2 / 49
第2話 2日後に死ぬ
しおりを挟む
「なんだ、これ?」
自分で引いたおみくじを見ながら、俺は誰にともなく問いかける。答えなどないことは分かっている。だが、問わずにはいられないのだ。こんな摩訶不思議なおみくじは、いままで見たことがない。話に聞いたことさえない。
裏面もただの白紙。いくら眺めても、このおみくじから得られる情報はもうなさそうだ。気になるのは謎の文字。ここになんかヒントがあるのかも知れないと思い、目をこらしてじっくり観察してみた。
いくら見てもなにも分からない。試しにそっと触れてみた。微かに指先に段差のようなものが感じられた。まるでエンボス加工のような感触だ。
「このでこぼこを指先で読むことができたりするのか。さわさわさわなでなで……ん? うわぁぁぁおっ!!」
文字の上を何度もなぞっていたとき、そいつは僕の手のひらの上に突然現れた。年甲斐もなく大声を出してしまった。
「そそそ、そんなに何度も撫でるものではない! 僕をなんだと思ってるモん!!」
しかもしゃべった!?
「ぐるるるるるる」
俺の手の上に乗ったまま、そいつは唸った。どうやらこちらを威嚇しているようだ。しかしなぜかちっとも怖くない。
「もふもふもふもふ」
「こ、こら、こらぁ! だから撫で回すなっての。もふもふするな! しっぽも掴むな!! 首に巻こうとするな!!!」
おみくじの中からでてきたのは、面妖な小動物だった。体長30cmほど。顔は猫だ。模様からしてトラ猫だろう。顔と同じ模様の動体は長くてイタチに似ている。しっぽは白くて短い。ウサギのしっぽそのものだ。
地球上にこんな生き物いたか? しかし、これは可愛い。そこいらのペットなんか目じゃないぐらい可愛い。その上に稀少動物なら高く売れるかも知れない。SNSで買い手を募集してみるか。損失補填になるかもしれない。それとも動画サイトに動画を上げてアクセスで稼ぐか。
「なんかすごいものが手に入った」
「いや、入ってないから。まだ出会っただけだから。すでに売却予定とかしているようだが、そんなことできないから」
あらら、心の中を読まれたか。意外と賢い生き物のようだ。
「当たり前だモん。僕は神の使いとしてやってき……だからくしゃくしゃにするなって!」
この可愛らしさ。手のもふもふが止まらない。これはクセになるもふもふだ。小さいから家の中でも飼える。しかもしゃべる……しゃべるだと!?
「さっきそれで驚いたではないか。改めて気づいたのなら、僕を尊敬するモん」
「お前は……えっとなにものだ?」
「ボクはサルトラヘビ。何人もの英雄や魔法使いが僕を退治に来たが、それができたものはひとりもいないという強者だモん」
「ほぉぉ」
「ヒダの山奥で生まれ育った弱小魔物を束ねる長だモん」
「それはすごい……のか?」
「ボクにはどんな魔法も修法も効かないモん。その上に上級魔法を使うことができるモん。ここらの魔物も束ねる長でもあるモん」
「ほぉぉ。ここいらには弱小の魔物しかいないようだな」
「いちいちツッコミがきついな、お主は。魔物がいるってことには驚かんのか」
「お前が日本語をしゃべっている時点で、魔物ってのがいても不思議さは感じない」
「そ、それはまあ、そうだが。近頃のこっちの人間は、まったくもラノベズレしやがって。モん」
「なにを呆れてるんだ?」
「昔の人間は、ボクが見えるだけで飛び上がって驚いたものだという話」
「ああだからラノベズレか。うまいこと言うなあははは」
「まあ、おかげで話が早くて助かるのだ……だからもふもふはいい加減に止めろって!」
「良いではないか、良いではないかもふもふ」
「お主はどこかのお代官様か! 止めろってのがぶっ!」
「痛っっ!! 親指に噛みつきやがった」
「こへにほひたらもうしなとひかえ」(これに懲りたらもうしないと誓え)
「分かった分かった。お前は強い。痛いから離せ」
「分かれば良いモん」
しかし、こいつの話をそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。俺の中でひとつの疑惑が発生しているのだ。それだけは確認しておこう。
