風に返答する。そんなカルロスの態度に、トリオラはより一層怒りをあらわにし、
「何故です。父上はエクノルエ領をドルヘルに明け渡す気ですか!!」
と言う。するとカルロスは
「そんなわけないだろう」
とトリオラの言葉を否定する。
「では何故!?」
「今の聖王国はモンスターパレードの一件から言っても信用できん。という理由もあるが、十分に勝算があるから、という理由が一番の理由だな」
「勝算って――斥候部隊の報告によるとドルヘルの兵は総勢3万を越す大部隊ですよ。それに対してこちらはたったの2千、正直戦にすらなりません。」
「だろうな」
「だろうなって――父上は乱心なされたか!!」
カルロスの態度についにトリオラは激昂し、カルロスを怒鳴りつける。しかし、カルロスはそんなものどこ吹く風といった態度を崩さない。
「まぁ落ち着きなさいトリオラ。私は別に乱心などしておらぬし、今回の戦は確実に勝てると確信している」
「それは――アリアと主のお力を借りる。ということですか?」
「なんだ、わかっているのではないか」
「父上、ご自分のおっしゃったことをお忘れですか?アリアの力に頼り過ぎると、いざという時に総崩れになるとおっしゃっていたではありませんか」
「あの時とは状況が違う。今回は最初から主も手を貸して下さることを確約して下さった」
レイの参戦の報にトリオラはそれまでの不安混じりの怒りの表情から、歓喜の表情に変わる。
「それは誠ですか!!」
「ああ、本当だ」
「そうですか。主のお力を借りられるとなれば百人力いや、千を超えて万にも届きましょう」
先程までの怒りは何処へやら、今やトリオラの機嫌は絶好調。そんなトリオラを見ながらカルロスは畳み掛けるように言う。
「それに加えて我が軍には『山穿ち』の英雄アリアがいるのだぞ、最早この戦勝ったも同然だ」
「それは確かに!!父上、私は安心いたしました。これで安心して軍の指揮をとることが出来ましょう」
「指揮をとる必要すら、ないやもしれぬがな」
「それは確かに」
ハッハッハと天幕に入る前とは真逆の表情で外に出ていくトリオラ。それを見送るカルロスは失望とも、可哀想な者を見る目とも、とれるような暗い顔をしていた。
その頃、レイはというと。
「主様本当によろしかったのですか?」
アリアと共に最前線において敵軍の到着を待ち受けていた。
「ええ、僕はもう決めましたから。アリア貴女と共に歩もうって」
言われてアリアは頬を朱に染めながら言う。
「その、それはとても嬉しいのですが、他の――四大使の皆様はどう言われたのですか?」
言われてレイは苦笑い。
「ガヘリスには呆れ顔で言われましたよ。もうお前の好きにしろって、だけど忠告もしてくれましたし、見捨てられた。というわけではなさそうです」
「忠告ですか?」
アリアがそう言うとレイは、
「こちらの話です」
とやんわり回答を拒否する。するとアリアはその素直な性格もあってか
「そうですか」
とそれ以上の追求をしなかった。
「そんなことよりもアリアは大丈夫なのですか?」
デュオスの死からまだ二週間しか経っていない。だと言うのに次は人間相手の戦争だ。レイはアリアの傷ついた心を想う。するとアリアは細い腕を曲げて元気さをアピールし、
「心配ありません。全然元気いっぱいです――と言いたいところなのですが、正直に言うと辛いです。主様、何故人は平和に暮らそうとはしないのでしょう。どうして主様の教えの通りに慎ましく暮らしてくれないのでしょうか?」
アリアの純粋な疑問に、レイはアリアの頭を優しく撫でながら言う。
「それは欲です。アリアにはありませんか?欲しいモノ」
言われてアリアは一考し、口を開く。
「皆が平和に暮らせる世の中が欲しいです」
アリアの壮大な欲にレイは顔をほころばせる。
「アリアらしい素晴らしい欲ですね」
「そうでしょうか?」
「でも、そう言った欲を人はそれぞれ持っているものなのです」
「その欲を満たすために人は戦うということですか?」
「はい、人――というよりも生命全体に言えることですが、欲と欲はぶつかり合うことが多々あります。だから生物は戦うのです。自身の欲を満たすために」
「では、私の恒久的平和という欲を満たすためには――」
「対立するすべての欲を戦いにより押し退けるか、話し合いによって互いの折衷案を出し合い合意するかの二択になると思います。ただ――」
「折衷案では自身の欲を完全には満たせない。故に人は戦うのですね」
「話し合える分人の方がマシ、とも考えられますけどね」
レイはそう言って人間のことをフォローするが、アリアは悲しそうな顔をする。そんなアリアを不憫に思ったレイは言う。
「僕は応援しますよ。アリアの世界平和という欲を」
「本当ですか!!」
アリアは明るい笑顔を見せ、レイの手を両手でギュッと握る。
「主様の応援があれば百人力、千人力、万人力です!!よーし決めました!!」
「何をですか?」
「目標です。私の目標は世界の誰もが平和に暮らせる世の中です。ですから主様も応援していて下さいね!!」
言われてレイはアリアに優しく微笑み「はい」と返事をした。
レイとアリアがそうやって仲睦まじくしていると、二人の後方からゴホンと大きな咳払い。二人は同時に振り返る。するとそこにはジト目で二人を見つめるカトレアがいた。
「お二人とも、仲睦まじいのもよろしいですが、ここは戦場、夢を語り合う場所ではありませんことよ」
「「ごめんなさい」」
レイとアリアが叱られた仔犬のようにシュンとする。
「わかればよろしい――それに、そろそろご到着のようですわよ」
言いながらカトレアは前方を顎で指す。
「ドルヘルのお客様方がですわ」
言われてレイがカトレアの指す方を見るとドルヘルの総勢3万にも及ぶ軍勢が目前まで迫って来ていた。
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