異世界でカイゼン

soue kitakaze

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第318話 コンブの調達

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「それで大量のお湯を沸かすから、材質はステンレスを使ってくれ」
「お湯を沸かすだけ!? それならヤカンでもいいじゃないの」
「沸かすのはお湯だが、作るのはダシだ。それにヤカンではサイズが足りない」

「うどんのダシ? いったい何人分作るつもり?!」
「ウエモンはリーダーだから、全部話しておこう。実はな、かれこれこういうもので、これこれこういことだ。それでこうなるとそうなって、それがこうなるわけだ」

「……」
「分かったか?」
「変態か?」
「やかましい! 一概に否定はできないけど!」

「だけど分かった。私はその中身を作ればいいのね」
「その通り。最初から最高を目指さなくていい。だが、この世界にいままでになかったものを作る。そういう気でいてくれ」

「分かった。それでなにからすればいい?」
「まずは俺が原料を集めるから、それまではこれを読んで勉強しててくれ。俺がまとめたメモだ」
「へったくそな字」

「悪かったな! それに自分で調べたこととか、分かったことをいろいろ書き足してくれ。それが貯まればノウハウになる」
「うん、分かった」

 こいつの分かったはあてになるのかどうか。ちょっと心配だが、とりあえずまかせてみよう。

「スクナがもうじき帰ってくるから一緒にやる」
「なに? もう帰ってくるのか?!」

「スクナはもう試験なんかないつもりだったらしいけど、じつは進級試験を受ける必要があったの」
「進級試験? 単位は全部取ったようなこと言ってたが」
「単位は取ってるよ。だけど進級するには試験が必要なんだって」
「それでシャインが慌ててたのか」

「だけど進級試験には1発合格したって。あとは卒業までに卒論を書けばいいだけらしい。残った手続きとかを済ませたら、帰ってくるって」

「そうか。それは良かった。スクナが手伝ってくれるのなら安心だな」
「私じゃ安心じゃないってのか」

「むちゃくちゃ不安だ痛い痛い痛いっての。俺の愛らしい耳を引っ張るな!」
「どこに愛らしい要素があるのかと」
「この耳全体が愛らしいだろう痛たたたたた、咬むな!! 耳を咬むな!!」

「食欲をそそる耳ではある」
「そそるんじゃねぇよ!!」

「スクナが戻ってきたら一緒にやっていいだろ?」
「ああ、もちろんいいぞ。お前らはふたりでチーム・スクエモンだからな。鉄作りにしろソロバン作りにしろ、お前らの活躍は高く評価している」

「ふん」
「なんだそれ?」

(照れてるんだと思うよ)
(こいつがそんなタマか?)
(あんたはもうちょっと女の子ってものを)
(ああもういいい、ハタ坊。分かったから、説教は勘弁な)

「スクナはあと2,3日で帰るって」
「そうか、それは良かった……けど、なんで俺には連絡ないんだろう?」

「嫌われたんじゃないの?」
「んなことあるかい! 俺とスクナに限っては……限っては……限っては……大丈夫だろうか?」

「自分言ってて自分で心配になるなよ、マゾか」
「そういえば、ホッカイ国に帰るときだって俺に挨拶も連絡もなしでいきなりだった」

「そうだったな」
「で、帰ってくるときもいきなりか」
「そうだな」
「嫌われたんだろうか?」

「ユウは自信家のくせに自信がないのか!」
「なんだよ、そのわけの分からん俺の評価は」
「スクナも帰ってくるの楽しみにしてると言ってたぞ」

 あれ。ウエモンのくせに俺を慰めてくれてんのかな?

「私と会うのを」
「そうだと思ったよっ!!」

「そうだ。ここらの水は硬水っていうらしいが、それで良いのか?」
「良く知ってるな。本番ではイセの水を使うが、あちらも硬水だ。だから試験はこちらの水でいい」
「うどん作ってたからな。で、どう違うんだ?」

「ミネラルが多いのが硬水だ」
「みねらるってなんだ?」
「マグネシウムとかカルシウムとかカリウムとか」
「そんな固い水が飲めるかぁ」

「成分の話だ、成分の! まるごと入っているわけじゃねぇよ。そういうのが多いと、ダシが出やすいんだよ。また、アクも出るからアク抜きにも有効だ」
「ふむ。そうなのか。で、ダシにはなにを使う?」

 それなんだよなぁ。まずはコンブを入手しないとな。それにはホッカイ国まで行かないといけないが。あっ! あっちにはモナカがいたじゃないか。あいつに調達させよう。

「ほにゃらかほい」

 言わずと知れた魔回線へアクセスするための呪文である。これはまあ、良いのだけど。

「こちらユウです。どうかネットワークのお仲間に入れてくださいね」

 これがログインの呪文である。これも結構恥ずかしいのだが。

「ごにょごんごにょ(検索呪文)。モナカか? 俺だ、ユウだ。そちらも雪が溶けたと思うが、コンブを入手して欲しいのだが可能か?」

「はい、もう忘れられたのかと思って心配してましたモナカです。コンブですか。こちらには大量にありますよ。量ならヒダカ、コクの強さならラウス、上品さを求めるならリシリと各種取り揃えております」