「どうしてサルトラヘビなんておどろおどろしい名前なんだ?」
「顔がサルで」
「どう見てもトラ猫なのだが」
「同体はヘビで」
「イタチにしか見えん」
「しっぽはトラで」
「ウサギだろ!?」
名前と見た目がこれほど乖離している生き物も珍しい。それがなんで弱小とはいえ動物や魔物の長ができるのか分からない。自称しているだけなんじゃないか、という疑惑である。
「わぁぁぁぁぁん」
「なんで突然泣くんだよ!」
「こんな愛らしい姿なのに、みんなろくに見もしないでウソの情報を流すんだモん」
「その噂を自分で上塗りしてどうするよ」
「もうやけくそモん」
「それで問題が解決するんか!」
「……名前はそっちのほうが強そうだから……放置している……モん」
「そ、そうか。お前なりに苦労ってものがあるんだな。もふもふもふも」
「だ、だからそれは止めろって。身体中の毛がくしゃくしゃになるではないか」
「むしゃくしてしてやった?」
「うまいこと言ったつもりか! ちっとも話が進まないからこっちから言うが、ボクを呼び出した以上は責任をとってもらうモん」
「呼び出した? そんなつもりはないが」
「おみくじを引いたではないか」
「ああ、これのことか。これがどうかしたのか?」
「察しの悪いやつだなもう。歴代最低だモん」
「悪かったな最低で。姿は愛らしいのに口は悪いな。そういうやつはちょっと懲らしめてやるもふもふもふもふ」
「口が悪いのはお主に言われるすじやややめろ!。くすぐっきゃはははははたいではなきゃはははなさいか。やめ、止めろ、止めないと」
「止めないとどうなるんだよ」
「2日後に死ぬ」
自分で引いたおみくじを見ながら、俺は誰にともなく問いかける。答えなどないことは分かっている。だが、問わずにはいられないのだ。こんな摩訶不思議なおみくじは、いままで見たことがない。話に聞いたことさえない。
裏面もただの白紙。いくら眺めても、このおみくじから得られる情報はもうなさそうだ。気になるのは謎の文字。ここになんかヒントがあるのかも知れないと思い、目をこらしてじっくり観察してみた。
いくら見てもなにも分からない。試しにそっと触れてみた。微かに指先に段差のようなものが感じられた。まるでエンボス加工のような感触だ。
「このでこぼこを指先で読むことができたりするのか。さわさわさわなでなで……ん? うわぁぁぁおっ!!」
文字の上を何度もなぞっていたとき、そいつは僕の手のひらの上に突然現れた。年甲斐もなく大声を出してしまった。
「そそそ、そんなに何度も撫でるものではない! 僕をなんだと思ってるモん!!」
しかもしゃべった!?
「ぐるるるるるる」
俺の手の上に乗ったまま、そいつは唸った。どうやらこちらを威嚇しているようだ。しかしなぜかちっとも怖くない。
「もふもふもふもふ」
「こ、こら、こらぁ! だから撫で回すなっての。もふもふするな! しっぽも掴むな!! 首に巻こうとするな!!!」
おみくじの中からでてきたのは、面妖な小動物だった。体長30cmほど。顔は猫だ。模様からしてトラ猫だろう。顔と同じ模様の動体は長くてイタチに似ている。しっぽは白くて短い。ウサギのしっぽそのものだ。
地球上にこんな生き物いたか? しかし、これは可愛い。そこいらのペットなんか目じゃないぐらい可愛い。その上に稀少動物なら高く売れるかも知れない。SNSで買い手を募集してみるか。損失補填になるかもしれない。それとも動画サイトに動画を上げてアクセスで稼ぐか。
「なんかすごいものが手に入った」
「いや、入ってないから。まだ出会っただけだから。すでに売却予定とかしているようだが、そんなことできないから」
あらら、心の中を読まれたか。意外と賢い生き物のようだ。
「当たり前だモん。僕は神の使いとしてやってき……だからくしゃくしゃにするなって!」
この可愛らしさ。手のもふもふが止まらない。これはクセになるもふもふだ。小さいから家の中でも飼える。しかもしゃべる……しゃべるだと!?
「さっきそれで驚いたではないか。改めて気づいたのなら、僕を尊敬するモん」
「お前は……えっとなにものだ?」
「ボクはサルトラヘビ。何人もの英雄や魔法使いが僕を退治に来たが、それができたものはひとりもいないという強者だモん」
「ほぉぉ」
「ヒダの山奥で生まれ育った弱小魔物を束ねる長だモん」
「それはすごい……のか?」
「ボクにはどんな魔法も修法も効かないモん。その上に上級魔法を使うことができるモん。ここらの魔物も束ねる長でもあるモん」
「ほぉぉ。ここいらには弱小の魔物しかいないようだな」
「いちいちツッコミがきついな、お主は。魔物がいるってことには驚かんのか」
「お前が日本語をしゃべっている時点で、魔物ってのがいても不思議さは感じない」
「そ、それはまあ、そうだが。近頃のこっちの人間は、まったくもラノベズレしやがって。モん」
「なにを呆れてるんだ?」
「昔の人間は、ボクが見えるだけで飛び上がって驚いたものだという話」
「ああだからラノベズレか。うまいこと言うなあははは」
「まあ、おかげで話が早くて助かるのだ……だからもふもふはいい加減に止めろって!」
「良いではないか、良いではないかもふもふ」
「お主はどこかのお代官様か! 止めろってのがぶっ!」
「痛っっ!! 親指に噛みつきやがった」
「こへにほひたらもうしなとひかえ」(これに懲りたらもうしないと誓え)
「分かった分かった。お前は強い。痛いから離せ」
「分かれば良いモん」
しかし、こいつの話をそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。俺の中でひとつの疑惑が発生しているのだ。それだけは確認しておこう。
「どうしてサルトラヘビなんておどろおどろしい名前なんだ?」
「顔がサルで」
「どう見てもトラ猫なのだが」
「同体はヘビで」
「イタチにしか見えん」
「しっぽはトラで」
「ウサギだろ!?」
名前と見た目がこれほど乖離している生き物も珍しい。それがなんで弱小とはいえ動物や魔物の長ができるのか分からない。自称しているだけなんじゃないか、という疑惑である。
「わぁぁぁぁぁん」
「なんで突然泣くんだよ!」
「こんな愛らしい姿なのに、みんなろくに見もしないでウソの情報を流すんだモん」
「その噂を自分で上塗りしてどうするよ」
「もうやけくそモん」
「それで問題が解決するんか!」
「……名前はそっちのほうが強そうだから……放置している……モん」
「そ、そうか。お前なりに苦労ってものがあるんだな。もふもふもふも」
「だ、だからそれは止めろって。身体中の毛がくしゃくしゃになるではないか」
「むしゃくしてしてやった?」
「うまいこと言ったつもりか! ちっとも話が進まないからこっちから言うが、ボクを呼び出した以上は責任をとってもらうモん」
「呼び出した? そんなつもりはないが」
「おみくじを引いたではないか」
「ああ、これのことか。これがどうかしたのか?」
「察しの悪いやつだなもう。歴代最低だモん」
「悪かったな最低で。姿は愛らしいのに口は悪いな。そういうやつはちょっと懲らしめてやるもふもふもふもふ」
「口が悪いのはお主に言われるすじやややめろ!。くすぐっきゃはははははたいではなきゃはははなさいか。やめ、止めろ、止めないと」
「止めないとどうなるんだよ」
「2日後に死ぬ」
0
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる