異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第195話 エルフの里の辺境地

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「「ユウのケガは骨折だけだったのか?」
「ああ、下にクッションがあったおかげで、片手の骨折だけで済んだようだ」

「誰がクッションだ!」

「それは不幸中の幸いジャの」
「その代わり、腕が5本だか6本だかになるとこだったんだが」
「増えてラッキーではないか」
「全然ラッキーじゃねぇよ。その分短くなるんだよ! ってかそれはもう腕じゃないだろ」

 しかしユウコはともかく、キスキが来てくれたのは助かった。

「私だって助かったでしょ?」
「んーと。ちょっとだけな、もに」
「あぁん」

 助かったというか、落ち着いたというか。癒やされたというか。ケガの回復が早くなりそうだ。そういう意味では貴重なキャラだもに。

「それはともかく、キスキ。ミノウをここに連れて来てもらいたいのだが」
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃ きゅぅぅ」
「お前はいったいいつのアニメを見てるんだ」
「古いやつのほうが、アクセスしやすいのだヨ。最近のはぷろてくとがきつくてなかなか見られないのだ。もうニコニコに移ろうかときゅぅぅぅ」

「そんなことはいいから、俺が落ちたときどうしてすぐに助けに来なかった?」
「きゅっ?」

「可愛こぶりっこすんな! 俺が落ちたところは見てただろ?」
「見てたヨ」
「そのあと、どうした?」
「お主に言われた通りにしたヨ」

「俺、なんて言ったっけ?」
「片方になにかあったら、ベースキャンプで待てと言っていたではないか」
「それは俺がベースキャンプにいるときの話だろうが」
「きゅっ?」

「もうそれはいいから。俺がいるとことに戻って報告しろと言ったんだよ。俺がいないのに、そこに戻ってなにをしてたんだ?」
「お茶して、ポテチ食べて、ユウご飯食べて、イテコマシをきゅぅぅぅぅ」

「なるほど、良く分かった」
「分かってもらえて良かったのだヨ」
「俺が骨折して苦しんでいる間に、お前はお茶してゲームして遊んでいたんだな」
「ヨヨ?」

「罰として、当面、食器類の使用を禁止する」
「わぁぁぁぁ。そそそそそんな、そんな、そんな、ひどいヨそんなヨほよよんヨ」
「なにを言ってるのか分かんねぇよ。ともかく禁止だ! 反省しろ!!」

「きゅぅぅぅぅぅ!!!」
「いまは羽根はつまんでねぇよ!」
「ニ、ニホン刀は使って良いのか?」
「それは許してやる。今度アホをやったらそれも禁止するからな」
「きゅぅ」

 段階的罰則だ。ちょっとこいつらをしつけないといけない。魔王ってやつは、いままで自由奔放に生きすぎだ。

「自由奔放はお主のほうではないのかヨ」
「なんか言ったかーーっ!」
「な、なんでもないのだヨヨヨ」

「お主が無事なら、ワシはもうイズモ国に戻らないといけないのジャ。ユウはどうする? 一緒に戻るか」
「まだ動くとちょっと痛むから、あと2、3日はこちらにいようと思う。ミノウがいれば連絡には困らないし、いつでもすぐに帰れるしな」

「そうか。タケウチの皆には、ワシからそう報告しておこう。治ったらイズモに帰ってくるのジャろ?」
「ああ、まだやりかけの仕事があるからな。すぐにそちらに行く」
「ゼンシンとチーム・スクエモンも待っておる。なるべく早く来てくれよ」
「分かった。今回は助かったよ、仕事もあるのにありがとうな。皆にもよろしく伝えてくれ」

 なんだろ。キスキと話していると、読者が面食らうぐらいものすごい普通の物語になってしまう。

「あぁぁぁ。明日からどうやって食べて行こうヨ」
「勘違いさせるような発言止めろ!」

 こんな連中とばっかり付き合ってると、俺、ダメになりそう。

 ここのエルフの里は、朝昼晩の区別がつかないことがちょっと悩ましい。全体がいつも明るいのだ。あの暗闇のダンジョンの下にあるというのに。

 それは、ここには電気があって、そのエネルギーで灯を点けているからだ。

「ミノウ、ここの発電所はお前が作ったんじゃないよな?」
「我じゃないのだヨ。いつのまにこんなものができたのか、ぜんぜん知らなかったヨ」

「これはお前のえっと、とうきょときょきょかきょきょ? ではないのか?」
「魔王にそんなものないヨ。魔王の発明は誰でも使えるのだ。それが支配者の心意気ヨ」

「いや、心意気はいいから。それこそエルフのときょじゃないのか。しかし発電なんて難しいことをやってのけるとは、ここのエルフはすごい技術力を持っているということだな」
「エヘン、ヨ」

 いや、お前を褒めたわけではないのだが。すごいけど。お前もすごいけど。



 そして再びもたらされるあらたな情報。

【悲報】ハルミ騎士。グジョウの地にて、再び行方不明に!!

「「「はぁぁぁぁぁ?!」」」

 ハルミが再失踪だと?!

