82 / 86
第11章~咎人~
第80話 死別――悲しいことが続くね。
しおりを挟む
レイがアリアの元を離れてから半年、エクノルエ領では大きな変化がおこっていた。
その変化とは、エクノルエ領が周囲の領土と共に、突如ラバルディア聖王国からの独立を宣言。主の眷属であり、御使いでもあるアリア・エクノルエを担ぎ出しラバルディア聖教の嘘を糾弾し、真の主の教えを説くエクノルエ教を国教としたエクノルエ神聖国を興したのだ。
当然そんなことをラバルディア聖王国側が許すはずもなく、エクノルエ神聖国へ向けラバルディア聖王国の精鋭と御使いを多く編成した誅伐軍を進軍させた。
「まったく、カルロス様は何を考えておりますの!!」
そう怒りをあらわにしたのはカトレアだ。
「何ってそれは当然主の真の教えをだな……」
クソマジメにトリオラが説明をしようとする。
「そんなことはわたくしも承知しております!!わたくしが言っているのは何故このタイミング、主のいないこの時に、ということですわ」
「それは――何でだろう?」
トリオラの言葉にカトレアはため息をつきつつも言葉を続ける。
「せめて主がいらっしゃる時であればエクノルエ教の教えにも信憑性が生まれるというのに……これではやり口が聖王国とまったく同じではありませんか!!」
「お父様はこれ以上主様を人間の醜い闘争に巻き込みたくはないとおっしゃっていました。だから――」
「モンスターパレードやドルヘルの撃退に自ら巻き込んでおいて、今度は巻き込みたくない!?わたくしでしたら馬鹿にするなと怒りますわね!!」
「それは――」
確かに。しかし、その主が不在の今、カルロスを止めることの出来る者などいはしない。現に自分たちも疑問は口にしつつも、戦の準備を整えている。
事はもう始まってしまっているのだ。
「兎に角、過ぎたことを今言っても、もう時を戻ることは叶いません。カトレアここは世界平和のために力を貸しては下さりませんか?」
アリアの言葉を聞き、カトレアは信じられないという顔をする。
「世界平和って……アリアさん、貴女はそれが本当に可能だと思っていますの?」
カトレアの言葉に、アリアはレイの言葉を思い出す。
「カトレア、それはどういう意味です?」
「アリアさんよく考えてごらんなさい――」
そこまで言って、カトレアの声は開戦の号令に掻き消されてしまう。
「続きはこの戦が終わってからにいたしましょう」
カトレアはそう言うと敵軍に向かって走り出した。
結論から言って多少の犠牲は生んだものの今回の戦もアリアの活躍によってエクノルエ軍の勝利に終わった。しかし、犠牲はあったのだ。
「そんな……」
アリアは救護所の天幕内で、安らかな顔で眠るカトレアの亡骸を前に呆然と立ち尽くす。
すると救護所にいた兵がアリアに向かって口を開く。
「カトレア嬢は勇敢に敵の御使いと戦いました。しかし、敵に止めの一撃を加えようとした時に躊躇してしまい……」
その隙を突かれて殺されてしまった。
カトレアは結局戦士になれなかったのだ。他人の事ばかりを心配し、自分のことを蔑ろにする。そんなお人好しの少女だったのだ。
だから戦に向かず敵の命を奪うことが出来なかった。そんな者が今の今まで戦場で生き残れたこと事態が奇跡だったのだ。
アリアは既に冷たくなった親友の手を握り額に当てて涙する。
「カトレア、貴女は言ったではありませんか、絶対に死なないと、なのに……」
今はアリアの悲しみを慰めてくれる者はいない。アリアは悲しみのなかで、カトレアの最後の言葉を思い起こす。
世界平和についてよく考えろ。カトレアはそう言っていた。世界平和確かに難しい道のりだが不可能ではないはずだ。それに主の眷属たる私の力をもってすれば――神の力を授かった私に不可能はないはずだ。
アリアはカトレアの亡骸に優しく笑い別れを告げ、誓う。
「カトレア、私頑張りますね。主様の教えを世に広め、世界平和を実現させるために」
アリアは救護所の天幕を後にする。この時からアリアは変わった。親友の死がもたらしたのは絶対的な平和への渇望。
アリアはひた走る。世界平和を実現させるために。
その変化とは、エクノルエ領が周囲の領土と共に、突如ラバルディア聖王国からの独立を宣言。主の眷属であり、御使いでもあるアリア・エクノルエを担ぎ出しラバルディア聖教の嘘を糾弾し、真の主の教えを説くエクノルエ教を国教としたエクノルエ神聖国を興したのだ。
当然そんなことをラバルディア聖王国側が許すはずもなく、エクノルエ神聖国へ向けラバルディア聖王国の精鋭と御使いを多く編成した誅伐軍を進軍させた。
「まったく、カルロス様は何を考えておりますの!!」
そう怒りをあらわにしたのはカトレアだ。
「何ってそれは当然主の真の教えをだな……」
クソマジメにトリオラが説明をしようとする。
「そんなことはわたくしも承知しております!!わたくしが言っているのは何故このタイミング、主のいないこの時に、ということですわ」
「それは――何でだろう?」
トリオラの言葉にカトレアはため息をつきつつも言葉を続ける。
「せめて主がいらっしゃる時であればエクノルエ教の教えにも信憑性が生まれるというのに……これではやり口が聖王国とまったく同じではありませんか!!」
「お父様はこれ以上主様を人間の醜い闘争に巻き込みたくはないとおっしゃっていました。だから――」
「モンスターパレードやドルヘルの撃退に自ら巻き込んでおいて、今度は巻き込みたくない!?わたくしでしたら馬鹿にするなと怒りますわね!!」
「それは――」
確かに。しかし、その主が不在の今、カルロスを止めることの出来る者などいはしない。現に自分たちも疑問は口にしつつも、戦の準備を整えている。
事はもう始まってしまっているのだ。
「兎に角、過ぎたことを今言っても、もう時を戻ることは叶いません。カトレアここは世界平和のために力を貸しては下さりませんか?」
アリアの言葉を聞き、カトレアは信じられないという顔をする。
「世界平和って……アリアさん、貴女はそれが本当に可能だと思っていますの?」
カトレアの言葉に、アリアはレイの言葉を思い出す。
「カトレア、それはどういう意味です?」
「アリアさんよく考えてごらんなさい――」
そこまで言って、カトレアの声は開戦の号令に掻き消されてしまう。
「続きはこの戦が終わってからにいたしましょう」
カトレアはそう言うと敵軍に向かって走り出した。
結論から言って多少の犠牲は生んだものの今回の戦もアリアの活躍によってエクノルエ軍の勝利に終わった。しかし、犠牲はあったのだ。
「そんな……」
アリアは救護所の天幕内で、安らかな顔で眠るカトレアの亡骸を前に呆然と立ち尽くす。
すると救護所にいた兵がアリアに向かって口を開く。
「カトレア嬢は勇敢に敵の御使いと戦いました。しかし、敵に止めの一撃を加えようとした時に躊躇してしまい……」
その隙を突かれて殺されてしまった。
カトレアは結局戦士になれなかったのだ。他人の事ばかりを心配し、自分のことを蔑ろにする。そんなお人好しの少女だったのだ。
だから戦に向かず敵の命を奪うことが出来なかった。そんな者が今の今まで戦場で生き残れたこと事態が奇跡だったのだ。
アリアは既に冷たくなった親友の手を握り額に当てて涙する。
「カトレア、貴女は言ったではありませんか、絶対に死なないと、なのに……」
今はアリアの悲しみを慰めてくれる者はいない。アリアは悲しみのなかで、カトレアの最後の言葉を思い起こす。
世界平和についてよく考えろ。カトレアはそう言っていた。世界平和確かに難しい道のりだが不可能ではないはずだ。それに主の眷属たる私の力をもってすれば――神の力を授かった私に不可能はないはずだ。
アリアはカトレアの亡骸に優しく笑い別れを告げ、誓う。
「カトレア、私頑張りますね。主様の教えを世に広め、世界平和を実現させるために」
アリアは救護所の天幕を後にする。この時からアリアは変わった。親友の死がもたらしたのは絶対的な平和への渇望。
アリアはひた走る。世界平和を実現させるために。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
スキル買います
モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる