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第177話 ぐぅす屋
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「作る権利を承認したやつといえば」
「当然この国の……ノだ」
「へぇ。いったい誰がそんなことをしたんだろうな」
「「「お前だろぉぉ!!!」」」
「オオクニ、思い出せ。いったいどこのどいつがこれを発明したんだ」
「え? 我なの? いや、そんなこと言われても。我にはさっぱり見当がつかないのだが」
「なんでだよ!」
「だって、そんなもんいちいち覚えていられな痛いっ」
「覚えてられないなら、どうして記録しておかなかったのでしょうね、この宿六は。怠慢ですわねバシッ!」
むち打ち3回の刑である。今となってはむしろご褒美と言えなくもない。ユウコ、そんなうらやましそうな目で見ない。
「待てよ、その権利者ってのは本当にこの国の人か? この材料はエルフの魔木なんだろ? まさかホッカイ国からの輸入品ってことはないか」
「ネコジタは良くある魔草ですからね。こちらの気候なら充分育ちますよ」
「そうなのか。このきなんの木とは違うのか。それならここにもエルフの里があるのかもしれないってことだが、誰か知ってるか?」
あ? ああっ。あれかぁ。という顔をしたのは、オオクニだった。
「オオクニ? 心当たりがあるのか?」
「ああ、ある。ここにもかつて小さいながらもエルフの里はあったんだ。だが、百年ぐらい前にここは大飢饉に見舞われてな、そのときにエルフの人たちは……」
「わぁぁぁぁぁぁん」
ユウコ、泣くな。
「大儲けしてカンサイ方面に引っ越して行った」
「儲けたんですか!!! 紛らわしい言い方しないでっ!!!」
ユウコ、それは怒って良い。
「引っ越し先は?」
「当然のようにまったく分からな痛いっ」
「当然のようにじゃありませんわよ。どうしてしばいてでも止めなかったのですか!」
「去る者は追わずといってだな痛いってば、引き留める理由がなかったからだよ痛痛痛い」
「大飢饉のときに、エルフはどうやって儲けんだ?」
「薬だよ」
「薬なら常時使うものじゃないか。なんで飢饉でそんな需要が?」
「飢饉のとき、餓死するものは実は少ないのだ」
「ええ? 違うのか?」
「飢えを我慢できる人間はそういないからな。だから、食べられないことが分かっていても、そこいらにある草とか壁とかをついつい食べしまうのだ。それで下痢を起こすんだ。死亡原因のほとんどは、下痢による脱水症状なのだよ」
ああ、それはそれで阿鼻叫喚。
「そういうときに、エルフ薬は良く効いたんだ。家財道具などと引き換えに薬を売って、ずいぶん儲けたようだ」
「そうか、そういう手があったのか!」
「ユウコ、良いこと聞いた! なんて目で発言するのは止めろ。トウヤの里でそれやっても、人口が少ないからたいした売り上げにはならんだろ」
「そっか。やっぱり地道にイテコマシを作っていたほうがいいかな」
「当然だ!」
「時代も違うし、下痢を止めたところで餓死するだけだけどな」
延命にしかならない薬か。それでも薬が欲しかったんだろうなぁ。
「そのエルフたちが、ここ(田舎)からカンサイ(都会)に出てしまったのなら、この程度の権利のことなんか忘れている可能性が高いな」
「我もそう思う。もともとたいした需要のないものだからな。おそらく10挺と作っていないだろう」
「そうなると探すのは困難ですな。それは諦めるしかないでしょう」
「レンチョンの言う通りだ。権利者が見つかるまでこれはペンディングにしておこう」
「我がせっかく見つけたきたんだけどなぁ」
「こんな良いものを完全に止めるわけじゃない。延期するだけだ。権利者が見つかったらそのときに交渉しよう」
「カンサイなら俺が探して見よう。仕事のついでということになるが」
「それで頼む。エルフの噂話でもあったら教えてくれ。しかし、それよりグースに聞きたいことがある」
「なんだ?」
「このそろばんを使うのはどんな人だろう?」
「カンサイにはどの商家にも1挺は必ずあるぞ。値段交渉なんかそれでやっているからな」
「値段交渉?」
「ああ、端で見てると面白いぞ。そろばんの珠を上げたり下げたりしながら交渉するんだ。これなんぼになりまんの? それはこのぐらいが限度でおますなぱちぱち。ひぇえそれはたこうおまんなぁ、このぐらいに勉強してぇなぱち。そんな無茶を言ってはあきまへんがな、このぐらいにしまひょぱちぱち。ってな感じだ」
