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第11章~咎人~
第81話 渇望――まだあげない。
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レイが地球を離れてから10年、アリアを取り巻く環境は劇的に変化していた。
ラバルディア聖王国からの独立を目指す。旧エクノルエ領、現エクノルエ神聖国との独立戦争は神徒アリア・エクノルエの活躍もあり、戦争開始から僅か半年で独立戦争に勝利、エクノルエ神聖国が誕生した。
それ以降もエクノルエ神聖国はラバルディア聖王国を攻め続け、翌年には王都を攻め滅ぼし、ラバルディア聖王国に完全勝利し、その領土を大きく広げた。
そんなエクノルエ神聖国の掲げる目標、それは真なる主の教えの下による世界平和。つまり、統一思想による世界征服を目指し、教えに従う者には平和と安息を、従わぬ者には戦争と恐怖を、という道をひた進んでいた。
当然そのような政策を掲げるエクノルエ神聖国にその他の国々は猛反発を見せ、エクノルエ神聖国の侵略に対して一致団結し、連合軍を結成。エクノルエ神聖国に徹底抗戦の構えを見せるものの、神徒アリア・エクノルエの力の前ではなす術なく破れ去り、エクノルエ神聖国は大陸全土を掌握するに至った。
そして、エクノルエ神聖国の次の目標は他大陸及び未開地の開拓と、着実に世界征服への道を辿っていた。
そんな戦いばかりの10年はアリアをとある境地に至らしめていた。と言うのもこの10年にも及ぶ戦いの連続でアリアの身体は既にボロボロ、時には死の縁をさ迷うような傷を負うこともあった。
だと言うのにアリアの見た目に変化はなし、14歳の頃の姿のままその成長を止めていた。それには当然カラクリがある。アリアは戦により傷つき欠損した部位があればその部位を魔力によって構築し、生身の代わりとする。狂気的ともいえるその行いの根幹には、10年前の
レイと過ごしていた日々の記憶が、その当時の姿のままでいたいという強い想いが、そこにはあった。故にアリアは身体に傷を負う度に魔力でその傷を隠し続け、今となっては肉体を持つ人の身でありながらも、マナ生命体に近い存在となっていた。
そんなある日、アリアに大きな変化が訪れる。
―――旧ラバルディア城、現エクノルエ城、アリアの自室
アリアは自室にて少ない趣味の一つである紅茶を嗜みながら物思いに耽っていた。
――主様はどうなされたのかしら。一体いつになったら私の元に戻って来てくれるのでしょう。
最近の、と言うよりもここ数年のアリアの悩みは、レイについてのことばかり、早くレイに会いたい。何故レイは会いに来てくれないのかと、終わりのない思考の渦に身を任せていた。
そんな中、アリアはふと思い至る。そういえば紅茶の味が全くしない。それどころか最近は食事の回数も量も減り、睡眠すら必要と感じなくなってきた。しかし、アリアはそんなことは些事であると、再びレイのことを考える。
そんな漫然とした状態で紅茶を飲んでいたせいか、アリアは紅茶の入っていたティーカップをソーサーに戻そうとしたところ、手を滑らせてティーカップを足元に落とし割ってしまう。
「アリア様!!」
アリアの側仕えの女中が慌ててアリアのもとにやってくる。しかし、アリアは、
「大丈夫です」
と、割れたティーカップを拾い始めた。
「アリア様、割れたカップを素手で触れては危険です」
女中はそう言ってアリアのことを心配するが、アリアはそんなことなど気にも留めずにカップの破片を拾い続ける。そうしていると、カップを拾う手に違和感を覚えた。
アリアはその手を見てみると指に一筋の切り傷が出来ていた。
しかし、アリアは感じるはずの痛みを感じず、更にその指からは血が出ていない。
そこでアリアはあることに思い至る。
「すみません。カップの後片付けをお願いいたします」
アリアそう女中に言いつけると自室を後にしようとする。
「アリア様どちらに行かれるおつもりですか?」
「大司教様――父のもとに向かいます」
―――エクノルエ城大司教の間
エクノルエ神聖国は、神徒アリア・エクノルエをトップとした国ではあるものの、アリアは政治のことは未だに勉強中、そのため現在はエクノルエ教の大司教であるカルロス・エクノルエと、司教トリオラ・エクノルエがエクノルエ神聖国の政治を取り仕切っていた。
「お父様!!」
アリアが珍しく慌てた様子でカルロスのもとを訪れる。
「なんだアリアよ、私は今――」
「おしるしが表れました」
アリアのその言葉にカルロスは目を丸くする。
「それは本当か!?」
「本当です!!ほら!!」
そう言ってアリアは、先程切った指の切り傷をカルロスに見せる。するとカルロスはその傷を触りアリアに訊く
「痛みはあるのか?」
「ありません」
「血は?」
「この通り、出てきません」
「つまり、本物の御使いになったということか!!」
「そうです。私ついに本物の御使いになれたのです!!」
アリアとカルロスは歓喜する。アリアがついに人の身からマナ生命体――レイや四大使たちと同じ存在になれたことに。
「これで、これでやっと主様と永遠の時を共に歩むことが出来ます」
「そうだな、後は主を迎える地を完成させるだけだな」
カルロスは狂気に満ちた目で言う。統一思想による世界征服は元を辿ればカルロスの主と主の教えへの異常ともいえる執着から生まれたものに、アリアの世界平和という純粋な願いを合わせたものだ。アリアはその純粋さ故にカルロスの狂気に気付くことが出来ず、むしろその狂気に賛同してしまった。