 お前はコンブの実況販売員か。お前が揃えたわけじゃないだろう。しかし良く知ってるな。

「それじゃ、リシリとラウスを5Kgずつ買ってくれ。いくらぐらいになる?」
「えっとですね。こちらの相場で、キロ500円ぐらいなので、両方で10Kg計5,000円ってとこですね」

 安っ! 1杯2gもあればいいはずだから1杯1円にしかならんのか。

「それでいい。で、お前はいつ帰ってくる?」
「強力粉用の小麦はもう作付けが終わってますので、すぐにも帰れます。そちらで植えた薄力粉用の小麦も心配ですし」
「あれはミヨシが面倒みてくれているはずだが。じゃ、コンブが用意できたら帰っておいで。きょにゅうもえ」

 これが一番嫌だったんだよ! これだけは言っておきたい。俺は巨乳が好きなわけではない。これはただのIDだ! 揉むのが好きなだけだ!!

「いや、そんな自分の嗜好を強調されても」

「よし、これでコンブは入手できた。グルタミン酸はこれで良いだろう。次はイノシン酸だが、これにはカツオ節と煮干しを使おう」

 その上に動物系ダシを加える。同じイノシン酸だが、これらは掛け合わせると相乗効果かが生まれるのだ。それが現在でいうダブルスープ方式といやつである。

 ただ、こちらには豚はあまりメジャーじゃないようだ。伝書ブタはいるが、あれをダシに使ったら怒られるだろう。かといって牛は野牛しかおらず、よほどの老齢でないかぎり基本農作業用だ。あれもダシに使ったら俺の命に関わりそうだ。

 だから鶏ガラを使うしかなさそうだ。鶏か。どこかに鶏を飼っているところ……あ?! そういえばイリヒメのところにグジョウ地鶏がいたではないか。あれを入手して……。

 そこに突然、ペケベルがやってきた。

「オウミ様は魔王会議です。ペケベルじゃなくて今度は直にお話しましょうか」

 こ、これが嫌でシキ研には行かないようにしていたのに、向こうからやって来るとは。説教されるのは嫌いだ、金だけ出してくれればいいのだ。俺は使いたいだけの金があれば、それだけでいいのだ。なのになんでこんなことに。

「なにを欲望丸出しのことを言ってるんですか。使い放題できるようなお金があったら誰も困りませんよ。今回の戦争の件についておたずねしたことがありましてね」
「う、う」
「う?」
「うがぁぁぁぁぁ!」

「ハルミさんが伝染してますよ?」

 あいつに乗りうつられたら俺がエロエロになってしまうではないか。

「イセを支援して熊野とドンパチ始めるそうですね?」
「い、いや、俺が始めるわけでは」
「その手伝いをするという名目で、予算申請が出ているのですが」

「ああ、それは出したっけな。そういえば」
「なんで倒置法? で、戦費の予定が1千万となっているのですが」

「えぇと。だいたいそんなもんだろうって。多めに書くのが普通だろ?」
「多めすぎるでしょ! いったいどれだけの戦力を持って行くつもりですか!」
「戦力は全部で20名ぐらい」
「たった?!」
「それで充分だと思う。魔王がいるしな」

「それなら10万もあれば充分では?」
「必要なのは、その事前準備費用だ。そのための予算だよ」
「いったいどんな武器を作るつもりですか。これだけあれば、ミサイルでも作れますよ」

「そんな物騒なもの、俺が作るわけが……ミサイルがこちらにあるのか?」
「いえ、ものの例えです」
「ややこしい例えをすんな! どこの将軍様かと思ったぞ」

「それから、この仕事を受けるメリットはなんですか」
「それはイセにシキ研の勢力を伸ばせたらいいかなって」

「イセは観光名所は多いですが、山が海まで迫っていて平地が少ないのですよ。だから人口は多くありません。そこでなにを売ろうというのです?」
「う、うがっ」

「サツマのように特殊なブランド商品があるわけでなく、ヒダのように特殊なしがらみがあるわけでもない」
「そんなイセに誰がした?」
「いや、知りませんって」

「魔王が困ってるんだから、助けりゃなんかメリットがあるやろ?」
「それも知りませんよ! 聞くところによれば、二つ返事で引き受けたそうですね。しかも俺にまかせろとまで言ったそうで」

 なんでそんなことまで知ってんだ、こいつは??

「そ、それにはちょっとした事情があってな」
「どんな事情かと聞いているんですよ」

 うむ。読者にバレないようにと、ここまで頑張ってきたが、そろそろ限界のようである。

「誰に話してるんですか?」
「分かった。それならぶっちゃけよう。俺がやろうとしているのは、食の革命だ」

「蜀の桟道?」
「誰が三国志の話をしているのかと」
「職に行くめぇ?」
「誰が引きこもりの話を、もういいわっ!!」

 無理やりなボケにツッコんでいたら、それはいきなりやって来た。

「あ、ユウさん、ただいま!! 卒業決まったよ! もうあと卒論を提出するだけだよー」

 といっていきなり抱きついて来たやつがいたのだ。


「いったい誰なノだ?」
「おい! オウミ。それはいくらなんでもボケが過ぎるだろ」
「で、ユウはいったいなにを作ろうとしているゾヨ?」
「読者はもう気づいているよ!!」
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