「絵が浮かぶようだ。じゃあ、そろばんの需要は高いと思っていいな」
「ああ、丁稚でもそろばんを習おうというものが増えている。まだまだ需要はたくさんあるだろう。今度はそろばんを売るのか?」
「そう思ってもうアッセンブリ工場を買収してきた」
「早いなっ!?」
「手続きしたのは私ですけどね」
「さっき聞いた話では、ハリマのそろばんのほうが優勢だそうだが、品質的には差はあると思うか?」
「どうだろう。そんなに詳しく見たことはないからなぁ。そろばんの差なんてそんなにあるとは思えんが、それは戻って調べてみよう。でもそれより、こちらの現物があったほうが話が早いんだが」
「次回の出荷から、そちらに送るつもりだ。その送り先だが、屋号は決めたか?」
「ああ。決めたぞ、ぐぅす屋だ。よろしゅうたのんまっさ」
ぐぅす屋? グースハウスということか。またちょっとあぶないネーミングが出てきたけど。
「好きなノか?」
「ファンなんだよ、やかましいよ」
「お主、もしかして最初からそれが言いたくてぐぇっ」
「で、どのくらい売ればいいんだ?」
「ツブツブ堂の生産量は、現状月1,000挺ほどだ。それでもこの地域ではシェアは50%以上になる。それを来月には月産3,000挺ぐらいに引き上げるつもりだ。その差の分がぐぅす屋に卸す台数となる」
「月2,000挺になるということか。それで値段はいくらになる?」
「売価はこちらでは1挺800円ほどだが、カンサイではいくらになってる?」
「普及タイプなら1,000円が相場だったと思う。高級品となると際限なく値は上がって行くけどな」
「オワリではそれが1,500円になるらしい。それもこれも流通の問題だな。では、こちらの卸値は1挺400円にしよう」
「えええええっ!!??」
「そ、それはいくらなんでも安すぎないか? あまり急に市場を壊すのも良くないぞ?」
「売値はグースにまかせる。つまりぐぅす屋の仕入れ値が400円ということだ。そこにどれだけ利益を乗せるか。それはお前の腕次第だ」
「ああ、仕入れ値のことだったか。で、運送はあの部長がしてくれるんだよな?」
「それはもちろん。月に1回は運送させよう。その費用の安さがうちの売りのひとつだからな。月末……ってもう年内か。それまでには200挺は運べると思う」
「ただで使えるミノウなノだ」
「そろばんならそんなに大きくないから、お前も手伝えよ」
「ええっ? ノだ」
便利な魔王さんは好きですよ。
「当然この国の……ノだ」
「へぇ。いったい誰がそんなことをしたんだろうな」
「「「お前だろぉぉ!!!」」」
「オオクニ、思い出せ。いったいどこのどいつがこれを発明したんだ」
「え? 我なの? いや、そんなこと言われても。我にはさっぱり見当がつかないのだが」
「なんでだよ!」
「だって、そんなもんいちいち覚えていられな痛いっ」
「覚えてられないなら、どうして記録しておかなかったのでしょうね、この宿六は。怠慢ですわねバシッ!」
むち打ち3回の刑である。今となってはむしろご褒美と言えなくもない。ユウコ、そんなうらやましそうな目で見ない。
「待てよ、その権利者ってのは本当にこの国の人か? この材料はエルフの魔木なんだろ? まさかホッカイ国からの輸入品ってことはないか」
「ネコジタは良くある魔草ですからね。こちらの気候なら充分育ちますよ」
「そうなのか。このきなんの木とは違うのか。それならここにもエルフの里があるのかもしれないってことだが、誰か知ってるか?」
あ? ああっ。あれかぁ。という顔をしたのは、オオクニだった。
「オオクニ? 心当たりがあるのか?」
「ああ、ある。ここにもかつて小さいながらもエルフの里はあったんだ。だが、百年ぐらい前にここは大飢饉に見舞われてな、そのときにエルフの人たちは……」
「わぁぁぁぁぁぁん」
ユウコ、泣くな。
「大儲けしてカンサイ方面に引っ越して行った」
「儲けたんですか!!! 紛らわしい言い方しないでっ!!!」
ユウコ、それは怒って良い。
「引っ越し先は?」
「当然のようにまったく分からな痛いっ」
「当然のようにじゃありませんわよ。どうしてしばいてでも止めなかったのですか!」
「去る者は追わずといってだな痛いってば、引き留める理由がなかったからだよ痛痛痛い」
「大飢饉のときに、エルフはどうやって儲けんだ?」
「薬だよ」
「薬なら常時使うものじゃないか。なんで飢饉でそんな需要が?」
「飢饉のとき、餓死するものは実は少ないのだ」
「ええ? 違うのか?」
「飢えを我慢できる人間はそういないからな。だから、食べられないことが分かっていても、そこいらにある草とか壁とかをついつい食べしまうのだ。それで下痢を起こすんだ。死亡原因のほとんどは、下痢による脱水症状なのだよ」
ああ、それはそれで阿鼻叫喚。
「そういうときに、エルフ薬は良く効いたんだ。家財道具などと引き換えに薬を売って、ずいぶん儲けたようだ」
「そうか、そういう手があったのか!」
「ユウコ、良いこと聞いた! なんて目で発言するのは止めろ。トウヤの里でそれやっても、人口が少ないからたいした売り上げにはならんだろ」
「そっか。やっぱり地道にイテコマシを作っていたほうがいいかな」
「当然だ!」
「時代も違うし、下痢を止めたところで餓死するだけだけどな」
延命にしかならない薬か。それでも薬が欲しかったんだろうなぁ。
「そのエルフたちが、ここ(田舎)からカンサイ(都会)に出てしまったのなら、この程度の権利のことなんか忘れている可能性が高いな」
「我もそう思う。もともとたいした需要のないものだからな。おそらく10挺と作っていないだろう」
「そうなると探すのは困難ですな。それは諦めるしかないでしょう」
「レンチョンの言う通りだ。権利者が見つかるまでこれはペンディングにしておこう」
「我がせっかく見つけたきたんだけどなぁ」
「こんな良いものを完全に止めるわけじゃない。延期するだけだ。権利者が見つかったらそのときに交渉しよう」
「カンサイなら俺が探して見よう。仕事のついでということになるが」
「それで頼む。エルフの噂話でもあったら教えてくれ。しかし、それよりグースに聞きたいことがある」
「なんだ?」
「このそろばんを使うのはどんな人だろう?」
「カンサイにはどの商家にも1挺は必ずあるぞ。値段交渉なんかそれでやっているからな」
「値段交渉?」
「ああ、端で見てると面白いぞ。そろばんの珠を上げたり下げたりしながら交渉するんだ。これなんぼになりまんの? それはこのぐらいが限度でおますなぱちぱち。ひぇえそれはたこうおまんなぁ、このぐらいに勉強してぇなぱち。そんな無茶を言ってはあきまへんがな、このぐらいにしまひょぱちぱち。ってな感じだ」
「絵が浮かぶようだ。じゃあ、そろばんの需要は高いと思っていいな」
「ああ、丁稚でもそろばんを習おうというものが増えている。まだまだ需要はたくさんあるだろう。今度はそろばんを売るのか?」
「そう思ってもうアッセンブリ工場を買収してきた」
「早いなっ!?」
「手続きしたのは私ですけどね」
「さっき聞いた話では、ハリマのそろばんのほうが優勢だそうだが、品質的には差はあると思うか?」
「どうだろう。そんなに詳しく見たことはないからなぁ。そろばんの差なんてそんなにあるとは思えんが、それは戻って調べてみよう。でもそれより、こちらの現物があったほうが話が早いんだが」
「次回の出荷から、そちらに送るつもりだ。その送り先だが、屋号は決めたか?」
「ああ。決めたぞ、ぐぅす屋だ。よろしゅうたのんまっさ」
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「お主、もしかして最初からそれが言いたくてぐぇっ」
「で、どのくらい売ればいいんだ?」
「ツブツブ堂の生産量は、現状月1,000挺ほどだ。それでもこの地域ではシェアは50%以上になる。それを来月には月産3,000挺ぐらいに引き上げるつもりだ。その差の分がぐぅす屋に卸す台数となる」
「月2,000挺になるということか。それで値段はいくらになる?」
「売価はこちらでは1挺800円ほどだが、カンサイではいくらになってる?」
「普及タイプなら1,000円が相場だったと思う。高級品となると際限なく値は上がって行くけどな」
「オワリではそれが1,500円になるらしい。それもこれも流通の問題だな。では、こちらの卸値は1挺400円にしよう」
「えええええっ!!??」
「そ、それはいくらなんでも安すぎないか? あまり急に市場を壊すのも良くないぞ?」
「売値はグースにまかせる。つまりぐぅす屋の仕入れ値が400円ということだ。そこにどれだけ利益を乗せるか。それはお前の腕次第だ」
「ああ、仕入れ値のことだったか。で、運送はあの部長がしてくれるんだよな?」
「それはもちろん。月に1回は運送させよう。その費用の安さがうちの売りのひとつだからな。月末……ってもう年内か。それまでには200挺は運べると思う」
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