今の地球にカルロスたちを止められる者はいない。それはつまり、遠くない未来、地球人類の全権をエクノルエ神聖国が握ることを意味している。その事実をレイはまだ知らない。しかし、その時は着実に近付いて来ていた。
ラバルディア聖王国からの独立を目指す。旧エクノルエ領、現エクノルエ神聖国との独立戦争は神徒アリア・エクノルエの活躍もあり、戦争開始から僅か半年で独立戦争に勝利、エクノルエ神聖国が誕生した。
それ以降もエクノルエ神聖国はラバルディア聖王国を攻め続け、翌年には王都を攻め滅ぼし、ラバルディア聖王国に完全勝利し、その領土を大きく広げた。
そんなエクノルエ神聖国の掲げる目標、それは真なる主の教えの下による世界平和。つまり、統一思想による世界征服を目指し、教えに従う者には平和と安息を、従わぬ者には戦争と恐怖を、という道をひた進んでいた。
当然そのような政策を掲げるエクノルエ神聖国にその他の国々は猛反発を見せ、エクノルエ神聖国の侵略に対して一致団結し、連合軍を結成。エクノルエ神聖国に徹底抗戦の構えを見せるものの、神徒アリア・エクノルエの力の前ではなす術なく破れ去り、エクノルエ神聖国は大陸全土を掌握するに至った。
そして、エクノルエ神聖国の次の目標は他大陸及び未開地の開拓と、着実に世界征服への道を辿っていた。
そんな戦いばかりの10年はアリアをとある境地に至らしめていた。と言うのもこの10年にも及ぶ戦いの連続でアリアの身体は既にボロボロ、時には死の縁をさ迷うような傷を負うこともあった。
だと言うのにアリアの見た目に変化はなし、14歳の頃の姿のままその成長を止めていた。それには当然カラクリがある。アリアは戦により傷つき欠損した部位があればその部位を魔力によって構築し、生身の代わりとする。狂気的ともいえるその行いの根幹には、10年前の
レイと過ごしていた日々の記憶が、その当時の姿のままでいたいという強い想いが、そこにはあった。故にアリアは身体に傷を負う度に魔力でその傷を隠し続け、今となっては肉体を持つ人の身でありながらも、マナ生命体に近い存在となっていた。
そんなある日、アリアに大きな変化が訪れる。
―――旧ラバルディア城、現エクノルエ城、アリアの自室
アリアは自室にて少ない趣味の一つである紅茶を嗜みながら物思いに耽っていた。
――主様はどうなされたのかしら。一体いつになったら私の元に戻って来てくれるのでしょう。
最近の、と言うよりもここ数年のアリアの悩みは、レイについてのことばかり、早くレイに会いたい。何故レイは会いに来てくれないのかと、終わりのない思考の渦に身を任せていた。
そんな中、アリアはふと思い至る。そういえば紅茶の味が全くしない。それどころか最近は食事の回数も量も減り、睡眠すら必要と感じなくなってきた。しかし、アリアはそんなことは些事であると、再びレイのことを考える。
そんな漫然とした状態で紅茶を飲んでいたせいか、アリアは紅茶の入っていたティーカップをソーサーに戻そうとしたところ、手を滑らせてティーカップを足元に落とし割ってしまう。
「アリア様!!」
アリアの側仕えの女中が慌ててアリアのもとにやってくる。しかし、アリアは、
「大丈夫です」
と、割れたティーカップを拾い始めた。
「アリア様、割れたカップを素手で触れては危険です」
女中はそう言ってアリアのことを心配するが、アリアはそんなことなど気にも留めずにカップの破片を拾い続ける。そうしていると、カップを拾う手に違和感を覚えた。
アリアはその手を見てみると指に一筋の切り傷が出来ていた。
しかし、アリアは感じるはずの痛みを感じず、更にその指からは血が出ていない。
そこでアリアはあることに思い至る。
「すみません。カップの後片付けをお願いいたします」
アリアそう女中に言いつけると自室を後にしようとする。
「アリア様どちらに行かれるおつもりですか?」
「大司教様――父のもとに向かいます」
―――エクノルエ城大司教の間
エクノルエ神聖国は、神徒アリア・エクノルエをトップとした国ではあるものの、アリアは政治のことは未だに勉強中、そのため現在はエクノルエ教の大司教であるカルロス・エクノルエと、司教トリオラ・エクノルエがエクノルエ神聖国の政治を取り仕切っていた。
「お父様!!」
アリアが珍しく慌てた様子でカルロスのもとを訪れる。
「なんだアリアよ、私は今――」
「おしるしが表れました」
アリアのその言葉にカルロスは目を丸くする。
「それは本当か!?」
「本当です!!ほら!!」
そう言ってアリアは、先程切った指の切り傷をカルロスに見せる。するとカルロスはその傷を触りアリアに訊く
「痛みはあるのか?」
「ありません」
「血は?」
「この通り、出てきません」
「つまり、本物の御使いになったということか!!」
「そうです。私ついに本物の御使いになれたのです!!」
アリアとカルロスは歓喜する。アリアがついに人の身からマナ生命体――レイや四大使たちと同じ存在になれたことに。
「これで、これでやっと主様と永遠の時を共に歩むことが出来ます」
「そうだな、後は主を迎える地を完成させるだけだな」
カルロスは狂気に満ちた目で言う。統一思想による世界征服は元を辿ればカルロスの主と主の教えへの異常ともいえる執着から生まれたものに、アリアの世界平和という純粋な願いを合わせたものだ。アリアはその純粋さ故にカルロスの狂気に気付くことが出来ず、むしろその狂気に賛同してしまった。
今の地球にカルロスたちを止められる者はいない。それはつまり、遠くない未来、地球人類の全権をエクノルエ神聖国が握ることを意味している。その事実をレイはまだ知らない。しかし、その時は着実に近付いて来ていた。
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