「いや、行方不明だと言っているのだが」
「あいつの場合は、好き好んでいなくなるからな。もう失踪も同然だ」

「そそそ、そんなことよりも、ユウさん、早く探さなくちゃ。タケウチには2、3日で帰るって言っちゃったんですよ。それまでに探さないと、また大騒ぎになります」
「ユウコらしくない正論だ。まずは、状況を教えてくれないか」

「報告によるとだな、魔ネズミ退治に私の部下と一緒に出かけたのだが」
「ふむふむ」
「途中でなにかに驚いて急に走り出して」
「ふむふ……なに?」

「その後、悲鳴を残して忽然と姿が消えたと」
「どっかで聞いたような話だな、それは、どこの洞窟だ」
「いや、ここの洞窟なのだが」

「あ、そうか。明るいからつい忘れてしまう。じゃ、ハルミが消えたという場所の近くを探そう。きっと穴がある」
「もう、穴に落ちたことは確定なのか」

「ネタがなくなったら、落ちることになっているのだヨ」
「どこのヘタな落語だよ」
「そんなことはいいですよ。早く探しに行きましょうよ」

 最近のユウコは、なんだかまともになっていてつまらないと、エルフ界で話題に。

「なってません!」

「おーい。ハルミー。いたら返事しろー」
「いなくても返事するのだヨーー」
「できるかぁ!」

「ハルミー、どこに行ったぁぁ」
「出てこないとお仕置きよ-」
「それ、ユウコの担当な」
「それは止めてくださいよ!!」

 うむ、なかなか捜索が捗らないのは何故だろう。

 俺たちはエルフ里の辺境地と呼ばれる場所に来ている。俺が入院? していた場所から徒歩で15分ほどの場所である。

「狭っ。エルフの里、狭っ」
「牧場は広いのだが、ここにエルフは30人もおらん。そんなに住む場所は必要ないのだ」

 と、言い訳じみた言い訳をするのはハチマンである。

「じみた、って言葉の使い方が間違ってるぞ」
「……なにが言い訳だぁぁ!!」

 ハチマンは少し頭の回転が遅いようだ。突っ込みがワンテンポ遅れている。これでは魔法少女隊に入れてやれないな。

「入るつもりはねぇよ!」

 今度は早かった。

「ハルミーー。どこだーー」
「あ、気をつけろ、そろそろこの辺りには」
「ん? なんだ?」
「ミスズという小動物が出没するんだ」

「ミスズ?」
「ああ、ちょうどそこにいるミミズの魔物だ」

「そこってどこ……わぁぁぁぁぁぁおぉぉわぁぁぁ」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「お、おい。どこへ行く。そっちは行き止まりだぞ!」
「わぁぁぁお、なんだあのうす気味の悪いでっかいミミズは」
「ぐ、ぐね、ぐねぐねしてました、あれは、無理。あんなの食べられない!!」
「食うなよ!!」

 どこが小動物だ。騙しやがって。あれ、なんだろ、このデジャブ感。少し前にも似たようなことが。あっ、そうだ! ユウコ、止まれ!! 危険だ!!

「え? なんですか。ダメですよ、怖くて止まれません。エルフのじっちゃんの名にかけても止まれません!!」
「こ、こら。俺の手を引っ張るな。そっちは骨折したほうの手だ!! いたたたいた痛いって!! お前にじっちゃんなんかいないだろが! 止まれっての、この! もににに」

「ここここんなときにややこしいことしないでください!!」

 ほら、止まった。ユウコ止めるにゃ刃物はいらぬ。ちょっとおっぱい揉めば良い。いっさかほい。

「ぜぇぜぇ、ユウコぜぇ、落ち着け。闇雲に走ると、ぜぇハルミのようにまた、ぜぇぜぇ穴に落ちることになる」
「はぁはぁはぁ。そ、そう、でしたね。でも、ここ行き止まりですけど」

「走ったらみんなとはぐれてしまった。ミノウ、点灯魔法を頼む」
「ほいっとなヨ」

「ここは行き止まりなのか? こっちは灯がついていないが」
「点灯魔法は壁を光らせる魔法なのだヨ。だからそっちはまだ道があるということなのだヨ」

 じゃあこっちに行ってみよう。灯があれば別に怖くなんかないんだからね? ユウコ、先に行け。

「な、なんで私が先!?」
「だってお前は俺のボディガードでもあるんだろ?」
「こんなときだけ、ずっるぅい」
「いいからさくさく歩け。暗くないように、ミノウを貸してやるから」

「きゅぅ」

 俺の作品である。ミノウを紐で縛って、紐をその辺で拾った枝の先にくくりつけたものである。枝を持って歩けばミノウ提灯である。

「ミ、ミ、ミノウ様。お労しや」
「きゅぅ」
「きびきびと点灯魔法をかけ続けろよ」
「きゅぅ」

「私、ものすごい罰当たりなことをしている気分なんですけど」
「気にするな。だんだん道が狭くなってきたな。足下には充分気をつけろ」
「きゅぅ」

「いいのかなぁ、これ」
「ただの魔王提灯だ、気にするな。そのうちに穴があいているところに出るはずだ。そこがハルミが落ちた穴だ」

「ユウさん、ものすごい決めつけてますね」
「ああ、ここへ来てから痛い目にあった体験が、俺にそんな予感を与えているようだ」

「それを信じますよ。抜き足差し足エルフ足」
「どんな足だよ。そろりそろり。いいか、虫とか見ても絶対に俺を置いて行くなよ」

「ユウさんこそ。絶対に後ろから突き飛ばしたらダメですからね」
「絶対しないから大丈夫だ」
「押すのもダメですよ」

「ああ、分かった。押すなよ、絶対押すなよ! の精神だな」
「なんですかそれ。分かってもらえればいいです」

「足下が濡れていて少し滑るようになってきたな。ぬるぬるだ」
「ちょっと歩き難くなってきましたね。コケが生えているみたい。あれ、道が下りになったような気もします」
「ああ、そのほうが歩くのは楽でいい。登りは嫌いだ」

 さて、ここまで積み上げたフラグ。それを回収するのは、やはりこの人である。
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