異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第212話 なんかいろいろオムニバス

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 結局ハルミがしたことは、ダンジョン研修で魔物に驚いて暴走して穴に落ち、落ちた先でエルフに助けられ、そこでソリに乗ってはしゃいでいるうちに池に落ちそうになり、寸前で助かったものの、なぜか裸になってユウと一緒にオウミに助けられた。

 と、ざっくり言うとそういうことだった。

「えらく端折ったノだ?」

 しかもその間に、俺の足や手を計4回も折っているというおまけ付きである。

 すべては考えなしに衝動だけで行動した結果である。アホとしか思えない所業である。極刑に処すべきであるぷんぷん。

「ユウ、ハルミ姉さんだけど、なんとかならない?」

「もぐもぐもぐ。ミヨシさえいればご飯が食べられて、俺的にはなんの問題ないんだけどもむぐむぐうまいうまい」
「ユウってば!!」

「あ、はいっ。すみません。だけどまた押し入れに籠もったんだろ? むぐむぐ。あいつを無理矢理引きずり出せるような生き物はこの世にいないぞぱくぱく」

「生き物全体を対象にしないであげて。大好きな筋トレさえやらなくなっているのよ、あの子」

「ええ!! そうなのか! それはよほど重症だな」
「ええ、そうなの」

 心の傷の程度を、筋トレの有無で推し量かられる女って……。


その頃、押し入れの中では

「なにをいつまで気にしているのだ。もう、いい加減に外に出たらどうだ?」
「黙っていてくれ。私はもう、ここで乾いて死んで行くんだ」
「それにしてはご飯だけは食べているようだが」

「そ、それは、ミヨシが持ってきてくれるからな。それより仙人様はいつまでそこにいるつもり、ですか?」

「俺に敬語はよせ。俺は好きでここに入ったわけではない。この魔剣に吸収されたのだ。肉体はもうあの溶岩と共に朽ち果てたよ」

「そうか。じゃ、共に死のうか」
「命は大事に!!」

「私なんかもうダメだ。もうお嫁に行けないしくしくしく」
「お前に結婚願望があるようには見えなかったが」
「そんなもんないよ。だけど、あぁぁぁ。思い出しただけでも顔が赤くなるぅぅぅぅ」

「あのとき、なんでお前は裸になっていたんだ?」

「え? そ、それは、よんどころない事情があって、だな」
「ふむ。人に言えない事情か」
「そういうことだ」

「俺は刀なんだが」
「そういう問題じゃない!」
「裸を見られたぐらい、良いではないか」

「ひとりふたりならともかく、みんなに見られたんだぞ! しかも、しばらくの間そのことに気づかず、普通に上司に経過を報告して、みんなに挨拶して、感謝の言葉を言おうとしたところで気がついたんだ」

「どんだけうっかり屋さんだよ。でも、昔の人は皆裸だったぞ?」
「そんな昔のことを例えに出されても」

「お前が外に出てくれないと、俺も出られないではないか。ちょっとつまらんぞ」
「仙人様……えっと、もうせんちゃんでいいや。ずっと穴の中にいたんじゃないのか」

「せ、せんちゃん!? ま、まあ、いいが。洞窟にはずっといたわけじゃないぞ。空に登ったり木に登ったり岩に登ったり。たまに女風呂を覗きに行ったり」

「なんか登ってばっかり……女風呂?」
「あ、いや。それはちょっと、なんだ。忘れろ。た、高いところから見下ろすのはいろいろと楽しいぞ」

「なんとかは高いところが好きって言うけど」
「そう。煙とバカは高いやかましいわ!!」
「それが刀の中に入ってしまって、大丈夫なのか?」

「ようやく他人を心配できるようになったではないか。俺は別にここが嫌だとは感じてないぞ。むしろ、お前がどんな活躍するか楽しみにしているぐらいだ」

「そ、そうか。楽しみなのか」

「この刀は特別だな。離れているものでも斬れるのであろう? そこに我が入ったことで、もっといろいろなことができるようになっているかも知れん。だから、早く外に出て。ガンガン魔物を倒して経験値を稼ごうではないか」

「お、おう。そうか。しかし、斬る以外のことっていったいなんだろう?」

「そこまでは分からん。我は医療スキルがあるから回復系かも知れない。逆に相手に毒やシビれなどを引き起こす刀になったかも知れん。それはやってみないと分からん」

「そうか。それはちょっと楽しみだな。もうちょっとしたら、出てみるかな」
「ああ、そうしろ。治安維持課の仲間も待っているぞ」
「そそそそそ、それを言うなぁぁぁぁぁぁ!!

 あ、しまった。


その頃、イズモでは

「ねぇ、ウエモン。ドリルの在庫がずいぶん溜まったね」
「いろんな長さのも作ったし。そろそろ飽きてきたなぁ」

「仕事なんだから、飽きるとかそういうことじゃないと思うけど。だけど、こんなに作っても使い道がないような気がするんだ」

「だけど、他にすることある?」
「ドリルを作るんじゃなくて、ドリルの使い道を考えてみるってのはどう?」
「ドリルの使い道なんて、ひとつしかないじゃん」

「「ドリル、すんのかーい!」」

「いや、そういうことじゃなくて」
「もうすっかり私たちのキャッチフレーズになったね、これ。じゃあ、なんに使うの?」

「せっかくここにいるんだから、そろばんの加工なんかどう?」
「えっと。ドリルは穴開けしかできないでしょ? 珠に穴は1個しかないし、枠の穴はいま10枚くらいまとめてやっているし」

「私は思ったんだけど、珠の穴をまとめて開けられないかな」

「えっと…… ……」
 考え中。考え中。 
「どうやって?」

 考えた意味とは?

「えっとね。珠を作るとき、まず角材の角を削って丸くするでしょ?」
「ふむふむ」

「それからダイコンみたいにすこすこと輪切りにしてから、穴を開けるでしょ」
「ふむふむ。そうだね」

「その穴を、角材のうちに開けたらどうかなって」

「えっと…… ……」
 考え中。考え中。 
「どうやって?」

 だから考えた意味とは?

「ボール盤にはあの角材はとても入らないから、横型の旋盤を使うのよ」
「分かんない。スクナがやってみせてよ」

 そしてふたりで旋盤のところに行く。

「この長いドリルをね、こっち側につけるでしょ」
「ふむふむ、じゃあ、こっちは角材だ」
「そうそう。でね、真ん中でこれを合わせたら、踏み踏みして回転させると ぱっきんっ どわぁぁぁぁぁぁ」

「スクナ、大丈夫か。ドリルが折れて吹っ飛んだじゃないか!」
「あぁ、びっくりしたぁ。大丈夫、当たらなかった。でもこれはダメかぁ。危険なだけだったね」

「スクナのしたいことは分かった。角材の長手方向に穴を開けたいと、そういうことね」
「うん、そうだったんだけど、横型では無理かなぁ」

「うぅん。縦型のボール盤ならできそうだけど、あれは長いものは無理よね」

「そうなの。ストロークが足りないからそもそも角材もドリルも装着できない。だから横型ならいけるかな、と思ったんだけど」

 右側に回転しているドリル。左側には回転している角材。それを左右からぶつけて穴を開けて行こう、とそう考えたスクナであった。しかし、どちらも片方しか固定できないため、同軸で回転はしてくれない。回転がブレると、このように破損するだけである。

 異なる回転をしているもの同士をぶつければ、弾くのは当然のことである。

「真ん中で支えるものがあればいいんだけどなぁ」
「角材なんかを手で持ったら、回転したときに手の皮がずるむけになりそうね」

「そういえばスクナのお父さんは元気?」
「どうしてずるむけでうちのお父さんがでてくるのよ!」
「なんとなくよ。それより角材がさ、丸ければ手で持てるんじゃない?」

「あ、そうか。先に丸棒にしておいて、それから穴開けをすればいいね!」

「よしそれで行ってみよう!」

 ずるむけの話はどうなったのやら。しかし結果として、見事に穴を開けることには成功したふたりであった。しかしまた別の問題が。

「スクナ、これ、ドリルが抜けないんだけど」

「え? どれ、私に見せて。あららら、ほんとだ。もっとすんなり抜けると思ったのに。ぎゅぅぅぅ。ダメだ抜けないね」

「回転させながら抜いたらどう?」

「こんな細いものを持って回転なんて無理っぽい」

 困り果てたふたりは言った。

「「そうだ、ユウさんに考えてもらおう!」」

 いつもの丸投げである。
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